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4巻
4-1
しおりを挟む旅路はまだまだ続く
ヌクヌクとした微睡みの中、ゆっくり瞼を開け腕の中の専属侍女のアニスを見詰める。
「えへ。おはようございます、エリーゼ様」
いつから起きていたのか……少しだけ体を離し、グイーッと体を伸ばす。さすがに朝の空気は肌寒い。そりゃあ、くっついてしまうよね……
「おはよう。今日も天気が良さそう」
基本的に雨量が少ないのが塩街道の特徴。かわりに水源地が何か所もあって、どこの領地も水源地の管理は重要事項……ここは外れだからほとんど手を入れてない渓谷だと思う…………いや、美味しい丸鳥の一大生息地だから手つかず……なんてことないわよね?
いや、あり得るのかも……ん? ステータスをいじってマップを確認する。
うーん? 渓谷に散らばる魔物の数が増えてる? ……まさかの繁殖力です。
早いなー……でも、仕方ないか。たくさん食べられちゃうもんね、頑張って繁殖しないと絶滅しちゃうものね。
「エリーゼ様?」
「ああ、ゴメン。何かあったの?」
「そろそろ起きますか?」
「そうね……起きましょうか」
もそもそと動いてヒナたちを見る…………ん?
「ねぇ、アニス。私の気のせいでなければ、こっち側にタマがいたわよね?」
「そうですよ。手前がタマちゃんで奥にトラちゃんですよ」
「そうよね、私たちが寝る時はそうだったわよね」
いそいそと毛布を畳んでいたアニスが、ヒナたちをジッと見詰める。
「あれ? ねぇ……エリーゼ様……ヒナちゃんって、あの場所でした?」
「そうよね。やっぱり、そう思うよね」
ニャンコが朝の運動会よろしく抜け出しているのは知ってるけど、ヒナも一緒に?
ちょっとおかしくない? おかしいでしょ! これは一度ちゃんと聞かないとダメかな?
「ふふ……タマ! トラジ! ヒナ! 起きなさい!」
ちょっと張り気味に2匹と一羽に声を掛ける。
「にゃにゃっ!」
「うにゃっ!」
ピュピュッ!(なっ! なにっ!)
三匹揃ってワタワタとしているので、少し待つ。
「主……?」
「どうしたにゃ?」
ピュ~イ?(なぁに?)
二匹と一羽は固まったまま私を見る。
「ねぇ、あなたたち朝方馬車から抜け出してるわよね。トイレかと思ったけど何してるの?」
タマとトラジは顔を見合わせ、小さくウニャウニャ言ってるし、ヒナはそれを聞いてスッゴく小さくピュッピュッって鳴いてる。あれで会話が成り立つんだ。
「主……きいてもおこらないにゃ?」
トラジとヒナは黙ったまま。タマが代表で言うってことですか。
「聞いてみなければわからないわ。でも特に怪我もしてないし、悪いことでもしてなければ怒らないわよ」
タマはコクンと一つ頷くと、トラジとヒナを見てから私を真っ直ぐ見つめた。
「主、ボクたちあさのしゅうかいで、ふえのれんしゅうしたりしてるにゃ。いっしょにおどったりはしったりしてるにゃ……」
笛? ……回復笛の練習? あとは普通に運動会ね。はぁ……これは怒れない。
「笛の練習も踊ったり走ったりも構わないわ。でも……そうね、あなたたちだけなの?」
「ちがうにゃ、ノエルもいっしょにゃ!」
ノエルっ! ルークがテイムした立ち歩き猫! ルークのことアレコレ言えないっ! あんの甘えっ子めぇ!
「教えてくれてありがとう、怪我しないようにしてね」
「わかったにゃ!」
「よかったにゃ!」
ピュイ~ピュイッ!(よかったねタマ!)
後でルークにもチクっておこう。そして明け方見に行こうっと♪ どんな風に遊んでるか気になるしね! 普段から可愛いんだからきっともっと可愛いはず!
さて、朝ご飯作りに行こっか……と、その前にヒナの大きさを元に戻さないと。
「とりあえず馬車から出るわよ」
「はいにゃ!」
「わかったにゃ!」
ピュイ~!(は~い!)
「アニス、馬車の中はそのままで良いわよ」
「はいっ!」
ぞろぞろと馬車から出て、ガシッとヒナを掴む。
ピュ?(え?)
「ヒナの大きさ、元通りにな~れ♪」
手からキラキラと光の粒が出て、ヒナに纏わり付き大きさが元通りになりました。
ピュイ~(戻った~)
「そうね、元に戻ったわね」
「おっきくなったにゃ!」
「もとにもどったにゃ!」
「さすがです、エリーゼ様!」
ちゃんと戻って良かった! 私が一番不安だったことは内緒にしておこう! さて、朝ご飯だ!
「さ、向こうに行って朝ご飯作らなきゃ! トラジもタマもお手伝いよろしくね!」
「もちろんにゃ!」
「がんばるにゃ!」
ピュピュピュ~イ!(二人ともスゴイよ~!)
避難民との合流
私たちは一緒にコンロのある場所まで歩いていく。途中で聞こえた「ヒナちゃんが~」とか「小さかったのに!」っていう発言は明らかにチビヒナを見た目撃証言だね!
料理長が待ち構えてました。王都の邸の料理長だった彼はちょっと強面で言葉使いも悪いけど、私の言うことを理解して協力してくれる良い人です。
「お嬢、今朝は何にしますか」
「今朝はとにかく丸鳥のスクランブルエッグが食べたくて。丸鳥の卵はとても美味しいと聞いたから。あとはパンに焼き野菜、スープと肉を焼いた物はどうかしら?」
料理長は蕩けそうな(貴重!)それはそれは甘ったるい笑顔でした。
「それはもう! コクのあるまったりとした滋味溢れる味です! ただの卵とは比べ物にならないくらい美味いんすよ!」
うん、そんな風に熱く語られちゃうと期待しちゃうなぁ……
「じゃあ、卵出すから作ってね!」
「えっ! あるんですかい!」
驚いてる、驚いてる(笑)
「あるわよー、幾つあれば良い?」
「にっ……二個……」
「二個ね、はい」
一個ずつ出して、台に載せる。……結構大きいよね。料理長が何か感動してるなー。
「じゃあ野菜とか出すわねー、あとボアの肉も」
台の上にじゃんじゃん出していく。料理人がアレコレ持っていって、焼き野菜を作ったりスープを煮込んだりボアの肉を薄く切って焼き出したり。
最近パンは料理人たちが作ってくれるので、粉やら何やら出しておく。
……米粉のパンとかどうなの? 小麦粉に混ぜれば良いの? わからないけど、後からいろいろトライしよう。
米粉ともち米粉もやってみたいなぁ……
「おくれたにゃ!」
ノエルが大慌てでやって来た。あ! コンロに向かって……三匹揃って横一列に並んでスープのお玉持ってクルクル混ぜてる。後ろからルークもやって来ました。帝国皇子のキラキラ感が眩しいです!
ニャンニャニャ♪ と歌って尻尾も同じように振ってる……やだ、もう可愛い~!
ハッ! すごく良い匂いがする! あれが丸鳥の卵料理の香りか!
「エリーゼ、何かすごく良い匂いがするけど」
「丸鳥の卵でスクランブルエッグを頼んだの。めちゃくちゃ良い匂いで、お腹空いちゃう」
「本当だな。もう少し卵を取りに行くか?」
「今日はダメ。いろいろやりたいことあるから。でもルークが丸鳥の卵をじゃんじゃん取ってくれるなら嬉しい」
「わかった。なるべくたくさん取ってくるよ」
「よろしくね」
ルークは卵の出し方知ってるから、たくさん取れそう! 大勢の人がワラワラと出て来て、朝食を待つ。
テンション高めの料理長が、ノリノリでお皿にスクランブルエッグを載せてフォークと共に私に差し出す。
無言で受け取り、柔らかそうなスクランブルエッグを少しだけ掬ってパクリと食べる……え? 濃厚~! フワフワのトロトロ! マッタリとしてコクのある味! 烏骨鶏の卵より美味しい!
「すごい……こんなに美味しいスクランブルエッグ……今まで生きてきた、全ての記憶の中で最高の味だわ」
「なっ! なにぃっ!」
うん、ルーク。驚くのはやめて。でも本当にこんな美味しいスクランブルエッグ、初めてだわ。
「聞いて良いか! エリーゼの中で今までの中で一番の卵は?」
すんごい小声で耳元に囁いてきましたよ……全く色っぽくないのがミソです。
「放し飼いの烏骨鶏の卵かな?」
ゴクリッ‼ ルークの喉が鳴る音がしました。と思ったら走って料理長の元に行きました。
朝食はどうやら争奪戦になりそうですね。
私? 私は黙々と食べるだけですよ。だって料理長がおかわり持って待機してますもの。
朝食をサクサクと進め、今は食後の紅茶を飲んでます。
米粉は普通のお米の粉で、もち米粉はもち米からなのはわかる。問題は前世では買っていたから、良くわからない上新粉とか白玉粉って何よ? って話です。
お餅が作れるなら、粉も作れるのかしら?(率直な意見)
〈もちろん作れます。何の粉を作りますか?〉
ご褒美アイランドの管理をしてくれているナビさんが早速のレスポンスです。
米粉ともち米粉。片栗粉も欲しいなぁ……とりあえず十キロずつくらい。
〈では米粉・もち米粉・片栗粉を製造いたします〉
ありがとうナビさん! どうやって作るのかわからなくて困ってた!
〈いいえ、簡単な作業なのですぐにできます。お餅は昼過ぎになります〉
ありがとう! ……ってフワッと私の魔力が抜けました! 微々たるものだけど。
〈マスター、米粉・もち米粉・片栗粉できあがりました〉
はっや! よし! いろいろトライだ~! 頑張るぞ~!
「エリーゼ、行ってくる。頑張って取ってくるよ」
……これは……朝の出勤の見送り的な発言? わかんないけど。
とりあえず、笑顔だ! 笑顔でお見送りだ!
「ルーク……うん、いってらっしゃい! 頑張ってね!」
超絶笑顔でバイバイキ~ン、テヘ。バイバイと手を振る。ノエルを連れて離れるルークの後ろ姿をたっくさん獲ってこい~! と見送る。
「さ、料理長。今日は私も初めてのことに取り組むから、頑張りましょう!」
まずは米粉から行こう! 一キロ出してから、小さな鍋や浅鍋(フライパン)を出す。さらに小さめのボウルを幾つも出しておく。
「はい」
私と料理長、料理人たちでああでもないこうでもないと、いろいろトライしてできたのは半透明の麺とパンと生春巻きの皮(ちょっと厚め)とアンコを包むのに適したものができました。団子的な物にしてみたが、何かが違う……団子的なのをやめてアンコを包むようにする。
次はもち米粉です。
一キロ出して、いきなり団子(サツマイモと粒あんを包んだ団子)や白玉を作る。正解ですね! モチモチ感があります。
もち粉は米粉と違って白玉とか団子用だね。
料理長と料理人たちは楽しそうに団子を作りまくってます。
「今から小豆を出すから、ちょっと炊いてちょうだい」
目の前に山盛りに積まれた団子を見て、みたらし団子が食べたくなりました。でもお汁粉も食べたくなっちゃったので小豆も炊いてもらいます。
醤油も砂糖もあるし、片栗粉もできたし! みたらし団子が食べられる!
小豆をドサッと出しておく。
「エリーゼ! アンコね! アンコを作るのね! お母様、とっても楽しみ!」
早速ですよ。すごい良い笑顔でお母様が寄って来ました。ブレないスイーツ女子、それがお母様です。
「そうですね、でもアンコは夜です」
途端にションボリしましたよ。どんだけアンコ星人ですか!
さらに醤油・砂糖・片栗粉を出し、細い串も出す。
「作ったお団子、この細い串に刺して。三個ずつね!」
「「「はいっ!」」」
みたらしの餡を作ります。横で料理長が興味津々で見てます。
だって、よく似た白い粉が出てきたもんね!
コンロには火が入ってるので、鍋に水を入れて砂糖と醤油を入れます。
まーぜまぜまぜ♪ 甘塩っぱい! 良い! よし、水溶き片栗粉を作って……
「お嬢、この串に刺した団子はどうするんで?」
「コンロで少し炙って。ちょっと焦げ目が付いたら、私にちょうだい」
「はい」
水溶き片栗粉をイン! 手早く混ぜる! トロトロ~ンとなりました!
餡の完成です! 多分! 砂糖醤油の生じょっぱい匂い最高!
「お嬢、これでどうです?」
チラッと見たお団子を見て、良さそうだな……と思い、串を受け取る。
そのまま餡にイン! すぐに出す! パクッと食べる。
「みたらし~! これは良い!」
「ちょっと! お母様も食べたい~!」
手渡された串を受け取り、餡にくぐらせてお母様に手渡す。
みたらし団子を受け取ったお母様はハフハフしながら食べています。
答えは聞かなくても表情でわかります。だって笑顔ですものー。
「すご~い! 美味しいわね~、モチモチっとして。それにあったかくて! ね、もう一本ちょうだい」
聞いてた料理長がサッと串を私に手渡す。私もサッと餡をくぐらせる。流れるようにお母様に手渡す。
コトリと近くにお皿が置かれたので、料理人たちが団子製作・串刺し→料理長が焼き→私が餡付けと言う流れができました。もちろん餡にくぐらせたみたらし団子を皿にポンポン載せる。料理長も一串手に取り、ハグハグ食べる。
「うんめぇ~! こいつぁ良い!」
料理長が褒めたからか、野営地に残った者たちがワラワラ寄って来ました。
私は料理人に交代してもらって、再度材料を出す。
最早私が何か言わなくても、料理人たちが率先してさまざまなことを行う。次々と作られる団子、どんどん串刺しになる団子。……団子でお腹いっぱいにするわけじゃないわよね? 心配をよそに作られ続け、食べられるみたらし団子。
夜にも作って、今渓谷にいる人たちにも食べてもらおうっと♪
そして山盛りのみたらし団子はあっという間に消えました。……早すぎるでしょ。また後で作るけど。
お昼に戻って来る人たちに持たせる用に飴でも作るかな……
「料理長、まだ昼食を作るには早いから飴玉を作ろうと思うのだけど」
「良いですね! さすがお嬢ですよ」
料理長も料理人たちも賛成してくれた。材料を出して一言声をかけるだけで料理人が手分けして作り始める。
……道具は使用頻度が高いせいか、リストの上にある。リストに学習機能ついてるんだな……
何も言わなくてもあちこちで飴玉が作られてます。
飴玉は温度が高くなるので、ニャンコは不参加です。
なのでタマ・トラジ・ヒナは一緒に旅をしてるちびっ子たちと遊んでます。大人気(笑)
うん、順調に飴玉が増えて……ニャンコ共々飴玉の前にちびっ子が鈴なりになってる。
料理長がチラチラ見てきてる、これはアレですね。ちびっ子たちに飴玉あげたいんすけどってヤツですね。見ればわかります。
「ふふっ……皆好きなの舐めて良いわよ」
私の一言でキャアキャアと楽しそうに選んでます。
「かあさまにもってっていーい?」
やん! 可愛い! 誰かわからないけど、その気持ちは大事よ!
「良いわよ。好きな人と一緒に舐めたら、もっと美味しいわよ」
ワアッと喜ぶちびっ子たち、うん……持ってけ持ってけ。両手に飴玉握りしめて散らばった。
「主! はいにゃ!」
「ぼくからもにゃ!」
タマとトラジよ……私作ってる人だけど、その気持ちが嬉しいわ。
「ありがとう。じゃあ、一緒に舐めましょうか」
互いに差し出した飴玉は違う色……味のものでした。でもキニシナイ!
両方受け取り、二個口の中に入れる。ほっぺたパンパンですが、幸せな味がします。
「ボクもなめるにゃ!」
「ボクもにゃ!」
二匹も飴玉を口の中に放り込む。片っぽの頬がポコンとなって可愛いです。
チラチラと見てくる料理人たち、うんあなたたちもよ。
「材料はあるんだし、あなたたちも味見がてらに舐めて良いのよ」
嬉しそう……料理人たちもだけど、料理長もです。何で甘い物って幸せな気分になるのかしら? とりあえずはうちの領地でスイーツ普及すれば良いわよね!
さて、追加の材料を出しておこうっと。
はい! 色とりどりの飴玉が完成しました! 山盛りいっぱいね! 保存もきくし、困らないし。疲れた時の強い味方よね。
こんなにたくさんあると、アンネローゼ様やミネルバ様にもあげたいわね……きっと気に入ってもらえると思うのよね。
まぁ、それはまた今度でも良いか。そうだ、輿入れのお祝いにお菓子贈ろう……ちょっと良さそうなやつを。
それは、とりあえず置いといて……お昼ご飯なんにしようかな?
マップ確認……うん、意外とワチャワチャしてる。丸鳥の数が減ってるから、それなりに狩りができてるんだろうな……持ってき次第しまっちゃおう! 手間暇掛かっちゃうからね!
「お嬢、米粉を使ったパン、美味いから広めようって部下たちが言ってきてるんですが……」
「うん? お米はあるから、良いけど……領地でお米の生産もやってもらわないとね」
私一人じゃ限界あらぁ! 水田作ってもらわないと……棚田が良いかもなぁ……機械ないし、風通り考えたら平面よりも斜面のが良いよね……
パンかぁ……パンねぇ……そういや、今までのパンて固かったんだよね。米粉パンて柔らかいからね……お年寄りは喜びそう。前世は柔らかいパンばっかりだったな! あんパン、ジャムパン、カレーパン♪ だっけ? いろんなパンあったなぁ……
作るか……今、ここで惣菜パンとか作れば広まるな! きっと! 菓子系パンもいろいろ作っても良いと思う! こっちの固いパンじゃ無理だもん!
よし! 今からとっかかって、いろんなパンを作って皆で食べて感想を聞いてみよう!
料理長は……ちょっと離れたトコにいるなぁ。
「料理長! 料理長ーっ!」
「お呼びですかい?」
呼んだらのっそりと現れました。
「呼んだ、呼んだ。お昼ご飯にパンをね……パンの中にいろいろ具材を詰めたり何だりしたパンを作ろうと思うの!」
「へぇ……パンに詰めるんですかい……」
「そう! 前にパンに具材を挟んだ物は作ったけど、何かを先に入れて焼いたパンは作ってなかったわよね。どうかしら?」
「面白そうですね……例えばどんな物を?」
「うーん……炒めた肉と野菜とか? 焼いた肉と生の野菜……果物を包んでも良いし、肉団子も良いな!」
「ハハハッ面白そうだし、美味しそうだ! 手軽に食べれるのも良い! さすが、お嬢!」
「米粉をどっさり出すからたくさん作りましょう。焼くのは任せるわ」
「へい!」
まずは具材の調理……料理人たちも楽しそうです。やっぱり食べてみたい味から作るようです。
いや、パン職人的な料理人がパンを作り出しました。
……こんな時思う……チーズがあれば……と。チーズあったらパニーニ食べたい! てかピザ食べたい! とろ~りチーズの熱々ピザ! チーズ使ったバーガーとか! スイーツ系パンとか! バターがあればクロワッサンとかデニッシュとか食べれるのに! シ〇ノワール食べたい! タケ〇コパン食べたい! タケ〇コパン!
うあああああぁぁぁぁぁ! タケ〇コパン~!
クソ……絶対…………絶対バターが手に入ったら再現してやる…………ホイップクリームも生クリーム使って再現する…………絶対。
「お嬢、なんか……目が……」
「あら? 料理長、どうかしたのかしら?」
「ヒッ! オッカネェんでやめてください」
しまった! ちょっと正気を失ってたみたい。イヤだわ。
話し掛けられて、振り返って見た料理長が完全にビビってました。反省!
「ところでどうしたの?」
「挟んだやつも作りたいってんで、構わねぇですか?」
「良いわよ。肉でも魚でもじゃんじゃん挟んで良いと思うのよ」
「魚? 魚をですか?」
あら、思い付きもしなかったって顔だわ。
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