殺人鬼転生

藤岡 フジオ

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殺人事件

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 どうやら俺は中世ヨーロッパみたいな国、ニムゲイン王国にいるらしい。なんつうの? 異世界転生的なものってラノベとかアニメで流行ってたけど、俺見てないんだわ、そういうの。

 人口も一千万人規模の大海に孤立した島国で、他国との交流も殆どない。国つっても、東京の人口くらいしかいねぇじゃねぇか。まぁ俺は東京の人間全て殺すつもりだったから、代わりにここの奴らを殺してやんぜ。

 俺の目の前でまた変態仮面紳士が、シュバシュバと奇妙なポーズを取っている。

「そんな事はさせないよっ! 無駄だからね。吾輩は君の心が読めるのだっ! 【読心】という魔法でね。ゆえに君の考えは筒抜けなのである! だからッ! 吾輩の意に反して誰かを殺した場合ッ! 君は契約違反で消える。この世から存在自体がね」

「うっかり殺すかもしれねぇだろ。殺して良い奴なら、殺していいのか?」

「それも吾輩のさじ加減ッ! だから迂闊に人殺しはしない事だっ!」

「チィー!」

 俺は恨みのこもった視線をビャクヤとかいうクソガキに送って、地面に唾を吐いた。

「それからッ! 我が主リンネ様の気に入らない事をしたら消すッ!」

「俺は鉛筆で書き殴った落書きじゃねぇんだからよ、消す消す言うな」

 学園から少し離れた、小高い丘の木の下で言われる内容じゃねぇな。できれば女の子告白が良かったぜ。まぁ俺に好意を持っていようがなんだろうが、殺すけどな。

「君の心の声、聞こえているのだがっ!」

 一々ポーズとるな、糞ビャクヤ。

「聞こえているのだがねっ!」

 はいはい、すみませんねぇ。

「とにかく、我が主の前では善人でいてくれたまえよ。我輩は君のことでッ! 心を悩ませるリンネ様を見たくはないのでねッ! ンハッ!」

 大げさな動きをしないと死ぬ病気かなんかか?

「聞こえているのだがねっ!」

 永久ループしそうだな・・・。
 
「ところでッ! キリマルは何でッ! そんなに人を殺したいのかねッ!」

「まぁ人への憎しみが積み重なった結果だな。これといって深い動機はねぇ。あっちの世界じゃ、どいつもこいつも俺に対していつも攻撃的だったからな。何もしてねぇのに喧嘩腰で話しかけてくるしよ。で、ある日ブチ切れた。ブチ切れて沢山殺した。それだけだ」

 人を刺した時の快感を思い出して、体が震えてくる。今の今まで普通に生活を送っていた奴の体に、スッと日本刀が突き刺さり、骨に当たってゴリっと音が鳴るあの瞬間・・・。

「あぁ~、感情も希薄な生きてんのか死んでんのかわかんねぇ奴らが、刺された途端に驚いた顔して絶命していくのは最高だったな~。あいつら刺された瞬間に、生きていた事を実感したんじゃねぇかな? 最初はこっそりと殺してたから中々バレなかったんだけどよぉ、歯止めが利かなくなって、勢いで次々殺してたらポリ公の奴らが・・・」

「ぐむむ、もういいッ! その話は主殿にしないでくれたまえよッ! 全くとんでもないクズだね、君は! まぁ悪魔というものはそういうものか」

「お前だって悪魔じゃねぇのかよ?」

「吾輩の情報を君に教えるつもりはないが、吾輩は悪魔ではないッ! れっきとした人間だ」

 どこが人間だ。青い肌に幾何学模様のラインが走る人間なんて見た事ねぇわ。

「だったら、俺と同じじゃねぇか」

「いや、君は悪魔だがねッ!」

「違うって言ってんだろうが、ゴラァ!」

 もしかしたら契約なんてデマかもしれねと思って、ビャクヤに殴り掛かってみた。

 やはり攻撃は手前で弾かれて俺は尻もちをついた。

「全く学習能力がないね、君は。・・・おっと! 主様が読んでいるッ! 先に学園に戻っているから、逃げたりしないでついてきないさい」

「くそが。ああ、解ったよ」

 俺の目をじっと見て何かを確認したように頷くと、ビャクヤのクソガキは、光る魔法陣に沈んでいなくなった。

「あほか! 逃げるに決まってんだろうが! ヒャハハ!」

 俺は喜びながら、学園とは反対の方向へ一目散に走りだした。

 きっと契約はあいつが認識している範囲内での話だ。あいつが見ていないところで誰を殺そうが、自由に決まっている。

 殺しがばれなけりゃあいいだけよ。まぁこれは、俺の勝手な想像だけどよ。ハハハ!



 ビャクヤがリンネの近くで魔法陣から現れる。周りが騒然としている事に気が付き、ビャクヤはリンネの耳に口を近づけ現状を聞いた。

「んんんん、なるじ様、一体何が? モフゥッ!」

「ヒャッ! もう! いきなり耳に息を吹きかけないでよ! バカ!」

 話しかけるまで、使い魔の存在に気が付かないほどの出来事が起きていると、ビャクヤは悟る。

「なにか事件でも起きたのですぅぅか! んんんなるじ様!」

 ショックを受けて青い顔をするリンネが、人垣の隙間に見える何かを指す。

「事件も事件! 大事件だよ! 隣のクラスの男子が殺されたの! ほら!」

 ビャクヤが人垣を分けてその先を見ると、地面に冷たくなって横たわる、短髪で活発そうな男子がいた。

 一応、脈を確かめたついでに、体の暖かさを調べる。

(まさかキリマルが・・・。いや、キリマルはさっき吾輩と話をしていたから、あり得ないッ! 死んですぐですな! まだ暖かいッ!)

「こら! 勝手に触るんじゃない! ビャクヤを下がらせろ、リンネ!」

 体育教師のライアンが怒鳴る。

(色々調べられると、俺が犯人だってバレるだろうが!)

 ライアンの心の声を聞いたビャクヤは、驚きを顔に出さずに、静かにリンネの横に立った。

「主様、もう犯人が解りましたよ」

「え! うそ!」

「しっ! 大きい声はお控えくださいましッ! たまたま【読心】の魔法を常駐させていたのでッ! 体育教師であるライアンの心の声が聞こえてしまったのですがッ! 彼はッ! 自分が犯人だとッ! 確かに心の中で呟いていましたッ!」

「じゃ、じゃあ直ぐにでも、騎士様の詰め所に行かないと!」

「ノンノン! 証拠もないのにどうやって? この国でッ! 読心の魔法を使えるのは吾輩と、王宮メイジ数人くらいですよ! 片田舎の殺人事件にッ! そんなお偉いさんが来るわけないでしょう。だからッ! 証拠を揃えないとッ! このままでは詰め所の騎士様にッ! 相手をしてもらえないのは明白ッ!」

「じゃあ、どうやって証拠を集めるの?」

「とにかく、気づかれないようにライアンの行動を監視してッ! ボロを出すのを待つしかありませんねッ! 気づかれたら警戒されるのでッ! 自然にしていて下さいよ、んんんんなるじ様ッ!」

「あんたが自然にしなさいよ! 一々変なポーズとらないでさぁ」

「吾輩はッ! これが自然なのデスッ!」

「はいはい」
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