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3巻
3-1
しおりを挟む旅路は続く
馬車は王都から領地へ向けてゴトゴト進んでいます。
第三王子ジークフリート殿下の婚約者だった私、エリーゼ・フォン・シュバルツバルト……その期間としては十三年間。五歳で婚約者となり、領地でお母様に様々なことを教えてもらった。十歳で領地を出て王都にある邸に住みつつ、八年間王子妃教育を王宮で受けた。
ムダな時間だったとは思っていない。知識教養も宮廷マナーもすべて身になったし、多くの貴族と会い、人脈を広げたのも結局は私の得になった。
頼りない、子供みたいな第三王子。嫌なことはすべて逃げてきた、どうしようもない王子。
それでも婚約者であれば逃げるわけにもいかない……彼を一生支えようと十歳のとき誓った。
王子にはたった一度会っただけで告白され、婚約者となった。その後も数回会った王子様に恋をしたわけではなかった。それでも王子妃として、王国民のためにできるだけのことをしようと思った。
でも王宮での王子に軽い失望感を覚え、自分ひとりではできることに限りがあることに気づいた。そこで領地も近く、友人であった貴族令嬢ふたり、アンネローゼとミネルバに助けを求めた。
数回の手紙のやり取りで友人たちは第三王子の婚約者となった。
多くの王族男子は正妃ひとりと側妃ふたりを娶る。何かあったときのため、そして複数いれば誰かが必ず子供を生むからだと、今ならわかる。
妊娠出産は現代日本と母親の死亡率がほぼ変わらない。この世界に魔法があっても、ポーションなる万能薬があっても、亡くなる母親はそれなりにいる。
正妃の私と側妃の友人ふたり。いずれ臣籍降下したとしても三人ならば王子を支えていける。
そう思っていた……学園を卒業し、それを祝うパーティーで王子が私に婚約破棄を言い出すまでは。
最悪だと頭の片隅で思う間もなく、ショックのあまり私は前世を思い出した。
前世の気楽なおひとり様生活はあっけなく終わった。
三十八歳で私は日本での人生を終え、この世界へと転生していたのだ。
私と王子の婚姻は学園卒業の一ヶ月後に決まっていた。けれど卒業直後に婚約破棄され、乙女ゲームのように、実際にはよく知らない男爵令嬢(ヒロイン)が王子の隣にいた。
王子とデキていた男爵令嬢はわけのわからないことをほざいていたけど、もうそんなことはどうでもよいと、私はさっさと退場した。ただ現場にいたお父様は激オコで、その場で領地に帰る宣言をした。
あれよあれよという間にいろんなことが決まって、家族全員領地に戻ることになった。ただし王子の婚姻祝いのパーティーに出席してからになったけど。
それでも一ヶ月間、王都で多くのことができたし、いろいろあった。一番大きな出来事は食に関すること。いわゆる飯テロだ。これまで塩味と素材の味だけだった食事が、一気に豊かになった!
蜂蜜だけだった甘味はテンサイから作った砂糖で食後のデザートが進化……このデザートというか甘味がお母様を変えてしまった……お母様がものすごいスイーツ女子へと進化(笑)してしまったのだ。それもアンコ星人になった。
婚姻祝いの場に来ていた帝国皇子のルーク殿下もまた転生者であることがわかり、意気投合。お祝いから帰ったら食べる予定の食事に惹かれ、我が家に来てよく知らないうちに私の次の婚約者になり、私たち家族と一緒に領地に来ることになった。
第三王子と違って賢いし、軍馬より大きいシルヴァニア産の馬を乗り回すイケメン。しかも頭もよくって体も鍛えてて、どこをどう見てもモテてそう。リア充感バリバリな皇子様で文句のつけようがない!
そんなイケメン皇子のルークは実は乙女ゲームの隠しキャラで攻略対象。本来なら、ヒロインに攻略されちゃう存在だけど、この世界はあくまで酷似した世界だ。
監禁生活のヒロインが出会えるわけもなく、皇子様は私のところに来た。
もっとも、緑の目を涙ではらし、鼻水で顔をグシャグシャにした皇子様はイケメンのイメージを吹っ飛ばしたけどね。
婚約祝いの翌日、私たちは王都から旅立った。
出発したのは、私たち一家に王都の邸に勤めていた使用人たち。総数は、王都の邸を無人にするわけにもいかないこともあって使用人の三分の二くらい、私たちのことを聞いた、邸と取引きをしていた商人の家族や友人知人とその家族、婚姻のために来ていた寄子貴族(貴族家、使用人に護衛の人たち)に近隣の親しい貴族家(やっぱり使用人と護衛の人たち)。もう、この時点でかなりの人数なのだけど、領地からお兄様たちと一緒に私兵、大型と呼ばれる強く大きな魔物を討伐するエリート私兵『領主隊』が三部隊来ていた。
彼らは一部隊百人以上の人数で構成され、その中に一番隊、二番隊……と、十の小隊がある。一番隊から三番隊までは精鋭中の精鋭で、隊長は一番隊がお父様、二番隊がキャスバルお兄様、三番隊がトールお兄様。今回はお父様と二番隊から四番隊まで来ている。
この旅路は多くの貴族や一般人がいるため、無理はできない。安全に旅を進めるために、かなりゆっくり進んでいる。
時間がかかるのはいい。
それよりも王都の討伐隊が、私たちの真後ろについてきていることがなんとも引っかかる。
普段は考えないようにしているけどね……はぁ……ツラツラ考えていたら疲れてきちゃった……眠……い……
はっ⁉ メッチャ寝てた!
……あれ? 馬車は進んだかと思えば、すぐに止まってしまう……うーん? なんだろう?
窓の外を見ると、騎乗しているルークがいた! ……けど、何かおかしい……
「アニス……起きて……」
アニスは私の囁きでパチッと目を開け、パチパチと瞬きをする。
アニスは私の幼い頃からついている専属侍女でスッゴイ可愛いんですよ!
「エリーゼ様……どうかなさいましたか?」
いまだ凭れたままアニスが聞いてくる。
「外の様子がおかしいの、ルークの表情が硬い。何かあったのかも」
「……ルーク殿下に聞いてみますか?」
アニスも緊張した面持ちで確認をしてくる。
「呼んでちょうだい」
アニスはコクリと頷くと、馬車の窓に近寄った。鍵を解錠し、窓を開ける。その音に気がついたのか、ルークが馬を回して近付いてきた。
「エリーゼ……済まない。すぐそこに小さな町があるんだが、町の者たちが通り抜けは困る、泊まってくれと煩い。後続に王家派遣の討伐隊がいるから、彼らを泊めてくれと言っても納得しない。あぁ……ちょっと待ってくれ、伝令が来た。聞いてくる」
そう言ってルークは伝令の近くへと馬を回してしまった。何人もの騎士や隊員が伝令に近寄り、細々とした話を聞いているようだ。
……何か、怒ってる?
話を聞いたルークがこちらに近寄ってくるんだけど、顔がちょっとだけ怖くなっている。
「エリーゼ、シュバルツバルト侯は町を大きく迂回して野営すると決めた。すでに先頭は街道を外れ、動いている」
「えっ! ちょっと待って。大きく迂回するって、街道は町を通ってるのに? それじゃあ先頭は道を作って進んでるってこと?」
疑問をそのままルークにぶつける。
「あぁ、侯が『埒があかない!』とキレたらしい……そろそろ動くはずだ」
お父様ったら! ヤンチャなんだから! でも、道を作ってって…………
荒れ地を進むとなれば、馬の負担が大きくなる……迂回路作るくらい、私ならどぉってことない。
「ルーク、私を先頭に連れていって。草刈りは隊員に任せるけど、道っぽくするのは私がやりたい。無理はしないわ、お願い」
ルークはチラと前方を見ると、ひとつ頷き「クワイを、扉の方にまわす」と言って黒くて大きい馬、クワイを回してくれる。
私はアニスに「道作ってくる」と小さく呟くと、アニスも小声で「行ってらっしゃいませ」と言って窓を閉め、馬車の扉の鍵を開ける。
立ち上がり窓の外を見ると、扉の近くまでクワイが来ていた。
扉を開けると、目の前にクワイがつけられ、ルークが手を差し伸べてくる。
待て待て! ルークの従魔のノエルがおるやないか!
「ルーク! ノエルを馬車に移すわ。こちらにちょうだい」
私がそう叫ぶとルークがかけていたスリングの中からノエルはピョコッと頭を出す。
「いやにゃ! 主に、ついてくにゃ!」
ノエルがルークにギュッとしがみついて、叫ぶ。
「そうにゃ! ボクもついてくにゃ!」
「主についてくにゃ!」
タマとトラジも叫びました……そういや、立ち歩きネコって土属性の精霊だった……なら、力になるかも……
ちょっと前にテイムした、魔物だと思っていた立ち歩きネコ。ただの二足歩行のネコだと思ったら違ったのよね。ちなみに私がタマ(白)とトラジ(トラ縞柄)、ハチワレで長毛のノエルをルークがテイムしたのよ!
「付いてくるなら、走ってくるかどうにかして。ノエル、聞こえたなら今決めてちょうだい」
「はしるにゃ!」
ノエルはそう言うと、シュタッと華麗に地面に飛び降り、ルークを見上げている。
私はルークの手を掴み、クワイの背に飛び乗る。
鞍はどう見てもふたり乗り用に付け変えられていた。
馬車を見ると、タマとトラジが馬車から飛び降りて、私たちを見ている。
「アニス! 留守番を頼んだわよ!」
そしてルークは隊列の先頭へとクワイに蹴りを入れて走り出した。
振り返って見れば三匹は四本足で駆け出したが、途中で土の中に消えた……潜行だっけ? あんな感じなのかな?
シルヴァニア産の馬は巨体だが、駿馬でスタミナもあるため、軍馬より長く走れる。クワイの力強い走りでグングン進み、動き出しているお父様の乗っている馬車まで来た。
お父様は、青銀色の髪に青い瞳の美丈夫、というかイケオジで声も渋カッコイイ男性です! お母様とはラブラブですよ!
そんなお父様の馬車の窓を覗いてみると中は空っぽで、馬車に繋いでいた馬が一頭減って七頭になっていた。
「ルーク、多分お父様は先頭にいる。中は空だったわ」
「わかった、行こう」
再度クワイが走り出した後、ピョンッと三匹が土の中から出てきた。私たちの姿を見ると四本足で駆けてくる。
やがて領主隊二番隊の前に飛び出る。目の前には数名の隊員たちとお父様が騎馬していた。
「お父様! 私にも手伝わせてください!」
騎乗したまま、お父様は振り返ってニヤッと笑った。お父様、笑顔が黒いですわ!
「エリーゼ、いいところに来た。道を作れるか?」
「もちろんですわ。そのために来ました」
ルークはクワイをお父様の隣に付けてくれました。
前方で草やら藪を魔法でガンガン切ったりなんだりしている隊員たちを見て、指先に魔力を集め、道を作る……と言ってもただ土をギュッと固めるだけですけどね! 重い馬車が沈まないようにするだけだし! ……でも……
「地上に残った草の根っことか邪魔だなぁ……」
つい、ポロリと出てしまった……
「主! キレイにするにゃ!」
「なんにもはえてないようにするにゃ!」
「まかせるにゃ!」
三匹が草の根をシュパシュパ取っていく……どうやら、地面の浅いところで根切りしてキレイにしているようです。私は土くれだけになった部分を固めていきます。
……ザッザッと進んでいたクワイの足音がカッカッになりました。なかなかのハイペースです。
でもなんでこんなことになったのかしら?
「お父様、どうして迂回することになったのですか?」
お父様の厳しい表情をチラチラ見ながら聞いてみた。
「町の連中は泊まって金を落としてもらいたかったんだろう。とにかく泊まれ泊まれと煩くてな。宿屋の数や収容人数を聞いたら全然足りない。寄子貴族の者たちまでは泊まれる……が、使用人や領主隊、元王都民などは無理だ。ならば、野宿させればいいと言い出す始末でな。つい頭に来て、迂回して野営してやれと思ってな」
それはちょっと頭に来るかも。ようは金払いのいい貴族だけ泊まれなんて……
自分たちの都合だけで、通す通さないって言われるのは腹立たしい。
迂回した場所は幸い平野で見通しもいい。荒れ地っぽい草原で、ところどころに小木がぽつぽつ生えてるだけだ。
新たな道さえ作っておけば、街道利用者は使うんじゃなかろうか? ……てか、夕方に差し掛かってきたな……そうだ!
「お父様、この辺りで野営したらどうです? 道を作りながら進むより、野営の準備をする者と道を作る者とに分けて……」
「それはいい! 暗くなってからだと、野営の準備は負担が掛かるからな!」
「……ですね」
あっさり乗ってきましたね。さすがお父様です。
いくら町にお金を落としてもらいたくても、強要するのはどうかと思います! 腹立たしいのでよさげな休憩所を造ったらどうだろう?
ちょっとくらい、魔力を使っても気にしない! 町が大事なのはわかるけど、融通するとかいろいろあるでしょ! 他に選択肢なしだと困る人、絶対いるでしょ! 冗談じゃない! 誰も彼もがお金を持ってるわけじゃないんだから!
「私、道を作っていきますから、野営の準備はお父様にお任せいたします」
私たちはこのまま迂回路作りです。
だって腹立たしいんですもの! お金にならなそうな者たちは町の外で一晩過ごせって何なのよ! そんなことして魔物に襲われたら、死んじゃうじゃないの! 大切なうちの領民を減らすとか、できるわけないじゃない! うちは他所の領と違って、いつでも人手不足なのよっ!
怒りに任せて日が暮れるまで、隊員とニャンコたちで街道に繋がるところまで道を作ってやりましたわ! まさかこんなに短時間でできると思いませんでした。魔法って便利!
「できちゃったわね。道を照らすので、野営地に戻りましょう。……ライト」
バレーボールくらいの大きさの球体がフヨフヨと私の頭の上に現れ、優しい黄色の光を出す。
「ステータス!」
そりゃ小っさい声で言いましたよ、あら? やだわ……結構頑張ってたけど、魔力は大して減ってないわ。
「エリーゼ、お疲れさま。魔力どう?」
背中越しにルークが心配そうに聞いてきました。優しい!
「全然、大丈夫。ってか、思ったより魔力が減っていなくて驚いて……あっ!」
キュッと抱きしめられ、心配そうな顔が私の顔を覗き込んでくる。
「どうした? 何かあったのか?」
ちょっとドキドキしてしまう。
「……レベル上げたじゃない。減った魔力が戻るのが早くなって、ビックリしたのよ」
一とか二ずつ戻るんじゃなくて、十ずつ戻るとか早くない? 早いよね! レベルが上がると元に戻る数値も変わるとか、レベル上げしちゃうよね! 便利過ぎる! 機会があればレベル上げに励もうっと!
「なるほど……ま、これからレベルを上げられるだろうから、楽しみだな」
ルークが今度は少し浮かれた笑顔で言ってくる。
「そうね、そのときはよろしくね」
ポクポクとクワイをゆっくり歩かせて戻る。
野営地の灯りが見えてきました。昨日寄った村よりちょっと大きいだけの町のようです……石を使った防護壁があるだけ立派ですけどね!
「もう少しで野営地よ、気を抜かずに行きましょう!」
おぉー! って声と一緒ににゃあー! って鳴き声も聞こえました。
「フフッ。なんだか、仲良しになったみたい」
「俺たちが?」
ルークのボケた答えを聞いて、内心ガッカリする。何言ってるのよ……
「違うわよ。ニャンコたちと隊員よ」
「あぁ……さっき、声が揃っていたな。ん……風が冷たくなってきてる、大丈夫か?」
そう言われてみると頬に当たる風は冷たいかも? でも首から下はポッカポカなのよね。
「大丈夫よ。この武装ね、氷の上を滑る大きな兎の魔物の皮からできてるから、寒さをあんまり感じないのよ」
へぇ……と感嘆する声が聞こえたと思ったら、後ろから再びギュッとされました!
「確かにあったかい」
ウエストに巻きつくルークの腕に手を添えてみる……
「エリーゼ、そんな可愛いことするなよ」
耳元で囁かれました。イケメンめっ! ドキドキするわ!
リアル乙女ゲーとか、トキメキすぎて困るわ! ちっくしょー!
「ボクもギュッてしてほしいにゃ……!」
んっ? 今、ニャンコたちの誰かが抱っこ要求した!
んー? わかんないな! こういうときはだね……
「いいよー、おいでー!」
と言ってルークの腕に添えてた手を離して大きく広げる。さぁ! 誰が来る?
ピョンッと飛び乗ってきたのはノエルでした。
「うれしいにゃ!」
ルークのお供だけど、抱き締めてもいいよね? 軽くキュッと抱き締める。
「いいニオイがするにゃ! やさしいにゃ!」
フフッ、可愛い~。ノエルは何かあどけないのよね。
三角耳の後ろをコリコリと掻くと、気持ちよさそうに目を細め、クルクルと喉を鳴らす。
「ズルイにゃ!」
「そうにゃ!」
タマとトラジが抗議してきました。二匹とも不機嫌そうに尻尾をブンブン振ってます。
「そうね、抱っこは無理だけど、ルークの背中にくっつくのはいいと思うわよ」
「やったにゃ!」
「のるにゃ!」
そう言うとピョンッと二匹同時に飛び上がりました。
「おっ……と、ハハッ……二匹とも軽いな、しっかり掴まっとけよ」
クワイも嫌がることなく進んでます。
あれ? 昨日の野営地より広く場所を取ったのかな? なかなか到着しないわ……
「かなり広げて野営地をつくったな……」
どうやらルークも同じ意見のようです。
じゃあ、私は晩ご飯の準備に行こう! 魔力はほとんど元に戻ったけど、お腹は空くのよ!
「ルーク、私も中央広場に行って晩ご飯の準備に入りたいの。だからクワイから降りて行くわ。ありがとうね、クワイ」
「わかった、俺もクワイを繋げに行かなきゃならないしな。晩ご飯、期待している」
私はノエルを抱っこしたままクワイから降り、ノエルをルークに手渡す。タマとトラジもピョンと飛び降りて私の足元に来る。
「じゃあ、また後で……って言いたいけど、晩ご飯に昨日狩った牙猪の肉を使うから、なるべく早く来てね」
「了解、クワイを繋いだらすぐ行くよ」
タマとトラジの軽い足音を聞きながら、私は大急ぎで中央の広場を目指して早歩きした。
…………うん、広くとったなー…………
「おぉ! エリーゼ、来たか。道はできたか?」
うん、お父様、ウキウキで聞いてきましたね。
「もちろん、できましたわ。コンロを作る前に、試したいことがありますの。よろしいかしら⁉」
よろしいわよね、お父様……?
「おっ……おぉ……任せる」
あら嫌ですわ、お父様ったらなんでそんな怯えた顔で頷かれるのかしら?
まぁ、いいわ……調理場を屋根付きにしたいのよね。幸い簡易の魔物除けエリア内には人がいないから、やりやすいわ。
お昼の時のことで皆、魔物除けの外側で待っていればいいと学習したようね……
サクッと四阿風に造ったるわぁ!
「セイッ! …………セイッセイ! …………クックックッ…………ヨォシ…………これで四阿風にできたぞーい、後はコンロを二台…………セェイッ‼ 完成じゃあぁぁい!」
はい、立派な四阿&コンロができましたぁ! 我ながらいい出来!
コンロが二台あれば、片方で汁物とか作れるしね! 屋根付きだから雨が降っても大丈夫!
おぉ~とかすごい! とか聞こえる……もっと言って! もっと褒めて!
「すごいにゃ!」
「さすがにゃ!」
うん、タマとトラジがキラキラした目で私を見上げながら褒めてくれました。
私の完成という言葉を聞いた料理長&料理人&使用人が中央広場にテーブルを組み立ててます。それも大きいのを三台……大鍋もゴンゴン置かれ、食器類もジャンジャン置かれています。料理長も料理人も王都の邸から一緒に来た心強い私の仲間です。
特に料理長にはいろいろとお世話になってます。大きな体にハスッぱな言葉使いですが、気にしません。
……もう、何かいろいろ面倒くさい……見られたって構うものか、『無限収納』からジャンジャン出そう。文句ある奴は、ぶん殴ってでも黙らす。私もテーブルの近くに行き、ワインをジャンジャン出す。
「料理長、米を出すので料理人に研ぎ方を教えてあげてちょうだい」
返事も待たずに米を十キロ、大鍋に出す。それも都合三回、計三十キロ分。
「洗うのだけは、この大鍋でやってくれる? 誰か水魔法を使える人と一緒に行ってもらって」
「はいっ!」
料理長は返事とともに、米の入った大鍋と料理人を引き連れて消えました。何か叫んでいたので、隊員たちに募集をかけていったのでしょう。
気持ち大きい鍋をコトンと出して、赤味噌と砂糖と少しの椿油を出します。
「トラジ、ちょっとおいで」
お玉を鍋の中に出してから、近寄ってきたトラジを抱き上げる。
「はい、トラジ。掻き回して」
「わかったにゃ! まかせるにゃ!」
ニャオーンと歌いながら、掻き回しています……抱き上げてるので下半身がブリンブリン揺れています。目の前を尻尾があっちにフリフリ、こっちにフリフリ。
そろそろかな? と思った瞬間、尻尾がピーンと真っ直ぐになりました!
「できたにゃ!」
タイミングはバッチリ、以心伝心、甘い味噌ダレ完成です!
トラジをヒョイと降ろして、テーブルにキャベツを出します……山盛りに出します……これでルークに牙猪の肉を出してもらって、薄切りにして炒めればホイコーロー的なやつができるはず!
スープも鶏ガラにタマネギと溶き卵で中華風なら違和感ないでしょう!
デザートは何か疲れたし甘い物にしよう……今からなら、小豆を炊いてもいいかな? いいよね……
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※気が向いたら物語の補填となるような短めなお話を追加していこうかなと思うので、気長にお待ちいただければ幸いです。
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