史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

187話 二人の再会

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「ふぅー、食べた食べた。お腹いっぱい」

 なんかいつもと違った気持ちになったりしたけど、注文した料理を食べているうちにすっかり忘れてしまった。
 さすが人に勧めるだけあって、おいしい料理のお店だった。

「満足してもらえたようなら、なによりだ」

「まさか、こんないいお店もあるなんてねー」

 これまでも、いろいろ王都を回ってきたつもりだったけど、まだ知らないところがたくさんあるってことだな。
 ご飯はおいしかったし、大満足! ただ……

「なんか悪いね、全部払ってもらっちゃって」

「礼だと言ったろ、気にするな」

 ダルマスは、自分の分どころか私が頼んだ分も、まとめて全部払ってくれた。
 確かに、お礼にお店に連れて行かれ料理をごちそうされたわけだけど、なんだか悪いなぁという気もしてくる。

 だって、訓練に付き合ったといっても、私はまだ軽いアドバイスしかしてないわけだし。

「このまま帰るってのも、ただ奢らせただけでなんか悪いしな……」

「? どうした」

 ただ、ここで私がご飯のお返しをする、って話になったら、今回のお礼が意味なくなっちゃうしなぁ。
 となると……うーん……

「このあと、なんか予定ある?」

「! いや、特には」

「じゃ、適当にブラブラしようよ」

 このまま帰るのはさすがに良心が痛むし、せっかくおしゃれしてきたんだからもうちょっとブラブラしていくことにしよう。
 私の言葉に、ダルマスは驚いた様子で、でもうなずいた。

 ……あれこれ、私からこのあと誘った形になっちゃったのか?
 ダルマスは、元々食事の後はどうするつもりだったんだろう。

 そんなわけで、適当にブラブラすることにしたわけだけど……会話が、続かない。
 そもそもお互いの趣味とか知らないから、どういう話題を振れば相手が乗ってくれるのか、いまいちわからないしなぁ。

「ダルマスってさ……趣味とか、あるの?」

「まあ……体を動かすこと、か。あまり考え事を溜め込むよりも、体を動かしていたほうがスッキリする」

「ふぅん……」

 ……終わっちゃったよ! 全然会話続かないよ!
 ていうかなんだよ趣味はって! お見合いかよ!

 うーん、私から誘っておいて、これは不甲斐ないなぁ。くそう、なにも考えずにこのあとも誘うんじゃなかったよ!

「あれ、お姉ちゃんだ!」

「……ん?」

 ふと、知った声が聞こえた。とはいえ、いつも聞いている声ではない……最近聞いた声だ。
 ただ、それが私を指しているものかはわからない。なんせ、『お姉ちゃん』と呼んでいるのだから。

 ……ただ、もしそれが私のことを指しているのなら。私をお姉ちゃんと呼ぶ人物に、一人だけ心当たりがある。

「ビジーちゃん?」

「わーっ、お姉ちゃーん!」

 声の主を探すと、私のところに駆けてくる人影が一つ。それは、小さな子供のもの。
 ビジーちゃんが、私に向かってダイブしてきた。

「わっ、とと」

 私は、それを落とさないように受け止めた。
 うん、間違いなくビジーちゃんだ。でもなんでこんなところに……

 ふと隣を見ると、ダルマスが驚いたように固まっていた。

「……知り合い、か?」

「この間、ちょっとね。この子がガラの悪い奴に絡まれてたのを助けたの」

「……そうか」

 この子、ビジーちゃんとは王都で会った。そのときは、変な冒険者に変な因縁をつけられていたため、私が助けに入ったのだ。
 その説明を受けて、ダルマスは複雑そうな表情を浮かべている。どうしたのか。

 ……もしかして、私と初めて会ったときを思い出しているのか。あのとき、ダルマスはルリーちゃんをいじめていた。本人は、それがルリーちゃんという個人でなくダークエルフだから、いじめていたようだけど。
 ちなみに、そのダークエルフが学園に入学しているルリーちゃんだとは知らない。会ってもない。

 そう考えれば、なんか似たような出会いなんだな。加害者と被害者って違いはあるけど。

「……珍しい髪の色をしているんだな」

「うん、そうなんだよ」

 私に抱きついているビジーちゃん、その髪の色は黒だ。私と同じで、この国では珍しい色だ。
 小さな子供という以上に、同じ髪の色だから、気にかけているというのもあるのかもしれない。

 私の胸元に、ぎゅっと頭を押し付けていたビジーちゃんは、顔を離して……私と、その後ろにいるダルマスとを交互に見て……

「お姉ちゃんのカレシさん?」

 なんてことを、言った。彼氏だなんて、そんな言葉をどこで覚えたのだろう。
 というか、言葉の意味をわかっているのだろうか。

「なっ……か、彼氏、などと……」

「いやー、ないない。この男の子はただのクラスメイト」

「くらすめいと?」

「そ」

「……」

 まったく、彼氏だなんてませちゃってからに。このまま間違った認識でいてもらっても困るし、ちゃんと訂正しておく。
 ダルマスも、彼氏なんかじゃない、って言おうとしてくれていたみたいだしね。

 なんか、変な顔になってるけど。

「ビジーちゃん、あのあとどう? なんか不便なことない?」

 ダルマスはなんか固まっちゃってるし、私はビジーちゃんに話を聞く。ビジーちゃんを、冒険者から助けたあと、住むところがないというのでペチュニアを紹介した。
 とりあえずお金はあったようだし、信頼できる宿屋だからそこで一時的に暮らすようにとは勧めたんだけど。

 その後、どうなったのか気になっていた。

「えっとねー、私、住み込みで働くことになったの!」

「……マージで?」

「うん、マージで」

 返ってきたのは、予想もしていない言葉だった。
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