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第十三章 黒髪少女の軌跡編
993話 嬉々
しおりを挟む「よぉし、やるぞー!」
次の日になって、私はきっちんに立っていた。
その理由はもちろん、きのう言ったことをゆうげんじっこうするためだ!
つまり、料理を作る!
「え、エラーン? あんまり無理しない方が……」
「してない! りょうりするの!」
後ろではししょーがはらはらしているみたいだけど、私はやる気だよ! このじょうたいの私を、もう誰もとめられないぜ!
さあて、なにを作ろうか。っていうのは、寝る前に考えておいた。
今あるざいりょうで作れるもの……私も、作れそうなもの!
ずばり……
「肉じゃがを作るよ!」
おー、を拳を突きあげる。
「朝から? ……大丈夫かな……」
もー、相変わらずししょーは心配しょうなんだから。
なんだか、やれる気がする!
「えぇと、まずはざいりょうを切って……」
「わぁあ、切るのは私がやるから!」
包丁を持とうとしたところで、ししょーがものすごいけんまくで止めてきた。
りょうりするって言った時よりも、強い言葉だった。
けっきょくざいりょうは、一通りししょーに切ってもらった。
私だって、ちゃんとできると思うんだけどな。
「さあ、気を取り直してやるよー!」
「その気合いは一体どこから来るんだい」
「ししょーがりょうりできないからでしょー」
「いや、苦手なだけでできないわけでは……いや、面目ない」
まったく、言い訳なんてみっともないよ! 黙ってそこで見ていなさい!
それにしても、私……なんで、肉じゃが作りたいって思ったんだっけな。
「ま、いっか」
なんとなく作りたくなっただけだろうし、作り方もなんでか頭の中に浮かんでくるけど……気にしない!
今は、やることをきっちりやっちゃおう!
そんなわけで、私は肉じゃが作りにくり出した。
――――――
……そんなわけで肉じゃが完成……
「……お、お待たせしましたー」
テーブルの前にたいきしていてもらっていたししょーの前に、作った肉じゃがを乗せたお皿を置く。
そこには、見るも美しいお肉と野菜のこんとらすとがちりばめられて……
「……これは?」
……ちりばめられては、なかった。
「ええと……肉じゃが?」
「作った本人がその認識はおかしいだろう!?」
お皿に乗っているのは、お肉にお芋に野菜に……肉じゃがの7ざいりょうばかりだった。
そしてそれらは、見るも無残な黒焦げになっていた。
要するに……しっぱいだ。
「ご、ごめんなさい!」
私は、顔があつくなるのを感じた。目をつぶって、あやまる。なんだよ、ししょーにあんなえらそうなこと言っておいて!
私だって……ざいりょう全部だめにしちゃって。見た目はもちろん、きっと味だって悪い。
というか、ちょっとくさいし……
「いただきます」
「え?」
ししょーにあんなことを言ったのにこんな結果になった情けなさに、しゅんとしていると……ししょーが、おどろくべき言葉を口にした。
目を開けると、すでにししょーはお芋を口に運んでいる所だった。
「し、ししょー! 食べなくていいから!」
私の制止も、間に合わない。
伸ばした手が届く前に、ししょーはお芋を口にはこび終え……ぱくりと、食べた。
それから、口を動かすんだけど……
ゴリッ……ボリッ……
多分……と言うかぜったい、肉じゃがを食べている音じゃない音がししょーの口からなっている。
ししょーはむひょうじょうだけど……
「も、もういいよししょー」
さすがに、これを食べてもらうのは……心が痛む。
けれど、ししょー私の声が聞こえていないかのように反応を見せず、やがてごくんとのみこんだ。
それから、ゆっくり私を見る。
「エラン」
「う……」
「はじめてでうまくいく方が難しいさ。料理の出来栄えより私は、エランが私のために料理を作ってくれたことが嬉しい。
ありがとう」
「!」
……おこられると、思ってた。でも、ししょーはおこるどころか……ありがとうって、お礼を言った?
こんな、へたっぴなのを作っちゃったのに。まだ、ぱくぱく食べている。
ぜったいおいしくなんかないのに。
でも、もぐもぐと食べてくれている。バリボリゴリュっという音を出しながらも、いやな顔一つせず。
……いや、なんか冷や汗出てるな。
それでも、ししょーは私の作った肉じゃがをかんしょくしてくれた。
「ごちそうさま。おいしかったよ、エラン」
「わ……」
ぜったい、おいしいはずない。なのにししょーは、おいしかったと言って……笑って、私を見た。
その笑顔を見ると、なんだか……胸のおくが、ぽわっえあたたかくなる。
うれしい、うれしい。でも……もっと……
「もっと、よろこんでもらいたい」
「え?」
こんなんじゃない。もっと……ほんとうにおいしいと思って、笑ってもらいたい!
私、もっと料理がうまくなりたい!
「ししょー! これからも私、料理の練習する! もっとうまくなる!」
「え? お、おぉ……それは、ありがとう……?」
ふんふんっ、と鼻をならしながら、私は気持ちを新たにする。
これは、ただししょーの健康かんりを思ってだけのことじゃない。
自分の作ったものを、おいしいと笑ってくれるなんて、すごくうれしいことだと知ったから!
「よぉし!」
私は、やるぞ! もっと料理のべんきょうをして、ししょーにおいしいってうならせてやるんだ!
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