婚約破棄されまして(笑)

竹本 芳生

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連載

嫁入り支度 54

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長い廊下に階段上がって、また長い廊下を歩いて一つの扉の前で立ち止まる。
元々キャスバルお兄様の部屋だったここは、今はルークの自室となった。
ルークが追い出したのではなく、ここ本館の後ろに建てられてる別館の両側に増築された……両翼館?何て言うのかしら?そこの向かって左側がキャスバルお兄様の住まいに、右側がトールお兄様のお住まいになった。
いずれ婚姻し、妻を迎えるのだからとお父様が張り切ったとか……まあ、婚姻するのに部屋住まいとか駄目に決まってる!とか思ったのかも知れないわ……ね?
でも、お父様とお母様って部屋住まいじゃなかったのかしら?分からないわ……

「エリーゼ、お休み」

しまった!ルークとお休みなさいの挨拶しなきゃ!

「ええ、ルークもお休みなさい」

少しだけ離れがたくて見詰めあう。

「キース、お休みなさい」

「アニスもお休み」

ああ、そう言えば二人もお休みなさいの挨拶……ね……って抱き締め合ってるじゃないの!羨ましいわね!
バッ!とルークを見たら、ルークはサッと抱き締めてくれました!分かってくれるルーク最高!

「お休み。……困ったな、離したくなくなるな……」

ルークの体温とか鼓動とか胸板とか、もう何もかもがこのままでいたい!と訴えてくる。

「離れたくないのは一緒よ……」

最近のルークからは良い匂いがする。多分だけど、ハーブとかドライフラワーとかで匂い袋的な物を作ったんじゃないかな?アニスも作ってくれて、クローゼットとかに置いてある。
それに入浴剤代わりのハーブのブーケとかも家族全員(の側近とか専属侍女が)色々作って使ってる。
優しい森の中みたいな香りがルークに似合っててウットリする。

「エリーゼ……」

「ん?何……」

ルークの小声に顔を上げて聞き直せば、そのまま触れるだけの優しいキスをされた。
口先が触れるだけのキスを何度もして、このまま流されそうで怖くなってトンッ!と胸を押した。

「これ以上はダメ……」

「ごめん、分かった。悪かった」

「お休みなさい」

「ああ、お休み」

もう一度、念を押すように挨拶してルークから離れた。後、数ヶ月の我慢だけど……ルークの顔を見てドキリとする。
その目に宿る欲望に体が熱を帯びる。
渇望されて歓びに打ち震える自分の体。理性を総動員してルークに背を向ける。
歩き出した私の隣にアニスが来る。

「大丈夫ですか?」

「何とか」

私達は立ち止まる事も振りかえる事もせず早足で私の自室へと向かった。
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