婚約破棄されまして(笑)

連載

若奥様は身重です！ 32

「ねえ、このハチミツって……養蜂してるの？」

「はいですー！」

「マスターの好きなニホンミツバチですー！」

「え？どうやって？」

は？いや、いくら何でもムリがあるでしょ？

「儀式で呼んだですー！」

「そーですー！儀式ですー！」

もはや何でもアリか！困った時の儀式か！いや、よくよく考えたら野菜や果樹も現代日本の物と何ら変わらないレベル……そうか……考えたら負けだ！感じろ！そして感謝しておけば何事も無問題だ！
よし！これで悩みは万事解決だ！

「さ、食べましょう」

まずはホカホカデニッシュにたっぷりソフトクリームを乗せて……パクッとな！
ん～♡幸せ～♡このあったかいデニッシュにヒンヤリソフトクリームとかサイコーでしょ！

「美味しいです！」

アニスが笑顔全開です！でもお口の端っこにソフトクリーム垂れてます。そこも可愛い♡とか言ってたらダメですね。

「アニス、そのまま……」

こげ茶色のガーゼが巻かれたおしぼりを手にとって、アニスの口の端を拭く。

「はわぁ！申し訳ありません！こんな……恥ずかしい……」

淑女メンタル！頬染めて恥ずかしがるアニス！ドチャクソ可愛い！

「良いのよ。可愛いアニスが見れたから役得ね」

「エリーゼ様の王子様っぽさが増してます～」

何よ王子様っぽさって、私の知ってる王子様（皇子様含む）は割と残念なんですけど。
ここは確認しないと私のメンタルが削られるわ！

「それって実際の王子様？」

「は？そんな訳無いでしょう！理想の王子様ですよ！」

「そうよね！良かった！安心したわ」

ホッと一安心♡だって……ねぇ。

「……あ……あー……その、実際の王子様とは大分違いますね……ええ……」

しみじみ言ったわよ！私の専属侍女！分かるけど（笑）

「そう言えば帝国の皇子様もちょっと……あの……あれは良かったのでしょうか……」

「あー……そうね、多分……良かったんじゃないかしら？」

思い出される離宮での今でいうトンチキ設定の内装と衣装。前世ならば大がかりで豪華な猫メイドカフェであった。
あの時、エリーゼの後ろで猫メイドを凝視していたアニスは帝国の若き皇子達は正にトンチキ……と後から呟いたが、エリーゼはトンチキなんて言葉があるんだ……とそこに気を取られた。

「何だかガッカリしました」

「そうね。でもああいった感じが好きな殿方もいらっしゃるかもしれないし、気にしたら負けよ」

「負け……ですか？」

「負けです！」

グッと握り拳を作って笑顔でアニスを見る。
困惑した顔でコクリと頷くアニスに笑うしかなかった。