280 / 299
キリマルへ届けたい
しおりを挟む
「それでは弱い斥力を働かせます」
数種類あるフォースフィールドのうち、空中浮遊にも適用される斥力が、苔むす傾斜を滑り落ちてくる一団をゆっくりと減速させた。
「見えた!」
ウメボシの後にそう言い、指を鳴らして喜ぶのはピーターだった。
脇差を両手で大事に持って万歳をするような形で滑り落ちてきた獣人のローブが、胸辺りまで捲れ上がっていたからからだ。当然白い下着が丸見えだった。
「見える! 私にも見えるぞ!」
二十世紀、二十一世紀のサブカルチャーを愛する変わり者の科学者であるヒジリが、今覚醒したてのニュータイプのような事を言ったので、ウメボシが目から戒めのビームを射出する。
「マスター。女性の下着を見てそんな事を言うのは下品ですよ。モノマネをしなくとも、マスターは彼らの能力を遥かに凌駕しています。それから女性に対してもう少しデリカシーを持って接してください」
「言ってくれる!」
現人神の黒いパワードスーツに付いている薄い装甲がファンネルのように浮いて、ウメボシから放たれたビームを反射すると、ピーターのチェニックの端を焦がして壁に穴を開けた。
「うわぁ!!」
ピーターが悲鳴を上げて、自分のチェニックの端を掴んでまじまじと見つめていた。猫人のアオの下着を見ることに夢中になっていて、なぜ服の端が焦げているのかが分からないのだ。
「ロボット三原則はどこいった?」
オビオがウメボシを見てから腰を擦りながら起き上がると、真っ先にサーカの手を取って立たせる。
「マスターがウメボシの攻撃を受ける確率は3%ほどしかありませんので、問題ありません」
「3%って結構な確率だろ・・・」
オビオはうっかり自分の正体を明かすような事を言ってしまい、後悔して黙る。
ヒジリがにっこりと笑ってオビオに握手を求めた。
「やぁ。初めまして、オビオ君。私が君の不法入星に気付いていないと思ったのかね?」
握手を求めるヒジリの表情と言葉は合っておらず、皮肉と受け取ったオビオはその手を無視して、視線をヒジリから外す。
「いや、イグナちゃんに言われたよ。ウメボシにすぐに見つかるって・・・」
「残念だが、ウメボシの索敵センサーもそこまで万能ではない。私やウメボシは重要人物だと思った相手に追跡ナノマシンを付着させている。まぁ数は限られているのだがね。君は過去にシルビィ・ウォールという樹族に接触しただろう? 彼女は樹族国では有力な貴族なのだ。当然ながら追跡ナノマシンが付着している。なので彼女に会った時点で、君は私に発見されていたのだよ」
「ふん、流石は科学者といったところか。じゃあなんで、俺をすぐに地球に送り返さなかったんだ?」
「君がただ料理人だったからだ。同じ科学者であれば、即逮捕して宇宙船カプリコン経由で地球に送り返していたのだがね・・・」
「つまり俺は、あんたにとって何の価値もない存在だったって事か?」
「はっきり言うとそうだ」
「は! 人類史上、初の地球外知的生命体とその惑星を発見した偉大なる科学者は! 実に傲慢で嫌な奴だな!」
オビオの言葉にウメボシの瞳が真っ赤になる。怒っているのだ。
「マスターは! これでも、随分と貴方に気を使っていたのですよ。本来なら、どういった理由であれ、不法入星は即強制送還確定。特にこの特別な星での犯罪は、惑星の所有者に存在を抹消されても文句を言えない程の重罪! なのに今までオビオ様を好きなように行動させてくれたマスターに恩を感じないのですか? 恥を知りなさい!」
「おい、別に糞オビオを擁護するわけではないが、今はわけのわからん問答をしている場合ではないだろう? 現人神ヒジリ様の使い魔殿」
ピンク髪の前髪パッツンポニーテールが、冷たい声で会話の間に入ってきた。
「その通りだ」
ヒジリは子供の頭を撫でるように、サーカの頭を撫でる。
「な?!」
サーカは驚いてバックステップすると、オビオの後ろに素早く隠れた。
「バ、バーカ。現人神様のバーカ!」
「無礼!」
ウメボシが目から光線を発射しようとしたが、ヒジリがウメボシを抱き寄せて一つ目を塞ぐ。
「デリカシーとやらは難しいものだな。人との距離感がいまいち分からない。そう考えると皆に溶け込んでいるオビオ君はナチュラルに思考が近い。一応デザインドなのだろう?」
「ああ、親が俺を感性特化型にデザインしたから、感情や考え方がナチュラルに近いのかもしれない・・・」
「感性特化型か・・・。器用貧乏型の私並に苦労したことだろう・・・。さて、見知った顔もいるが、知らない者もいる。手早く自己紹介をしてくれると助かるのだがね? 君たちは禁断の箱庭を・・・、世界の終わりを止めに来たのだろう?」
「勿論です、ヒジリさん。あ、僕は自己紹介する必要はないですよね?」
ヤイバが兜の下からくぐもった声で言う。
「えっと君は・・・。確か・・・。カウパー君だったかな?」
「ナンベルさんのようなボケをかましている暇はないと思うのですが?」
「冗談が詰まらなかったか・・・。残念。そこの黒い君は?」
ああ、と自由騎士が呻く。触れてはいけない相手にヒジリが触れたからだ。
ダークがヤイバを押しのけて前に出ると、目を手で覆いながら指の間からヒジリを見る。
「クッ! おぞましい! これは! 凄まじい神気! 我とは真逆の存在なり! 命拾いをしたな、現人神ヒジリ! 無の侵食に感謝しながら、我の足の垢を舐めるがいい! 有事でなければ、貴様の命はなかったぞ! 我は暗黒騎士! ダーク・マター! 地獄の底から聖なる者に大鎌を振りし闇!」
ビャクヤのように一体何がしたいのか分からない動きを経て、ダークは大鎌を水平に持って決めポーズを取った。
「そうかね。仮面ライダーブラッ○のコスプレかと思ったよ」
「――――?! よくわからんが! なにやらかっこよさげな名! (今度どこかで名乗ってみよう)」
「そこの猫耳の女の子は?」
「ミャララ! メオウメオウ!」
「外国から来たのか。共通語が通じないとなると東の大陸から来たのだな。ウメボシ、共通語の翻訳データを彼女の脳に直接転送しろ」
「え? チップも埋め込まれていない相手にそんな荒っぽい事をするのですか? ・・・畏まりました。なるべくダメージを少なくして転送を試みます」
ウメボシのデータ転送が上手くいったのか、はたまた猫人の脳の許容量が大きかったのか、異国からの来たアオの言葉が共通語に自然と変わっていく。体への負担はなかったようだ。
「あれ? 翻訳の魔法がかき消されてしまいます・・・」
ヒジリの近くにいるアオは翻訳魔法が無効化されて焦っている。そして、ここが魔法無効化空間だったかと首を捻った。
「いや、大丈夫ですよ、アオさん。言葉は通じています。それからヒジリさんから離れて下さい。無駄に魔法点を消失しますよ」
セイバーの忠告を聞いてアオは少し下がった。
「あの、私、メイジのアオといいます。獣人です」
「ほう、姿が人に近い獣人か。珍しいな」
「獣人はエリート種になるほど姿が人間に近くなるそうです、マスター」
「なぜここに来たのかね? ゲームでいうところのラスボス戦に相当する戦いがこれから待っていると思うのだが」
「キリマルの事が聞きたくて! 彼なら世界の終わりを止められると思ったのですが・・・」
「・・・ですが、なんだね?」
事情を知っていそうなダークやヤイバが黙って俯いたところを見ると、キリマルは再召喚不可の状態に陥ったのだなとヒジリは思った。
「奴なら過去の時代で、人身御供となって無の侵食を止めているぜ。扉の向こう側で永遠と人々の恐怖の化身と戦う羽目になっているだろうさ。多分もう戻ってこれない気がする・・・」
オビオが悔しそうにそう言った。その顔にはあの扉には自分が入るべきだったというヒロイズムが見え隠れしている。しかし、皆が立ちすくんでいる間に行動を起こしたのはキリマルだ。
「気がする? まぁ感性特化型は第六感が優れているからな。言葉からは根拠が見出だせないが、君がそう言うならそうなのだろう。で、猫人の君は、キリマルの情報が欲しくて皆に付いてきたといったところか?」
「はい。でも本当は無に飲み込まれそうになり、私は仲間を見捨てて転移魔法で逃げてしまったのです。その時に助けを求めて頭に思い浮かべたのがキリマルでした。そして気がついたら、桃色のお城の前にいたのです。頭が混乱して途方に暮れているところを、オビオさんが話しかけてくれました」
「その脇差は?」
「キリマルのものです。せめてこれをキリマルに届けたい・・・。約束しましたから。いつか届けるって・・・」
「ふむ」
ヒジリは脇差に触れて調べてみたいという欲望を抑え、サーカを見た。
「君はサーカ・カズンだろう? ムダン家の家臣の。そしてシルビィ隊の仮隊員。シルビィは君に対して厳しい態度を取るが、本当は気に入っているはずだ。時々、独り言で君のことを褒めていたからな」
「え!」
サーカの顔がパァァと明るくなる。
「わかりやすい性格だな・・・。今度シルビィに言っておく。君は褒めて伸びるタイプだと」
「いや、それは止めてくれ。サーカは褒めるとすぐに調子に乗るから」
オビオがうんざりした顔で口をへの字にした。
「う、煩い! バカオビオ! ヒジリ様の前で恥をかかすな!」
「おまえ、さっきヒジリさんにバーカとか言ってただろ・・・・」
「えぇぃ! いい加減にしたまえよ!! いつまでもこんなところで長話などできるか! さっさと先に進むぞ!!」
突然ヒジリがキレたので周りの者は驚く。
「えーー! 長話をしてもいいような雰囲気を今まで出してたのに!」
ピーターがすぐにツッコミを入れるが、ヒジリは怒りながらスロープを降りながら怒鳴る。
「黙れ! 行くぞ!」
「情緒不安定かよ・・・」
「すみません、マスターは変わり者ですので・・・。気に触るポイントが皆様と違うのです」
オビオに謝って、ウメボシは体重の軽そうなピーター、サーカ、アオを浮かせてスロープを降りていった。
数種類あるフォースフィールドのうち、空中浮遊にも適用される斥力が、苔むす傾斜を滑り落ちてくる一団をゆっくりと減速させた。
「見えた!」
ウメボシの後にそう言い、指を鳴らして喜ぶのはピーターだった。
脇差を両手で大事に持って万歳をするような形で滑り落ちてきた獣人のローブが、胸辺りまで捲れ上がっていたからからだ。当然白い下着が丸見えだった。
「見える! 私にも見えるぞ!」
二十世紀、二十一世紀のサブカルチャーを愛する変わり者の科学者であるヒジリが、今覚醒したてのニュータイプのような事を言ったので、ウメボシが目から戒めのビームを射出する。
「マスター。女性の下着を見てそんな事を言うのは下品ですよ。モノマネをしなくとも、マスターは彼らの能力を遥かに凌駕しています。それから女性に対してもう少しデリカシーを持って接してください」
「言ってくれる!」
現人神の黒いパワードスーツに付いている薄い装甲がファンネルのように浮いて、ウメボシから放たれたビームを反射すると、ピーターのチェニックの端を焦がして壁に穴を開けた。
「うわぁ!!」
ピーターが悲鳴を上げて、自分のチェニックの端を掴んでまじまじと見つめていた。猫人のアオの下着を見ることに夢中になっていて、なぜ服の端が焦げているのかが分からないのだ。
「ロボット三原則はどこいった?」
オビオがウメボシを見てから腰を擦りながら起き上がると、真っ先にサーカの手を取って立たせる。
「マスターがウメボシの攻撃を受ける確率は3%ほどしかありませんので、問題ありません」
「3%って結構な確率だろ・・・」
オビオはうっかり自分の正体を明かすような事を言ってしまい、後悔して黙る。
ヒジリがにっこりと笑ってオビオに握手を求めた。
「やぁ。初めまして、オビオ君。私が君の不法入星に気付いていないと思ったのかね?」
握手を求めるヒジリの表情と言葉は合っておらず、皮肉と受け取ったオビオはその手を無視して、視線をヒジリから外す。
「いや、イグナちゃんに言われたよ。ウメボシにすぐに見つかるって・・・」
「残念だが、ウメボシの索敵センサーもそこまで万能ではない。私やウメボシは重要人物だと思った相手に追跡ナノマシンを付着させている。まぁ数は限られているのだがね。君は過去にシルビィ・ウォールという樹族に接触しただろう? 彼女は樹族国では有力な貴族なのだ。当然ながら追跡ナノマシンが付着している。なので彼女に会った時点で、君は私に発見されていたのだよ」
「ふん、流石は科学者といったところか。じゃあなんで、俺をすぐに地球に送り返さなかったんだ?」
「君がただ料理人だったからだ。同じ科学者であれば、即逮捕して宇宙船カプリコン経由で地球に送り返していたのだがね・・・」
「つまり俺は、あんたにとって何の価値もない存在だったって事か?」
「はっきり言うとそうだ」
「は! 人類史上、初の地球外知的生命体とその惑星を発見した偉大なる科学者は! 実に傲慢で嫌な奴だな!」
オビオの言葉にウメボシの瞳が真っ赤になる。怒っているのだ。
「マスターは! これでも、随分と貴方に気を使っていたのですよ。本来なら、どういった理由であれ、不法入星は即強制送還確定。特にこの特別な星での犯罪は、惑星の所有者に存在を抹消されても文句を言えない程の重罪! なのに今までオビオ様を好きなように行動させてくれたマスターに恩を感じないのですか? 恥を知りなさい!」
「おい、別に糞オビオを擁護するわけではないが、今はわけのわからん問答をしている場合ではないだろう? 現人神ヒジリ様の使い魔殿」
ピンク髪の前髪パッツンポニーテールが、冷たい声で会話の間に入ってきた。
「その通りだ」
ヒジリは子供の頭を撫でるように、サーカの頭を撫でる。
「な?!」
サーカは驚いてバックステップすると、オビオの後ろに素早く隠れた。
「バ、バーカ。現人神様のバーカ!」
「無礼!」
ウメボシが目から光線を発射しようとしたが、ヒジリがウメボシを抱き寄せて一つ目を塞ぐ。
「デリカシーとやらは難しいものだな。人との距離感がいまいち分からない。そう考えると皆に溶け込んでいるオビオ君はナチュラルに思考が近い。一応デザインドなのだろう?」
「ああ、親が俺を感性特化型にデザインしたから、感情や考え方がナチュラルに近いのかもしれない・・・」
「感性特化型か・・・。器用貧乏型の私並に苦労したことだろう・・・。さて、見知った顔もいるが、知らない者もいる。手早く自己紹介をしてくれると助かるのだがね? 君たちは禁断の箱庭を・・・、世界の終わりを止めに来たのだろう?」
「勿論です、ヒジリさん。あ、僕は自己紹介する必要はないですよね?」
ヤイバが兜の下からくぐもった声で言う。
「えっと君は・・・。確か・・・。カウパー君だったかな?」
「ナンベルさんのようなボケをかましている暇はないと思うのですが?」
「冗談が詰まらなかったか・・・。残念。そこの黒い君は?」
ああ、と自由騎士が呻く。触れてはいけない相手にヒジリが触れたからだ。
ダークがヤイバを押しのけて前に出ると、目を手で覆いながら指の間からヒジリを見る。
「クッ! おぞましい! これは! 凄まじい神気! 我とは真逆の存在なり! 命拾いをしたな、現人神ヒジリ! 無の侵食に感謝しながら、我の足の垢を舐めるがいい! 有事でなければ、貴様の命はなかったぞ! 我は暗黒騎士! ダーク・マター! 地獄の底から聖なる者に大鎌を振りし闇!」
ビャクヤのように一体何がしたいのか分からない動きを経て、ダークは大鎌を水平に持って決めポーズを取った。
「そうかね。仮面ライダーブラッ○のコスプレかと思ったよ」
「――――?! よくわからんが! なにやらかっこよさげな名! (今度どこかで名乗ってみよう)」
「そこの猫耳の女の子は?」
「ミャララ! メオウメオウ!」
「外国から来たのか。共通語が通じないとなると東の大陸から来たのだな。ウメボシ、共通語の翻訳データを彼女の脳に直接転送しろ」
「え? チップも埋め込まれていない相手にそんな荒っぽい事をするのですか? ・・・畏まりました。なるべくダメージを少なくして転送を試みます」
ウメボシのデータ転送が上手くいったのか、はたまた猫人の脳の許容量が大きかったのか、異国からの来たアオの言葉が共通語に自然と変わっていく。体への負担はなかったようだ。
「あれ? 翻訳の魔法がかき消されてしまいます・・・」
ヒジリの近くにいるアオは翻訳魔法が無効化されて焦っている。そして、ここが魔法無効化空間だったかと首を捻った。
「いや、大丈夫ですよ、アオさん。言葉は通じています。それからヒジリさんから離れて下さい。無駄に魔法点を消失しますよ」
セイバーの忠告を聞いてアオは少し下がった。
「あの、私、メイジのアオといいます。獣人です」
「ほう、姿が人に近い獣人か。珍しいな」
「獣人はエリート種になるほど姿が人間に近くなるそうです、マスター」
「なぜここに来たのかね? ゲームでいうところのラスボス戦に相当する戦いがこれから待っていると思うのだが」
「キリマルの事が聞きたくて! 彼なら世界の終わりを止められると思ったのですが・・・」
「・・・ですが、なんだね?」
事情を知っていそうなダークやヤイバが黙って俯いたところを見ると、キリマルは再召喚不可の状態に陥ったのだなとヒジリは思った。
「奴なら過去の時代で、人身御供となって無の侵食を止めているぜ。扉の向こう側で永遠と人々の恐怖の化身と戦う羽目になっているだろうさ。多分もう戻ってこれない気がする・・・」
オビオが悔しそうにそう言った。その顔にはあの扉には自分が入るべきだったというヒロイズムが見え隠れしている。しかし、皆が立ちすくんでいる間に行動を起こしたのはキリマルだ。
「気がする? まぁ感性特化型は第六感が優れているからな。言葉からは根拠が見出だせないが、君がそう言うならそうなのだろう。で、猫人の君は、キリマルの情報が欲しくて皆に付いてきたといったところか?」
「はい。でも本当は無に飲み込まれそうになり、私は仲間を見捨てて転移魔法で逃げてしまったのです。その時に助けを求めて頭に思い浮かべたのがキリマルでした。そして気がついたら、桃色のお城の前にいたのです。頭が混乱して途方に暮れているところを、オビオさんが話しかけてくれました」
「その脇差は?」
「キリマルのものです。せめてこれをキリマルに届けたい・・・。約束しましたから。いつか届けるって・・・」
「ふむ」
ヒジリは脇差に触れて調べてみたいという欲望を抑え、サーカを見た。
「君はサーカ・カズンだろう? ムダン家の家臣の。そしてシルビィ隊の仮隊員。シルビィは君に対して厳しい態度を取るが、本当は気に入っているはずだ。時々、独り言で君のことを褒めていたからな」
「え!」
サーカの顔がパァァと明るくなる。
「わかりやすい性格だな・・・。今度シルビィに言っておく。君は褒めて伸びるタイプだと」
「いや、それは止めてくれ。サーカは褒めるとすぐに調子に乗るから」
オビオがうんざりした顔で口をへの字にした。
「う、煩い! バカオビオ! ヒジリ様の前で恥をかかすな!」
「おまえ、さっきヒジリさんにバーカとか言ってただろ・・・・」
「えぇぃ! いい加減にしたまえよ!! いつまでもこんなところで長話などできるか! さっさと先に進むぞ!!」
突然ヒジリがキレたので周りの者は驚く。
「えーー! 長話をしてもいいような雰囲気を今まで出してたのに!」
ピーターがすぐにツッコミを入れるが、ヒジリは怒りながらスロープを降りながら怒鳴る。
「黙れ! 行くぞ!」
「情緒不安定かよ・・・」
「すみません、マスターは変わり者ですので・・・。気に触るポイントが皆様と違うのです」
オビオに謝って、ウメボシは体重の軽そうなピーター、サーカ、アオを浮かせてスロープを降りていった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
28
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる