婚約破棄されまして(笑)

竹本 芳生

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5巻

5-2

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 特に揚げ物はヤバい! フライドポテトの衝撃は凄まじかった……

「最近フライドポテト食べてないなぁ……」
「そんな話してない! てか、俺も食べたいわ!」

 怒られちゃった(笑)。でも本音言っちゃってます。食べたいよね、フライドポテト! ほら、お母様がグリンとこっち向いて凝視してますよ。お母様だって食べたいと思うんですよ。だからね……

「領都のお家に帰ったら、フライドポテトを食べましょう。ジャガイモはいっぱい作ってるからね」
(そうだ! ナビさん、菜種油は作れないのかな?)
〈菜種油用の菜の花を生産しますか?〉
(作れるんだ。じゃあ畑二面で常に作って貰って良い? 揚げ物を食べたいのよね。後、菜種油用の菜の花の種を少し……少しじゃないな。一キロほど収納に送ってくれる? 外でも生産して広めたい)
〈承知致しました。では収穫した後一キロ分収納に回します〉
(ありがとう。よろしくね!)
「やった!」
「約束ですよ、エリーゼ。お母様、から揚げも食べたいわ」

 ルークもお母様も凄い食い付きです。これは揚げ物祭り開催だな。お父様もきっと沢山食べたいだろうしね。ふふっ腕を振るうぞ~! 
 それぞれに楽しい夕食をし、私達は各々の部屋に戻った。


 おっはよーございまーす! 朝です! 
 なんと、タマが腕枕から移動してました。胸の谷間でゴメン寝してるかな? と思いきや、アンヨはダランと私の体の脇に落っこちてます。尻尾は私の足の間に落ちてます。デコルテに当たるタマの肉球の柔らかさと温かさにホッコリします。仰向けから動けません! 気持ち良い拷問です! 
 ま、アニスに見られなければ大丈夫……じゃなかった、起きてる! チラッと見たつもりが目が離せません! マジです! マジの凝視です! アニス! 目が怖い! 

「ニャンコなんだから……そんな目で見ない」

 とりあえず、小声で言ってみる。

「分かってます。タマちゃんだから我慢してるのです」

 漏れてる! 本音が漏れてるから! なんの我慢なのよ! もう! 朝っぱらから……でも、この気持ち良い拷問は終了して貰おう。大きさの割りにはびっくりする程軽いけど、身動き取れないのはツラい! 支度して、サロンか何処かで定期便待ちしたいしね! 
 ヨッ! と両前足を掴んで肉球をクリクリと撫でる。

「んにゃあ……」

 可愛い鳴き声で眠たそうに瞬きしてます! 鼻血出そう! 

「タマ、起きて」

 ウニャウニャしながら起きました。が、自分の寝場所に気が付いたらしく耳と尻尾がピンッと立ってます。

「ごめんなさいにゃ! ボク……わざとじゃないにゃ!」

 半・泣・き! あ~クリクリお目々がウルウルしてきた。うん、わざとじゃ無い事位分かってる。

「大丈夫、分かってるから。さ、起きよう」

 そう言ってから、タマの肉球もとい前足から手を離した。そろ~っと私の上から退いたタマは大きく息を吐き、ネコらしい伸びをグイーンッとするとモソモソモソとベッドの端へ移動する。
 毛布の下を移動してるので、かたまりがモソモソと進む様はちょっと微笑ましい。

「なんだか可愛いですね」

 首だけ動かしてアニスを見ると、いつものアニスでした。良かった。

「そうね、私達も起きて支度しましょう。お願いしたい荷物があって、少し早めに出たいのよ」
「はい」

 私達も起きてベッドから抜け出し、裸のまま衝立ついたてに向かう。
 ……なんだ? 凄まじい視線? 

「何者だ!」

 殺気と威圧を飛ばして見た先にいたのはグッタリとかごから半身を出して気絶しているチュウタローでした。馬鹿め! 自業自得と知れ! 
 私の殺気と威圧で気絶するとは残念だな! フハハハハ! 
 私達はチュウタローをそのままにして支度しました。
 部屋を出る時になって、ヒナが強めのくちばし突き(連続攻撃)をして起こしヨロヨロのボロボロでヒナの背に乗っけられてました。
 そうして、全員で客室を後にしてエントランスホールに近いサロンに向かいました。
 サロンにはお父様とお母様と、お母様の侍女達と定期便の隊長がいました。昨日、隙を見て手紙を書いておいて良かった。手紙と共にお菓子の箱を次々と出すと、エミリがお母様の手紙を定期便の隊長に渡す。私の手紙はアニスが隊長に渡してくれた。お菓子は同じなので、手紙を添えて渡すようにとお母様が言い付けると隊長は隊員と去って行った。

「エリーゼ、このバスタの街から次のバウムの街までは小さな集落しか無い」

 コクリと頷く。なんとなくだけど、お父様の言いたい事が分かる。

「だから距離と危険度を考慮して、野営地を増設しながら進みたい。幸いエリーゼの作る四阿あずまやは大きく丈夫なので、この先も街道利用者の助けとなるだろう。また、これまでは簡易型の魔物除けを使っていたがこの先は強い物を使っていく事にした。構わないか?」

 それならバスタからバウム迄二度は野営地で野宿という事か……だが、街道利用者の事を考えれば妥当な線か。
 定期便は兵士と頑丈な荷馬車で構成されているが、かなり速く走る。そして早朝から日暮れまで走るらしい。だが、利用者の体力は女子供を基準にしなければならない。小まめに野営地を設営しておけば行商人も使えるか……

「勿論ですわ、お父様。作っておけば誰かしら使うのでしょう。ならば作っておいて損は無いわ。より丈夫な物、大型の魔物が近寄らない物であれば逃げ込む先になるでしょう」

 お父様は嬉しそうに顔を緩ませると「そうだな」と小さく呟いた。
 バスタからバウム、バウムの先は領都。バウムから領都までの距離はバスタ―バウム間とほぼ同じ距離。最短で四日……いや、五日か……

「エリーゼ、難しい顔しないで」

 お母様は心配そうに私を覗き込みながら呟く。私はフルフルと頭を振ってニコリと笑う。

「フフッお母様、心配なさらないで。野営地を作っておけば多くの者が利用するでしょう。避難するにも良いでしょう。何せ我が領は大型の魔物が出る地域ですもの」

 お母様はクスリと笑うと「そうね」と呟いた。この先は気を引き締めないとな……
 朝食をいただき何事もなく……とは言えないな。料理長が執拗しつような引き抜きにあってたけど、お父様が滅茶苦茶圧を掛けて断ってました。さすがお父様です。
 そんな事がありましたが、なんとか出発です! 
 馬車の中は私、アニス、タマ、トラジ、ヒナ、チュウタローです! 
 出発しましたが、安定のノロノロ速度です。ヘタに速度を出して、襲われたら対応出来ないとの事です。馬達が疲労してたら大変でしょって事らしい。
 のんびり時間掛けて、街を出ます。馬車の中でのんびりしてます……表向きは。ナビさんから八丈島の南の島の解析が済んだとの報告が来たので、説明を受けてます。南の島は八丈島のレベルまで引き上げられていて、農作物や果樹のかなりの種類が生産可能となっていた事などについてです。
 そして、レベルアップに伴う新たな建築物として何を建てるのか聞かれました。
 ドリンクショップを選択。飲み物を作って受け取る、との事ですがアルコール類も含まれてました! まずはビールです! 麦もホップもあります! イエーイ! 
 ……そして確認しました。アルコール類の製造方法を教えてくれるのか? と。答えは『イエス』。ナビさんが直接携わる者に伝授するとの事。
私に説明してからだとスムーズにいかないと言われたので、必要な場面でのみやって貰う事にしました。
 その際、私の精神体はどうなるのか? と聞くと八丈島で待機しますか? と聞かれたので、思わず『八丈島で待機……OKですよ!』と答えました! 
 だって、可愛いチビナビちゃん達とたわむれたいじゃない! 南の島でマリンスポーツとかやってみたい! こっちじゃ無理だもん。ルークが一緒じゃないのが残念だけど。
 とりあえず、南の島で作れる果樹にカカオとバナナがあったので作って貰いました。後、コーヒーね。
 ココナッツとかパーム油とかはヤシの木が自生してたので、私の魔力供給で常時収穫出来るとの事。そして……

〈マスター。新たな建築物の作業の為新しいチビナビを増やしたいと思います。マスターの魔力で増えるので、今回大量増員しますがよろしいですか?〉

 うん? 構わないわよ。なんで聞くのかしら? 

〈一度に使う魔力がかなりの量になるので確認致しました。では今から増員致します。マスターはゆっくりお休み下さい〉

 ゆっくりて……お! 来た! ……あー! 起きてられない。寝落ちする~……

「エリーゼ様。そろそろ野営地に着きますよ」

 ぬ! 昼か……お腹空いてきた。チラッとMPバーを見ると三分の二はある。結構使ったな。
 コキコキと固まった首を動かし、体を起こす。

「あ~良く寝た。久しぶりの野営だね、お昼ご飯は何作ろっかな~アニスは何か食べたい物ある?」

 うーん? と小首を傾げて考えるアニスは可愛い。

「あ! あの魚介のちょっと辛かったの食べたいです!」

 あーあの豪快料理か……でも、あれは夜が良いなぁ。

「アニス。それ、夜でも良いかな? 多分、お父様達ワインと楽しみたいと思うのよ」
「……んー……そうですね、旦那様と奥様は絶対に飲まれますよね。じゃあ、夜にお願いします! あのピリッとしたの美味おいしかったんですよー!」

 ニッコニコです。うん、リクエストって良いね。
 意外だけどアニスはちょっと辛いのが好きなのかしら? 私も少し位なら好きなのよね~。
 問題は昼だけど、お米食べたい……夜が魚介だから肉だな。米……肉……そうだ! アレにしよう! 丼です! お味噌汁に浅漬け! 後は、足りない人用に何か煮物とか作るか。デザート……どうするかな? 収納リストを見てみるか……
 ……うん? これ……なんで品種名なの? いや、嬉しいけど。
 サツマイモの次に安納芋あんのういもってある。これ輪切りにして素焼きで食べたい。うん、食べよう。さすがに石焼き芋は時間がかかるし食べる量も調節できないから。
 馬車はユルユルと動いては止まる。この動きは野営地で指示を受けて動いている時のものだ。
 マップには遠巻きにこちらの様子を窺う魔物のマーカーが幾つもある。魔物の存在に気が付いているのか、領主隊が対応するかのような動きをしている。
 本当に手慣れているんだ……トールお兄様が指示出ししてるのか、隊員達の側にいる。横にフレイがいる。反対側を警戒するように動いているのはキャスバルお兄様とレイ、それに隊員達。

「エリーゼ様?」
「ん、やっぱり魔物多いね。近くに結構居る。トールお兄様が魔物の動きに注意してる。街道だからって安全とは限らないのね」

 緊張した面持ちで私を見詰めるアニスに怯えは無く、襲えるものなら襲って来いと言わんばかりの目だった。

「エリーゼ様、私だって闘えます。馬車の中で怯えるような女ではございません」

 そうだ。その通りだ。でなければ、私の侍女として王宮に連れて行く事は出来ない。いざとなったら、私自身が盾となり剣となる事もあったのだから。その私の侍女がか弱いなんて有るわけが無い。ニヤリと笑う私と微笑みを浮かべるアニス。
 なぜか「コワイチュウ……おそろしいチュウ……」とか言っちゃってるチュウタロー、気を付けろよ……チュウタロー。おかしな事をしたらアニスはきっと暗器でスレスレの所を狙って来るぞ。

「ゾワゾワするにゃ!」
「いるにゃ……なにかかくれているにゃ……」

 ふむ、タマはゾワゾワする……か気配察知かな? トラジは隠れている……という事は、サーチで方向とか感じてるって事かな? 

「なにかくるにゃっ!」
「くるにゃっ!」

 タマとトラジの毛がブワッと立ってモコモコになりました! 怒ってるニャンコの可愛さが出ちゃってます! 尻尾も毛が立ってます! っと、それどころじゃなかった。マップで確認して窓の外を見たらデカい鳥が飛んでます。
恐鳥? 体以外、皮っぽくて可愛くないです。
 うん。ルークが凄い勢いで行きました。
 分かる! 分かりますぞ! 正に! 今! 血湧き肉躍るタイム突入ですね! 
 クルッとアニスを見る。

「アニスも行く?」
「勿論です!」
「いくにゃっ!」
「おともするにゃっ!」

 ピュッ! (行く!)

「いくっチュ!」

 あれ? アニスにビビってたチュウタローも参戦するのか。思わずチュウタローを見た。

「ひどいっチュ! やるときはやるっチュ!」

 ごめーん! ちょっと見直すわぁ! 

「じゃあ、行こうか。隠れていたのも出て来ちゃったみたいだしね」

 皆で馬車から出ます。出て見て分かったのは、思ったよりも離れた場所に降りたった事でした。思いのほか、我が家の馬車の魔物除けは強力なようです。近寄って来ていたのはゴリラみたいなヤツでした。石とか投げて来るのか……てか、隊員達の連携が凄く上手い。あれなら、任せても大丈夫だね。とりあえずはあのデカい鳥の所に行こう! 

「走って行こうか」

 一応言っておく。皆頷いたのを確認して走り出す。チュウタローはヒナにくわえられ、背中に乗っけられてます。向かった場所は街道を挟んだ向こう側でした。
 街道は無傷で討伐したい! いや、修復できるけどね! 
 デカイなー。
 これがこの恐鳥に対する正直な感想です。しかも可愛くないので鳴き声が煩いだけです。
 鳥には可愛い鳴き声のがいるけど、このデカい鳥の皮膚感とか目付きの悪さとかギャアギャアとウルサいとことかイライラする。
 せめて見た目だけでも可愛いければ許せるのに……いや、サイズも可愛くないから許せないわ! 
 しかも何かヤル気満々なのもカンに障るのよ! そっちがヤル気なら私もヤルわよ! 
 図体がデカいだけならどうとでも出来るんだからね! 

「エリーゼ! やっぱり来たか!」

 嬉しそう! 嬉しそうですぞ! ルーク! 
 ニッコニコで剣を抜いちゃって、こっち向くな! と言いたい。
 ルチルもやる気なのか頬袋から小っさい稲光がパッチパッチしてます。ノエルはルークとデカい恐鳥を交互にチラチラ見てます。

「足への近接攻撃と魔法と弓による遠距離攻撃をしてるけど、時間掛かりそう! どうする、罠にめるか?」
「その後はどうする?」
「そうだな……とりあえず飛べない様にして、素材はなるべく取りたいから傷は少なめに仕留めたいな」

 うーん。なるべく無傷でかぁ……魔法でどうにか出来ないかな……でも、こっちに被害が出たら駄目だしね。うーん。まずはあの翼をやっちゃう、その後足止めかしら。

「ちょっと魔法でトライしてみる」
「は?」

 スタスタと遠距離攻撃している隊員達のところに行く。
 まずは遠距離であの大きい翼に穴を空けますか! でも物で穴を空けると近くにいる隊員に被害が出るので……空気でもぶつけようかしら? 言わば魔法の空気砲? って事かしらね。ふわっとしたのなんかじゃ意味無いし、上からだと下に何かありそうだから、下から上に向けて打とうっと。

「受けるが良い! ……せいやぁっ!」

 空気の弾のイメージは運動会の時にやった大玉ころがしの玉です。あのサイズならそこそこ大きい穴が空くでしょ! 
 ギャアアアァァァァァ!!――
 空気がビリビリする程の鳴き声を上げやがりましたよ。
 みっ……耳鳴りしてる……もう許さん! いや、最初から許してないけど! 

「サンキュ! あれで飛ぶ事は出来ないな!」
「あれで飛べたらビックリだわ! でも魔物だから不測の事態があるかも!」
「そうだな! 気をつける!」

 近距離攻撃に移るルークの背中を見送って私は私で攻撃しようと思います! 
 動きを止めるには麻痺させるのが一番だと思うのでここはチュウタローに活躍してもらいましょう。
 軽い感電でも体はダメージ受けて動かなくなるのよね~。前世でちょっとした不注意で感電したけどアレはビックリしたわ。さてと……

「チュウタロー、難しい事はしなくて良いわ。ヒナに全力で蹴られたら、そのままアイツにくっついて雷だっけ? 痺れさせて欲しいのよ。出来る?」

 笑顔でチュウタローに聞くと、何故か胸を張った。

「できるっチュ! まかせるっチュ!」

 ……大きめハムスターのドヤ顔ちょっと可愛い。でも可愛いとか言うとすぐに調子に乗りそうだから言いません。

「えーと、ヒナは出来るわよね?」

 ピュイッ! (もちろん!)
 どっちもやる気があって何よりです。おっと言い忘れてた。

「でね、チュウタローが落ちて来たら、地上に落ちる前にくわえてもって来れるかしら?」

 ピュピュ~イ! (もって来る!)

「やってやるチュー! あたらしいこうげきをおぼえたっチュ! みせるっチュ!」
「楽しみだわ」

 ……蹴られる事には何も言わなかったわね。もはや抵抗は無いのかしら? まぁ、それならそれで良いのだけど逞しいわね。
 ん? ……チュウタロー丸くなったけ……え? ヒナ、助走してる? え? 
 ズバッシュウゥッッ!!
 え? 早っ! チュウタローが星に……じゃなくて、あっという間にデカい恐鳥の翼のつけ根の辺りに埋もれたわ! 

「チューーーー!!」

 バリバリバリピシャーンッッ!!
 チュウタローの鳴き声が聞こえたと思ったら、稲光りと小さな雷が鳴き声の辺りから発生しました。不思議な光景です。
 いや、前世で暮らしていた所は雷の多い地域だったから慣れてるけど、あの高さだとさすがに珍しいです。

「ふぅん……あんな風なのね」

 ヒナが走って、変な動きをしたと思ったらチュウタローをくわえてました。
 プランプランしてる姿がおかしくてちょっとだけ笑ってしまいました。ゴメンね、チュウタロー。

「わらうとかヒドイっチュ!」

 しまった! 笑ったのバレた。

「ごめん、ごめん。チュウタロー凄かったわよ。ホント」
「すごかったにゃ!」
「おどろきにゃ!」
「スゴイっていったからいいっチュ」

 チュウタロー、チョロイのね(笑)。恐鳥を見るとルチルがチョロチョロと走って、どうするのかな? と思ったら小さい稲光りが……うん、ルチルはまだまだなのね。
 でも恐鳥には効いてるのかしら? 近距離攻撃の隊員達が攻撃してます。

「ボクたちもヤルにゃ!」
「そうにゃ! ボクたちのいいトコみせるにゃ!」

 タマとトラジがトタタタタッ! と走って行きました。途中でノエルも合流しました。
 ニャンコ三匹でデカい恐鳥に向かっていく雄姿! 可愛いのに良い! 

「ん?」

 三匹の動きが……と思ったらズボーンッ! と恐鳥が埋まった? てか落し穴かしら? 土属性の精霊だからにしても仕事早くない? 
 とか思ってたらニャンコが次々と体当たりするものだから、ジャマだと思ったらしく首を回してくわえようとしてる。あんな大きくてゴツゴツしてるくちばしくわえられたらブチンッ! てなっちゃうじゃない! いや、ならないけどそんなの許さないわよ! 

「石壁のハミ!」

 石で出来たハミ(競走馬の口にはまってるヤツなんだけどね)が恐鳥のくちばしにガゴッ! とハマった。これでくちばしは閉じられなくなりました。
 重さもあるのか頭が動かなくなりました。とか思ってる間に大勢の隊員がガンガン攻撃して……
 グエーーーーーーッッ!!
 大きく鳴いて、大きな体がゆっくりと倒れていきます。
 無事討伐出来た様です。ハミはもう必要無いので魔法でサッと消します。
 ふふっ……それにしても上に突き抜けた空気砲ヤバかったなぁ(笑)。まぁ、この先そんなに打つ事は無いと思うけどね。ちょっとだけ疲れたけど、キニシナイ! 
 とか思ってたら走って戻って来たニャンコ達が私を見て心配そうにしています。

「どうしたにゃ?」
「つかれたにゃ?」

 タマとトラジが優しいです。

「主のキモチをいやすにゃ!」
「そうにゃ!」

 言ったと思ったら脇から土笛を取り出して……土笛の優しい音色に私も隊員達も皆癒されました。心なしか疲れも取れた様です。
 なぜか泥だらけのチュウタローとルチルが上機嫌で走ってきました。
 そう言えば、ニャンコ達が行った後姿が見えなくなってた気がします。

「ほめてほしいチュウ! ルチルといっしょにがんばったチュウ!」
「がんばったチュウ! ボク、がんばったチュウ!」

 ルークはキョトンとしてます。
 ピュ~イピュピュ~イピュッ! (チュウタローとルチルは落とし穴の中でがんばってたのよ!)
 うん。鳴き声と訳の長さが合ってないことはスルーしとくよ。で、落とし穴の中で二匹して頑張ってた。という事か。うんうんと頷く。

「エリーゼ、なんだって?」
「どうやら、落とし穴の中で頑張ってたらしいのよ」

 ルークに説明してあげた。

「おっきなあしにくっついてしびれさせてたチュウ!」

 ルチルが胸を張って、言ってくれました。

「そうなの。偉かったわね。チュウタローも良く頑張ったわね。後でエリックに褒めて貰いましょうね」
「やったチュウ!」


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