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春
為当神社の祭りの日(土曜日) 2
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家から為当神社まで、だいたい10分位で着く。
母さんは運転中なのにもかかわらず、千円札二枚を後部座席にいる俺にヒラヒラと差し出す。
「ちょっとー!早く受け取って!」
「良いの?」
母さんは前を向きっぱなしだ。
「良いに決まってるでしょ。お昼ご飯代よ~、後はおやつ代かなぁ?」
ありがたくいただく。
受け取って、財布に仕舞う。
「助かる、ありがとう。」
「良いって事よ。母さん、お弁当貰えるらしいから。」
弁当貰えるんだ……
「ふぅん、そうなんだ。」
「なんかね、用意するから参加表明ラインに書いてって。だから今日明日書いたんだ。」
「そっか。」
母さんは意外とアクティブだ。
今日明日やる、お化粧だっていわゆるメイクアップじゃない。
お狐のメイクだ……白塗りに朱や茶や紅でやる。
一号線をどんどん走って、左折する……跨線橋を走って右折してから左折して細い道にはいっても行く。
トゥルルルル・ピッ!
ーおはよー!今、どこ?ー
「今、森町の交差点曲がったトコ~」
ーじゃあ、もうすぐ着くね~!ー
「今、集会所の前の細い道入った~!」
ー今日はどこ、止める?ー
「川のトコに路駐する!」
ーいつものトコだね!ー
「集会所の前、通過しまーす!」
ー私、もう神社にいるよ~!待ってるね!ー
「待ってて!必ず行くから、そこで待っていて~♪」
ー了解!ー
ピッ!
最初はこのカーナビを通じてのブルートゥースの会話に驚いたけど、慣れれば便利そうだなって思う。
智子さんはいつもこのテンションで、優輝のテンションとは違う。
母さんも大概だけど、智子さんも結構だと思う。
車幅制限のかけてある橋をスルスルと渡り、左折して川に寄せるように停める。
「よ~し!頑張るぞぉ~!」
「無理しないでね。」
「はいはい。」
母さんは上機嫌で車を降りる、俺も降りた。
「隼!今日は良い天気だ!祭り日和だぞ!」
「えっ!」
「あらっ!」
俺と母さんは揃って、振り返った。そこには白様が立っていた。
……母さん、聞こえたんだ……じゃあ、俺と白様のアレコレとか聞こえてた?
「隼、忘れ物ないよね?鍵掛けちゃうよ?」
「あ……あぁ、うん。ポーチも財布もちゃんと持ってる。」
カチッと鍵が掛かった音がした。
「智ちゃん待ってるから、行くね!のんびり歩いといでー!」
そう言うと、ワタワタと小走りで行ってしまった。
母さんは何一つ、言わずに行ってしまった。
俺は目の前に立っている白様にドキドキしていた。
春の優しい風の中で、いつもと違う景色の中で見る白様の可憐としか言いようのない姿に胸が熱くなる。
「どうした隼?行かないのか?」
「あっ……あぁ、行こうか……」
白様と並んで歩く、神社までの道のりには小さな子供達も楽しげに駆けて行く。
神社に近付く程、お年寄りや法被を着た人達がチラホラと見えはじめる。
神社から聞こえる音楽や楽しげな声、爆竹の音。
この為当地区のハレの日だと、良く分かる音。
なんで白様がいるか?なんて思わない、この為当神社は正確には為当稲荷神社だからだ。
いわば、この為当神社もお稲荷様を祀る神社でお狐様の白様が遊びに来ていてもおかしくはない。
楽しそうに子供達を見る白様の優しい笑顔は綺麗で、何だか泣きたくなる……
母さんは運転中なのにもかかわらず、千円札二枚を後部座席にいる俺にヒラヒラと差し出す。
「ちょっとー!早く受け取って!」
「良いの?」
母さんは前を向きっぱなしだ。
「良いに決まってるでしょ。お昼ご飯代よ~、後はおやつ代かなぁ?」
ありがたくいただく。
受け取って、財布に仕舞う。
「助かる、ありがとう。」
「良いって事よ。母さん、お弁当貰えるらしいから。」
弁当貰えるんだ……
「ふぅん、そうなんだ。」
「なんかね、用意するから参加表明ラインに書いてって。だから今日明日書いたんだ。」
「そっか。」
母さんは意外とアクティブだ。
今日明日やる、お化粧だっていわゆるメイクアップじゃない。
お狐のメイクだ……白塗りに朱や茶や紅でやる。
一号線をどんどん走って、左折する……跨線橋を走って右折してから左折して細い道にはいっても行く。
トゥルルルル・ピッ!
ーおはよー!今、どこ?ー
「今、森町の交差点曲がったトコ~」
ーじゃあ、もうすぐ着くね~!ー
「今、集会所の前の細い道入った~!」
ー今日はどこ、止める?ー
「川のトコに路駐する!」
ーいつものトコだね!ー
「集会所の前、通過しまーす!」
ー私、もう神社にいるよ~!待ってるね!ー
「待ってて!必ず行くから、そこで待っていて~♪」
ー了解!ー
ピッ!
最初はこのカーナビを通じてのブルートゥースの会話に驚いたけど、慣れれば便利そうだなって思う。
智子さんはいつもこのテンションで、優輝のテンションとは違う。
母さんも大概だけど、智子さんも結構だと思う。
車幅制限のかけてある橋をスルスルと渡り、左折して川に寄せるように停める。
「よ~し!頑張るぞぉ~!」
「無理しないでね。」
「はいはい。」
母さんは上機嫌で車を降りる、俺も降りた。
「隼!今日は良い天気だ!祭り日和だぞ!」
「えっ!」
「あらっ!」
俺と母さんは揃って、振り返った。そこには白様が立っていた。
……母さん、聞こえたんだ……じゃあ、俺と白様のアレコレとか聞こえてた?
「隼、忘れ物ないよね?鍵掛けちゃうよ?」
「あ……あぁ、うん。ポーチも財布もちゃんと持ってる。」
カチッと鍵が掛かった音がした。
「智ちゃん待ってるから、行くね!のんびり歩いといでー!」
そう言うと、ワタワタと小走りで行ってしまった。
母さんは何一つ、言わずに行ってしまった。
俺は目の前に立っている白様にドキドキしていた。
春の優しい風の中で、いつもと違う景色の中で見る白様の可憐としか言いようのない姿に胸が熱くなる。
「どうした隼?行かないのか?」
「あっ……あぁ、行こうか……」
白様と並んで歩く、神社までの道のりには小さな子供達も楽しげに駆けて行く。
神社に近付く程、お年寄りや法被を着た人達がチラホラと見えはじめる。
神社から聞こえる音楽や楽しげな声、爆竹の音。
この為当地区のハレの日だと、良く分かる音。
なんで白様がいるか?なんて思わない、この為当神社は正確には為当稲荷神社だからだ。
いわば、この為当神社もお稲荷様を祀る神社でお狐様の白様が遊びに来ていてもおかしくはない。
楽しそうに子供達を見る白様の優しい笑顔は綺麗で、何だか泣きたくなる……
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