婚約破棄されまして(笑)

竹本 芳生

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連載

嫁入り支度 55

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あくまでも歩いて、表情はなるべく変えない。
落ち着け……落ち着くのよ……かつては貴族令嬢のお手本として学園で尊敬されてたのよ……
でも、ルークと出会って変わってしまった。部屋が隣同士なのにも拘わらず、この距離がもどかしく切ない。
これ程迄に心が囚われるなんて思いもしなかった。雪が余り降らない海岸よりのこの領都も徐々に春の気配を感じて来ている。
もう少し暖かくなればキャスバルお兄様の婚約者様が帝国から来て、こちらの様子や私達家族と交流する。
初めて会う事になる婚約者様に緊張するけれど、新たな家族となる方だもの仲良くしたいわ。それに帝国の学院の様子も気になる。
婚約者様にはゆっくり滞在して貰って、私とルークの婚姻式に参列して頂く。
ルークのお父様とお母様も帝国からいらっしゃる予定だし、お母様の母……お祖母さまも来るっていつだったか言っていたわ。
随分と賑やかになるのね……それに領地の古くから我が家に仕えてる方々に寄子貴族に近隣の貴族家。
こんなに大勢の方達が来るのだもの、お母様も忙しいのに良いのかしら?

「エリーゼ様、そろそろ落ち着いて下さいませ。お茶を入れますね」

え?どうやら私は考え事をしながらウロウロと歩き回っていた様だった。私の後をついてタマ、トラジ、リコ、ユキ、ヒナ、ピカ太郎とスラ道が順番に立っていました。それも一列について歩いてたらしく、部屋の中点々と立って私を見ている。

「ごめん。考え事をしていたわ……」

慌てた訳じゃないのだけど、ソファへと向かい腰を落とす。

「皆も楽にしていて良いわよ」

アニスがお茶を淹れてくれる音を聞きながら、カワイコちゃん達が移動するのをボンヤリと見る。
あー……まだスラ道の中心赤いなー……

「ねぇ、スラ道の中心が赤いのってラー油食べたか飲んだからなの?」

考えるより先に言葉が出た。

「ピカ太郎が食べたいと言っていたから、それならば是非とも口にしようと一緒に頼んだのだよ主よ!」

うん……バカなのかな?それとも興味からなのかしら?

「美味しかったかしら?」

「辛いとは思ったが、美味しいかは理解出来ない。だが今も中心が熱く調子も悪くない」

調子も悪くない?どう言う事かしら?水の精霊なのに油を取り込むって……

「主の希望とあらば辛い水を吹き出す事も出来る!」

「いや、出さなくて良いから」

辛い水って、どこの罰ゲームなのよ。スラ道も面白い事、言わないでほしいわ。
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