婚約破棄されまして(笑)

竹本 芳生

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5巻

5-1

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   二人きりの内緒話


 皆こんにちは! 私はエリーゼ・フォン・シュバルツバルト侯爵令嬢、ピチピチの十八歳! 
 なんと私、学園卒業のお祝いの場で王子様に婚約破棄されたんです! そして、そのショックのせいか分からないのですが前世を思い出したのです! ええ、それはもうハッキリ・シッカリ! 
 でも、王家はブラック企業も真っ青のハードワーク! これ幸いと婚約破棄を受け入れグッバイ王家! となった筈でしたが、なぜか、元婚約者の婚姻のお祝いの夜会に行く事になりました。ま、良いんです。それで永遠にバイバイなら……
 心残りは元婚約者に友人である令嬢二人が側妃として嫁ぐ事……
 私は一人遠く離れた実家の領地で頑張るからね! と気持ちを新たに日々を過ごすべく領地への旅路についております。
 父母は私と一緒に王都で暮らしていました。領地は頼れる長兄キャスバルお兄様と次兄トールお兄様が切り盛りしていたのですが私の婚姻式の為に王都にきていたのです。なのにこの有様(笑)。王都にいる理由が無くなり家族全員で領地に帰る事になりました! パンパカパーン! 
 さらにどんな縁なのか隣国である帝国から来た、ルーク皇子が私と一緒に我が領地について来る事に……って私が胃袋をガッチリ掴んだからなんだけどね! まさかラーメンが決め手になるとはね! 
 で、旅路でも色々色々あって、可愛いニャンコをテイムしたら正体が土属性の精霊だったり……
 ずっと私に仕えると誓ってくれた専属侍女のアニスをはじめ王都の邸からついて来てる使用人達、王都民、私兵と領地を目指してます。お祝いの為に来てくれた寄子よりこ貴族や仲の良い近くの貴族の皆様も一緒です! 


「エリーゼ様、そろそろ外に参りましょう。篝火かがりびいて明るく照らされてますよ」

 屋外ではやはり篝火が多い。雰囲気出るし、嫌いじゃない。炎の揺らめきが落ち着くから。

「そうね。じゃあ、皆行こっか」
「主といっしょ、うれしいにゃ!」

 そうタマが言えば。

「主、てをつなぐにゃ!」

 とトラジが言う。おかげで私の両手はタマとトラジで埋まってしまった。私の後ろを歩きクスクス笑うアニスの隣にはヒョイとくわえられてヒナの背中に乗ったチュウタローと、ピョコピョコとお尻を振りながら陽気に歩くヒナ。
 不思議な程に落ち着く。これが普通で当たり前な気がする。チュウタローも乳にこだわらなければ可愛いと思うのに、なんであんなに残念なのか……ヨコシマな奴め。


 街長まちおさの屋敷の中庭に急拵きゅうごしらえのテーブルが幾つも出され、お父様を始め寄子よりこ貴族の方々も旅装のままワインを飲みながら楽しそうに話している。
 あちらこちらを見てるうちにルークがノエルとルチルと一緒に食事をしている姿が見えた。ノエルが気付いてルークに何か話しかけると、ルークが慌てて私を見て大きく手を振る。
 ルークはとても帝国の皇子様には見えない。でも、嬉しくて大きく手を振り返す。勿論小さな声で「ゴメンね」とタマに断ってから。
 タマもトラジもヒナもチュウタローも嬉しそうに駆けていった。

「ずっと仲良しだったから、仕方ないですね」

 アニスの一言に苦笑いしてルークと見つめ合う。距離があるのに、なんだか気持ちが通じてるみたい……不思議だわ。

「そうね、仕方ないわね。だって毎朝仲良く集会してたものね」
「そうですね」

 チュウタローとルチルの小っちゃくて丸い体がハグする姿はまさに団子のようだ……いや、可愛いんですけどね。
 ノエルはニャアニャア泣いてる。うん、ゴメンね。その涙の原因は私だって分かってるから、ちょっと良心が……
 ルークに近付き手が届く距離になって、話し掛けようとした瞬間強く……強く手を引かれ抱き締められた。
 な……なんで? なんで? どうしたの? 好きな人から抱き締められて喜ばない女は居ない。けど急すぎない? 

「離れてると不安でたまらない。もう、どうしようもない位心の中にエリーゼが居る。どうしたら俺の気持ちが伝わるんだろう……」

 どどど……どうしよう! ルークの体温と抱き締められて密着する体で! そんな甘い言葉を耳の中に流し込むように囁かれて頭おかしくなりそう! 私最大のピンチです! 色んな意味で! 

「ルルル……ルーク……」
「エリーゼ……エリーゼの全部が好きで独り占めしたい……」

 ルークのまるで血を吐く様な呟きになんだか目頭が熱くなる。
 こんな風に思われた事、前世でも今世でも無い。
 私達はどちらも泣いていた。私の頬に落ちるルークの涙を私は指で拭うとルークは私の涙をすすった。

「エリーゼ、愛してる。他の誰かじゃない」


「ん……私も……私も愛してる。お願い一人にしないで」
「一人になんて……しないとは約束出来ないかも」

 あ……お婿さんになるなら、領主隊に入らなきゃだから。我が家の男性陣は領地を守る精鋭部隊の隊長となるため、領主隊に入らなければならないのだけど、領主隊は遠征に行かないといけない。きっと家族の誰かに聞いたのね。自分の間抜け具合に笑ってしまう。

「そうね。一人っていうのは、そういうことじゃないわ。この婚約を解消したり、私を置いて死んだりしないでって事よ」

 ルークは真剣な顔のまま見つめ、額にチュッとキスして優しく微笑んだ。

「約束するよ。婚姻してずっと一緒に居よう」

 嬉しい……

「約束よ。ずっと一緒よ。さぁ……そろそろ戻りましょうか、皆が心配しちゃうわ」

 ルークはちょっとだけ困った顔で笑った。

「ゴメン、先に戻って貰って良いか? その……」
「分かったわ。その……あんまり遅くならないでね」
「ああ……」

 私は一人四阿あずまやから出て、多くの人がいる中庭へ歩き出した。


 少しだけフワフワした足取りで戻るとタマ達がこちらに向かって駆けて来た。その姿に気づいて、待ち構える……うん、チュウタローがタマを抜きました。でも、安心して下さい! ヒナがダッシュして大きい足で鷲掴みにしました。ちょっと浮いてます……ヒナの足での鷲掴みってガチ感凄いですね。

「まってたにゃ!」
「まってたにゃ!」

 うん、タマもトラジもゴメンね。それにしても……ヒナの鷲掴みが凄いのかチュウタローの必死さが凄いのか。チュウタローの後ろ足はバタバタ走ってる感が凄いです。前足は助けを求めてるのか、私の胸を求めてるのか上下に振りまくってます。声は……声は出せないようです。
 ピュ~イピュウ~~イピュウ~ウ~(何、抜け駆けしようとしてるの? ん~?)
 低い鳴き声のヒナ! レアです! じゃなくて! 翻訳おかしくない? 目もおっかない感じになってます。鳥が怒ってる時って怖いよね! ヒナも怒ると怖いよね! 
 チュウタローがピクリとも動かなくなりました。プラーンってなりました……肉食の鳥が獲物を捕まえた! そんな感じです! カッコイイ! ヒナ、カッコイイ! 

「ヒナ! ありがとう。くわえておいて貰える?」

 ピュイッ! ピュピュ~! (はいっ! 勿論です!)
 返事と共に鷲掴みから解放したけど、チュウタローは動きません。
 ……ヒナ……チュウタローの頭を丸ごとくわえるのは違うと思う。面白いけど。正に捕食され掛かってる姿です。どうしよう……ヒナコンビがコントしてるような気がしてきた……トットットッと近付いて来たヒナコンビから「いくチュウ……ちちにいくチュウ……」とか聞こえた。バカ言ってる。キュッとヒナのくちばしが閉じかけるとビクーン! とチュウタローの体が硬直し「いたいチュッ! やさしくするチュッ!」と聞こえます。ヒナ、緩めるかな? と思ったらブンブンとチュウタローを振りました。チュウタローの小っさい叫びが出ました。「わかったチュッ! ちちにいかないチュッ!」するとやさしく地面に降ろされました。くちばしが離れるとチュウタローはヒナに「そんなわけないチュッ!」と言い放ち、その瞬間ヒナに再度鷲掴みされました。
 タマとトラジを両腕で抱き締めながら、目の前で繰り広げられるコントを見る。

「バカにゃ……」
「どうしようもないにゃ……」
「ヒナ、力加減凄いわね。本気だったら、チュウタローはとっくに島送りだもの」

 タマとトラジがびっくりした顔で私を見ます。

「危なくなると島送りになるのよ。多分タマとトラジも危なくなったら八丈島に飛ぶわよ。ヒナと出会った時だって凄かったでしょう?」

 ウンウンと頷く二匹は声を揃えて言いました。

「「さすがヒナにゃ!」」

 ピュ~イッ! (ありがとう!)
 そうそうヒナは丸鳥と言うダチョウみたいな魔鳥なんだけど、レア種とされてる戦闘力の高い丸鳥。チュウタローは大きいハムスターっぽいけど実は雷属性の精霊です。
 一連の会話を聞いていたのか力尽きたのか、動かなくなったチュウタローは無事ヒナの鷲掴みから解放されました。が! そのまま地べたにうずくまり「ちち……ちちにさわりたいチュウ……」と泣いていました。そんなチュウタローを優しく抱き上げ、私を見て頷いた人物が居ました。私も頷き、チュウタローを託しました。

「エリーゼ様、どうか私にお任せを」

 そう告げたエリックを笑顔で見送る。達者でな! チュウタロー! 君の健闘を祈る! 
 エリックは私の専属騎士隊長なのだけど、とんでもM男集団(別名ふんどし隊)の隊長でもある。変態は変態を呼ぶのか……? 

「主……いいのかにゃ?」
「だいじょうぶにゃ?」

 タマとトラジの心配はもっともです。ですがっ! エリックとふんどし隊は同じ八丈島の仲間です。

「大丈夫よ、彼と彼の仲間は島仲間なのよ。仲良くするのは良い事よ」

 ピュイッ! ピュピュ~イピュイ~(ホントッ? ヒトも島の仲間なのか~)
 ヒナが感心したように言うと、タマとトラジもクリクリと丸い目をキラキラさせながらエリックの後ろ姿を見つめる。

「でも、仲良くし過ぎるのは禁物よ。変態だから」

 聞き覚えの無い言葉『変態』にグリングリンと私とエリックを交互に見る二匹。

「へんたいってなんにゃ?」
「どういうイミにゃ?」

 やっぱ、聞きますよね~(笑)。うーん、どう説明するべきか……フワッとした説明で良いかな? 

「そうね、変わり者と言うべきかしら? きっとチュウタローとは違う意味での変わり者ね」

 ニッコリ笑って適当な事を言ってみる。タマもトラジも顔を見合わせ、思い当たる節があるのかウンウンと頷いてニパッと笑った……二匹して。

「わかったにゃ!」
「きをつけるにゃ!」

 ピュウ~ピュピュイッピュ~(いまのヒト、ご主人に叩かれたいって叫ぶヒトだよね)

「そうにゃっ!」
「あたりにゃっ!」

 ……犬め、何処で何を言ってやがる……うちの可愛いニャンコと鳥が汚染されてるじゃないの……クソ……むちはご褒美でしかないのがツライ! 放置は放置でご褒美だし! アレか、ガチのグーパンチが良いのか? いや、それさえもご褒美になる気がする。私の心が折れそう! 私の代わりにルークにむちを振って貰おう……そうしよう……
 クイクイと背中が引っ張られた。うん? 振り向いたらノエルとルチルが居ました。ルークが居ないから、私の所に来たのかな? 

「ノエル、一緒にルークを待ちましょう」

 コクリと頷くノエルはちょっと寂しそうだ。

「ゴメンね。私とルークが二人きりになりたかったから、ほったらかしになっちゃったね」
「ちがうにゃ! そんなことないにゃ! ん……でも……」
「いいにゃ! ボク、わかってるにゃ!」
「え……何が?」
「主はタマにゃたちの主とツガイになるにゃ! だからいいにゃ!」

 つがい……そうですか、そうですね。その表現ですよね。間違って無いです。多分。
 タマトラにヒナ、ノエルとルチルコンビとルークを待つ。結構時間掛かってるなぁ……マップで確認して……ぬ? お父様、なんでルークと二人きりなの? てか、いつの間に……

「エリーゼ。ちょっと良いかしら?」

 あら? お母様ったら、どうしたのかしら? 立ち上がり、お母様の前に移動する。

「なんですか、お母様」

 お母様がちょっと真剣な眼差しです。ドキドキしますね! 

「心して聞いて頂戴。領都に着きしだい婚約発表、五月に婚姻式をり行います。変更は無しです」

 領都に着きしだい……あと数日で婚約発表……半年もしたら婚姻……私、ルークのお嫁さんになるの? 

「婚姻式のドレスは以前用意した物を着て貰います。急ですが、一刻も早く婚姻する事が良いと私と旦那様の話し合いで決まりました。婚約の発表は寄子よりこ貴族が領地に帰る前に行った方がいいですしね。エリーゼ……おめでとう」

 急な話だけど、嬉しくて嬉しくて涙が溢れて来る。
 お母様がそのまま抱き締めてくれる。お母様のけしからんボディに抱き締められ、ちょっと昇天しかける……お母様、凄いなぁ……離れて行くお母様の体に残念な気持ちが湧くが我慢我慢。

「ルーク殿下には旦那様がお話しします。急ですが、取り急ぎ行わないと先延ばしになる可能性が出て来ました」

 先延ばしに? どうして? 

「王都の状況がかなり良くないそうです。お招きする貴族も近くの方や、特に強い結びつきのある方のみ。後は書簡で知らせるに留めます」

 王都の状況……そんなに良くないの? 王宮は……

「エリーゼ。そんな不安そうな顔をしないで頂戴。王都に関しては私達には関係無い事が発端となって、行くところまで行ったとしか言いようが無いのです。もっと早く手を打っていればなんとかなったでしょうが。でもエリーゼが気に病む必要はありません。だから、そんな難しい顔をしないで」

 お母様が困ったように微笑む。私、そんな不安気な顔をしてたのかしら? 

「ごめんなさい、お母様。私、そんなに不安気な顔をしてましたか? 実はアンネローゼ様とミネルバ様が、心配になりましたの」

 お母様は納得とばかりに頷く。

「王宮はなんとかなるでしょう。でも苦労する事は変わりません。キンダー侯爵家もロズウェル伯爵家も堅実なお家です。本当に危なくなれば武力で娘を取り返しに行くでしょう」

 キンダー侯爵様もロズウェル伯爵様も、武力一辺倒でいらしたなぁ……私兵もそれなりに居たけれど、いざとなったら我が家にも兵士を貸してくれとか言ってきそうだ。
 政治的な配慮から、早々に婚約発表して婚姻するんだ……ここで決めないと年単位でずれ込むヤバさだ……きっと……ヘタしたら婚姻自体が無くなる気がする。素直に頷いて、早々に決めよう! 

「早く婚姻出来るのは嬉しい事です! ありがとうございます、お母様!」

 よし! これで、とりあえず問題は無い……かも! 
 それにしてもアンネローゼ様もミネルバ様も小さい頃からのお付き合いだし、お力添えできる時はやりたいわ。
 そうこうしてるうちにルークとお父様がやって来ました。お父様もルークも、ちょっぴり難しいお顔です。

「エリーゼ、話は聞いたかい?」

 うん? そんな緊張するようなお話では無かった筈だけど。コテンと首を傾げてルークを見つめる。

「領都に帰り次第婚約発表して、五月に婚姻式だと聞きましたけど」
「かなり早いが大丈夫なのか?」

 なんの確認かしら? 婚姻式の準備としては、王家に嫁ぐためのものがそのまんま浮いてるから流用すれば何も問題は無いのだけど。

「ルーク……私、第三王子妃として嫁ぐ準備をしていましたのよ。それも婚姻式は一ヶ月前の予定でした。いったい、何が早いのかしら」

 はっ! とした顔で視線を彷徨さまよわせてます。これは……

「忘れていたの?」
「はい」

 ションボリしてます。ワンコのペッタンコになった耳とダラーンと垂れた尻尾が見えるようです。

「とても豪華な品々ですのよ。お父様もお兄様方も私の為に精一杯揃えて下さった品々です。相手がルークになっただけです。とても幸運です。間違えないでね、王家の為に揃えたんじゃない。家族が私の為に揃えて下さったのよ。お母様も細々とした物をタップリと選んで下さったの。とても素敵なのよ。沢山の嫁入り道具を持って、大好きなルークと婚姻出来る私は幸せ者だわ。だから、大丈夫!」

 そう……何もかも、私の為に作られた品々。どれもこれも、皆美しく最高級のものばかり。惜しむらくはタオルが発明されてない事か……とりあえず生産関係はお家に戻ってから! それよりもお腹空いたわ! 

「難しい話は後! それよりも食事にしましょう! ノエルとルチルは良い子で待ってたわよ。私の所だってタマとトラジとヒナは良い子で待ってたんだから!」

 ふん! と胸を張って言い切る。チュウタローは除外です。

「チュウタローはどうした」

 あら? ちょっと目が剣呑けんのんだわよ。

「エリックに連れて行かれたわ。良かったらルークがご褒美をあげてね」

 キュルンッ! と可愛く笑ってみるテスト。ルーク、一瞬でキュンッ! て眉が寄りました。ダメか……

「大丈夫、私が見ていてあ・げ・る・か・ら!」
羞恥しゅうちプレイかよ……上級者か……」 

 何か言われましたが、あえてスルーです。
 お父様とお母様は二人仲良く食事を取りに行きました。私達も行かないと食いっぱぐれます。
 ルークに近付きクイクイと袖を引いて「食べよ」と可愛く言うと、ちょっと照れた顔で「仕方ないな……勝てないよ」と呟いて私の手を取る。

「さあ、ご飯を貰いに行こう。お腹空いたよな」

 タマとトラジがノエルと前足つなぎをし、ヒナがルチルを背中に乗せて私達の後に付いてくる。やっと晩ごはんです。
 テーブルは、多くの人で賑わっていた。理由は並べられた料理を見れば一目瞭然でした。
 それは旅の間に見知った食べ物ばかり。一緒に旅をした仲間には久しぶりの旅ご飯で、それ以外の者からすれば未知の食事……しかも初めての味。お代わりの為に慌ててやって来る者も居る。
 お皿を持ってあれこれ見て、取り分けて貰う。パンにサラダに鳥っぽい肉の照り焼きと盛り盛りに盛って貰う。照り焼きサンドにして食べます。マヨネーズが無いので、ちょっと酸味が足りないけど良いのだ。美味おいしければ! 
 ニャンコ達も私のお皿を見て「いっしょがいいにゃ!」と言ってきたので、三皿全く同じように盛って貰いました。ヒナには後でご飯ボウルを出して果物か野菜をドサッと出す予定です。
 ヒナは魔物なので他の子達と同じ物は食べられないのよね。
 タマとトラジにお皿を渡してルークを待ってると、ルークも同じようにしてました。ノエルは持てるけど、ルチルにはお皿は難しいのでルークがルチルのお皿を持ってます。
 テーブルから離れた場所までゆっくり移動です。ただしルチルはヒナの背に乗って移動です。

「この辺りなら落ち着けそうだな」

 遠くでエリック達が円陣を組んでる様ですが、あの中心にチュウタローが居ます。良かったねチュウタロー、男の人の胸だけど沢山触れて。


 手早く照り焼きサンドを作ってハムン! とかじる。うん、甘辛いタレが美味おいしく出来てる。
 周りを見るとワインを手に照り焼きを幸せそうに食べてる男達や、タレでベタベタになった顔を母親であろう女達に拭かれている子供達。誰も彼も幸せそうに笑って食べている。
 王都から一緒に来たこの人達はもう領民に他ならない。一緒に領都に行き、自分達の望む街なりなんなりに行って貰う。そこで新しい生活を切り開いて貰いたい。
 王都とは空気が違ってホッとする。王都を出て他領の集落を通ったときも、王都ほどじゃないけど少し臭ったりしたもの。

「エリーゼ、思い出し笑いなんてしてどうした?」

 ルークが不思議そうに聞いてくる。ノエルとルチルは仲良くルークの足元でサンドを食べている。まるで小さな兄弟のようでホッコリする。

「王都と街並みが似てるのに、あまり臭くないから帰って来たなぁと思って」

 ハッ! としたルークは何か考えるように指を顎に持って行った。

「シュバルツバルト領はこんな感じなのか?」
「そうよ」

 何かしら? 

「そうか……凄いな」

 何がそうかなのか分からないし、凄いなの意味も分からない。
 アムアムハグハグとサンドを頬張り、口の端からタレを溢してるタマとトラジの口の端を手布で拭く。ヒナは白菜とリンゴを食べたいと言ったので、無限収納からボウルに望む分だけ出した。ヒナは夢中で食べてます。わざと白菜の上でリンゴを潰して食べてます。果汁が掛かってヒナ好みの甘い味になるらしいです。そんなこんなでお腹いっぱい食べました。
 街長まちおさがお父様に猛烈アタックしてたのを凄いな! と思って眺めていたらお母様から料理人の修業のお願いだったと聞かされビックリ。
 とんでもなく美味だったから、調理方法を習得させたいと言われ困っていたらしいです。街長まちおさがふるまった料理をうちの料理長が断ったのが原因みたい。何をどう断ったのか分かりませんけど。

「塩しかなかった世界に味噌・醤油とガラスープは衝撃だろう。更に砂糖だもんな……別世界のものを持って来たようなもんだからな」

 ルークに言われて、そうだ飯テロしてたんだっけとここで自覚! えー? ラーメンとから揚げとギョーザ出してない分マシでしょうよと思ったけど言わない。


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