史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第一章 魔導学園入学編

43話 いざ決闘へ!

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「た、大変なことになっちゃったね……」

 先生が出ていったあと、真っ先にクレアちゃんが駆け寄ってくる。
 私が、ダルマ男と決闘することになり、大変なことになったと慌てているのだ。

 自分のことじゃないのに、こんなにも心配してくれるなんていい子だなぁ。

「まあ、しょうがないよ。気楽に行こう」

「な、なんでエランちゃんはそんなに落ち着いてるの?」

「だって、いろいろルールはあるけど、要は勝てばいいんでしょ?
 よゆーよゆー」

 まあ決闘とはいっても、正確には授業の延長みたいなものなので、勝ち負けは関係ないんだけど。
 やるからには、勝ちたいじゃない。

 自前の魔力のみってことは、魔術じゃなく魔法のみでの勝負ってことだよな。
 ま、なんとかなるよ。

「言ってくれるじゃねぇか、田舎者」

「お」

 そこへ、やってくるのは私の対戦相手、ダルマ男。
 彼は不機嫌そうな表情を浮かべていた。

「俺が、お前に負けるってのか?」

「まあ、私は負けるつもり無いけど」

「はっ。
 確かにお前の魔力は相当なものなんだろう。
 だが、魔力の大きさが勝敗に繋がると思ってるのか? ……現実はそんなに、単純じゃねぇんだよ」

 あれ、もしかして私、バカにされてる?
 それでいて、言ってることはわりと正論だから腹立つな。

 魔力の大きさは、確かにその者の力の大きさを表すけど……それが、勝敗に繋がるとは限らない。
 それを、ダルマ男はわかっている。

「ここで、どっちが上かわからせてやる」

「別に私は、そこまでのつもりは……」

「せいぜい、負けたときの言い訳でも考えておくんだな」

 ダメだ、こっちの話聞いてない……まあ、負けないつもりなのはどのみち同じだ。
 これは授業の一環だけど、だからって負けるつもりはない。

 しかも、相手はルリーちゃんをいじめていた相手だ。

「それはこっちのセリフかな。
 そっちがそのつもりだっていうなら、私だってわからせてやるから」

「言うじゃねえか」

 私とダルマ男の間に、バチバチと火花が飛び交う。

「ちっ、生意気な女だ。まあせいぜい今のうちにいきがっておくんだな、田舎者」

「む、その田舎者ってのやめてよね」

「はっ、なら胸なし女か」


 ブチッ


「あん? なんだその顔ぉいててててててて!」

「エランちゃん!?」

「誰のなにがなんだって?」

 心の奥底から燃え上がってきた熱いもの。
 次の瞬間、私はダルマ男の顔面を掴んで、持ち上げていた。

 この男、今言ってはならないことを……!

「いでででで離せこのバカ!」

「エランちゃん、落ち着こう! ね!?」

「お前の肉を削いで私の胸の栄養にしてやろうか」

「こっわ!」

 その後、クレアちゃんや他のクラスメイトに止められ、ダルマ男は解放された。
 私は肩で息を、整える。

 こいつ、事もあろうに乙女の胸のことを……!
 絶対に許せん。

「いでで……くそっ、この怪力女が……!」

「ねぇ、決闘でこいつの全身の骨バキバキに折ってもいいと思う?」

「いいかだめかならだめだと思うよ!?」

 その後、悪態をつきながらダルマ男は教室を出ていった。
 クラスメイトたちも、それぞれ移動を開始した。

 ふむ、決闘まで多少は時間はあるけど……別に、準備することはないんだよな。
 決闘までの時間があまりないのも、両者ぶっつけでどれだけやれるかを見るためだろう。

 授業を真面目に聞いていたらしいダルマ男、【成績上位者】である私……
 二人が、この短い準備期間の中でどう魔力を扱い、実戦に活かすのか。
 それを、確認するため、か。

「じゃ、クレアちゃん、私たちも行こっか」

「え、えぇ」

 教室に残っているのは、私とクレアちゃんと……
 のんびりと椅子に座ったままの、筋肉男だ。

「あんたも、さっさと行ったほうがいいよ」

「ワタシとしては、別に決闘など興味がないのだがねェ。
 やりたい者で勝手にやればいイ」

「いや、別に私もやりたいわけじゃ……
 というか、本当ならあんたが私と決闘するはずだったんだよ。
 なのにその決闘も見届けずにここに残るってのは、先生からどう思われても知らないよ」

「ふ厶……なるほど、つまりはキミの勇姿を、ワタシに見届けてほしい、ト。
 そこまで言うなら仕方なイ。レィディの頼みを断るほど、ワタシは無粋じゃあなイ」

「そこまで言ってないし。あとレディの頼み断らないなら、さっきの子に席返してあげなよ」

 ダメだ、やっぱりこの男とは会話にならない。
 とりあえずクラスメイトとして声はかけたし、私はクレアちゃんを連れて教室に出た。

 向かう先は、訓練場。
 訓練場という名前だけあって広く、室内には特殊な結界が張ってある。
 この中であれば、本来受けるダメージは一定以下のものになる。

 文字通り訓練や、決闘、様々なことに使われる。
 もっとも、決闘に関しては外で行うこともあるらしい。
 今回はあくまで、模擬的なやつだからだ。

「まだあいつは来てないか」

 訓練場に着く。
 先に教室を出たのはダルマ男だが、まだ来ていない。
 あんな大口叩いて、まさか逃げたなんてことはないだろうけど。

 すでに、先生始めクラスメイトたちが観客として、席に座っている。

「エランちゃん、気をつけてね。
 エランちゃんも言ってたけど、これは勝ち負けが重要じゃないからね。無理しないでね」

「わかってるよ、心配性だなぁ」

 心配するクレアちゃんに、笑顔で応える。
 別に今の自分が誰よりも強い、なんて自惚れるわけじゃない。
 それでも、こんなにも心が……ワクワクしている、のは……

「楽しみ、なのかな」

 師匠以外の、魔力持ちとの模擬戦。初めての、決闘。
 それを、楽しみに感じている、自分がいる。

「待たせたな」

「!」

 そこに、コツコツと足音が響く。
 あのふてぶてしい声も、一緒に。

 入り口を、見る。
 そこには、こちらに向かって歩いてくる、ダルマ男の姿……

「……剣?」

 その腰に、見慣れないものがあった。
 それは、剣だ。この国に来るまで、実際に見たことはなかった。

 王都を歩いていると、なんか兵士みたいな人が腰に剣をぶら下げていた。
 そういえば、門番のおじさんも、剣差してたっけな。

 この国では、特に珍しいものではないのかもしれない。
 でも、ダルマ男が剣を差している姿なんて、私は見たことがない。

「まさか……魔導剣士?」

「んん?」

 その時、ふとクレアちゃんが、聞き慣れない言葉を口にした。
 魔導剣士……なんだそりゃ。

 ……いや、ちょっと待てよ。なんか、師匠がそんなこと言ってたような……

「さあ、始めようぜ、田舎者」

 頭に引っかかっているものを思い出そうとしている私に、ダルマ男は笑いながら言った。
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