お狐様にお願い!

竹本 芳生

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為当神社の祭りの日(土曜日) 4

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お参りもしたし、あちこち見て回るかな?
ミニチュアのやつとか、可愛いんだよな……なんか、アレ意味があるらしいけど良く分からないんだよね。
スケッチしたり、カメラで撮影したりして記録をとってるらしい。

それにしても……可愛い可愛い可愛い……俺の目の前を歩く白様の揺れる髪とか、リズムをとってるかのように揺れる白い尻尾とか!
派手さの無い神社にチラホラ咲く桜の花と白様!あ~っ、写メれたらガンガン写メるのに!

「隼、見てみろ!今年は豊作だ!」

「え?どうゆう事?」

むぅ~!と少しもふくれっ面になって、ちょっとだけジタバタする姿も可愛い!
白様の説明によると、このミニチュアみたいなのはただの飾りじゃないらしい。豊作とか凶作とか占った結果を表してるらしい……けど、良く分からなかった。分かったのは、今年はお米は豊作だって事位で後は余り関係がないから気にする必要はない!とか言われた。天候も日照りも無いし長雨も程々かのぅ?とか小声で言ってたけど、農家じゃなければ特に気にする事もないと言われた。
花のとう祭はこのミニチュアみたいなのが大事だって事が分かっただけでも、凄いと思うんだけどな。
隣の建物に小さい子達が書いた絵が貼ってあって、親子連れが楽しそうに指を指して笑ってる。
小さな……保育園児位の女の子二人がシャボン玉を吹いてる……優しげな顔の白様がシャボン玉の向こうに見えて、俺のつまんない独占欲が沸く。

「し……シロ、向こうに行こうよ。」

手を差し出すと、駆け寄って俺の手を握ってくれる……体毎、傾いで俺の顔を覗き込むように見てくる。

「何を見る?」

「見るんじゃなくて、あっちでシロの事描きたいんだ。ダメかな?」

ちょっとだけポカンとしてから、フフフ……と笑い声を上げて俺の手を引っ張って境内の玉垣へと向かって行く。
玉垣にチョコンと腰掛けると、俺を見つめる。

「どうした?描かないのか?」

俺は慌ててポーチの中から、小さなスケッチと鉛筆芯のシャーペンを取り出し木に寄りかかってスケッチを始めた。
白様の細くて華奢な体が、何だかとても儚げで幻のようだと感じる。
お狐様なんだから、儚げで当たり前って思うかも知れないけど儚げだと俺の胸が苦しくなるんだ。
腰掛けた白様を書いた後、白様の横顔をササッと描く……バックの桜の木が近かったら一緒に描くのにな……とか思う俺はちょっぴり残念なのかも知れない。
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