史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

252話 いざ勝負のとき!

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 時刻は、昼休み前。私としてはすぐにでも勝負したかったけど、いろいろと準備するために、時間が必要だったみたいだ。
 会場は、私とダルマスが決闘をしたときにも使った訓練場。

 観戦しているのは、クラスのみんなだ。先生は審判として、中心に立っている。
 これから勝負する、私と……私の目の前に立っている、エルフの男の間に。

「では、これより練習試合を始める」

「私としては決闘でもいいんだけど」

「そういうわけにはいかんと言ったろう」

 もうなにを言ってもだめだ、というように、先生は呆れた表情を浮かべている。
 それに対して、エルフの男は涼し気な顔を浮かべて、私を見ていた。

「なに」

「いやぁ、オレオレとしても楽しみではあったんだよ。噂のとんでも新入生が、どんな力を持っているのか……なんとか手合わせしたいってね。
 まさか、そちらから申し出があるとは、思わなかったけどね」

 私と、この男も戦いたかった……ってことか。私の噂ってのが、なんかめちゃくちゃなことになっているのは、訂正したいところだけど。
 そういうことなら、話が早い!

「私が勝ったら、みんなに謝ってよね」

「おいフィールド、そういう要求は決闘でなければ……」

「いんやいんや、いいよ。オレオレが負けたら、その要求を呑もうじゃん。
 オレオレは負けないからさ」

 ……随分自信満々だなこいつ……

「じゃあ、あなたが勝った時は、私は……」

「いいっていいって、ヒルヤセンセも言ってたでしょ、そういう賭け事は決闘のみなの。
 オレオレは、別に勝ったからってキミにあれしろこれしろなんて言わないよ」

「……後悔しますよ」

「そら楽しみ」

 その自信の表れは、どこから来るのか……やっぱり、自分の腕に自信を持っているのか。
 それならそれで、面白い。相手は教師候補で、エルフで、師匠の弟子かもしれない男だ!

 私としても、ゴルさんとの決闘以降、自分の力がどこまで進化したのか、確かめる機会が欲しかった。

「これは練習試合だが、致命傷になるダメージは結界により吸収される。ここまで来たらもう、思いっきりやれ」

 確認するように、先生が言う。練習試合や決闘には、自分や対戦相手が致命傷を負わないよう、結界が張られている。また、その結界は周囲に結界内の余波をこぼさない。
 結界内でどれだけ暴れても、相手は致命傷は負わないし、周囲に被害も出ないってことだ。

 他にも、ダルマスとの決闘時は武器一つのみ持ち込み可能とかルールが設けられたけど、今回はそんなものはない。なにをするにも自由だ。まあ、あのときは決闘は決闘でも、授業の一環だったんだけどね。
 見たところ、相手は魔導の杖以外は武器を持っていない。私と同じだ。

 私は、対面する男に杖を向ける。

「グレイシア・フィールドの一番弟子、エラン・フィールド」

「おっ、いいねぇそういうの。じゃあオレオレも。
 グレイシア・フィールドの一番弟子、ウーラスト・ジル・フィールド」

 ……この野郎、わざと挑発して見せたのに、全然気にしていない。
 それどころか、私と同じように名乗り返してきた、だと。

 いいよそういうの、嫌いじゃないよ。

「始め!」

 そして……試合開始の合図が、轟いた。
 それと同時に、私は杖を構えて……予め頭の中にイメージしていた、氷の槍を展開。五本のそれが、一斉にエルフに向かって放たれる。

 さあ、まずはお手並み拝見だ……!

「……」

 だけど、エルフはその場に立ったまま、微動だにしない。私の攻撃を、避けるつもりがないのだろうか?
 そのまま、五本もの氷の槍がエルフの体を突き刺す……かと思われた。

 本来ならば。

「え……」

 私は、思わぬ光景に思わず声を漏らした。氷の槍が、エルフの体を突き刺すその直前、消えたのだ。五本すべて。
 消えた……というよりは、砕けた、という表現が正しいかもしれない。氷の槍が砕け、魔力の粒子となって消滅した。

 魔法、魔術……魔導で放ったものは、イメージしたものを魔力として変換し、形にするもの。だから、その魔導のすべては魔力の塊のようなものだ。
 だから、氷の槍が魔力の粒子になった、ということは……ただ消されたってわけじゃなくて。

「私の魔法を、魔力に戻した?」

 試しに、もう一度氷の槍を放つ。今度は三本、だけど先ほどよりも大きなものだ。
 それも、先ほどと同じように、エルフに触れる前に……いや、エルフの立っている場所から一定の距離に入った途端、魔力の粒子へと変わった。

 ……そういえば、以前師匠が言ってたっけ。魔法や魔術は、魔力の塊。魔力が魔法や魔術に変換されるってことは、その逆も然りだ、と。

「おいおいおいおい、どうしたどうした? 熱いのは威勢だけか?」

「……!」

 落ち着け私……挑発に乗って、熱くなるな。
 あのエルフが、私の魔法を魔力に変換しているというのなら、いくら魔法を撃ったところで攻撃は当たらない。魔術も同じだ。

「攻撃魔法も、魔力に戻してしまえば怖くない、ってわけか。なら……!」

 魔法を撃っても、それが通用しないのはわかった。なら、魔力を撃つのではなく、自分の体に纏わせて強化する!
 身体強化の魔法、これならばいけるはずだ!

 全身を魔力で強化して、正面から突っ込む。相手は構えてもいないし、なにかしようものならそれより先に動く!

「へぇへぇ、その年でそれだけの魔力を……身体強化魔法は、シンプルゆえにその人の魔力練度がよく見て取れる。
 なるほどなるほど、よく訓練してるね」

「そりゃどう、も!」

「でもね……」

 構えもしないエルフ、完全に取った!
 飛びかかり、振りかぶった拳を振り抜く……その瞬間。エルフとの距離がある程度の距離になった、その瞬間だ。

 身体に纏っていた魔力が、消えた。

「!」

 マジか……身体強化の魔力も、引き剥がされちゃうのかよ!
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