史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

277話 心配してくれた人

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 さて。帰り道は、なんの問題もなく帰ることができた。途中、また魔物が出てこないかとも心配したけど。
 ガルデさんたちが一度ここから冒険者ギルドへ戻った時も、問題なく通れたみたいだ。

 そして、森を出て王都内へと戻ってこれたわけだけど……

「目立つわね」

「目立つね」

「目立つよなぁ」

 歩いていると、人々の視線を感じる。それはそうだろう。
 なにせガルデさんは、真っ白な獣を背負っているのだから。こんな光景、あまりないはずだ。

 それは、魔物は倒したら消滅してしまう特性にある。魔物討伐には証明となるもの、つまり魔物から出てきた魔石さえあればいい。
 なので、このように魔物を殺しきらずに運んでくる人は少ない。もっとも、これは魔物ではないけど。

 本当なら、この獣もさっさと殺してしまった方がいいんだろうけど、いろいろ調べた方がいいこともあるよね。
 ここまで戻ってくるまで、獣は目覚めることはなかった。よほど、フェルニンさんの雷魔術が効いたのだろうか。

「エランちゃん、大丈夫? 居心地悪くない?」

「ううん、大丈夫」

 これだけ大勢の人に注目されて、それを心配してくれるフェルニンさんだけど……その心配はない。
 注目を集めるって意味では、すでに学園で経験済みだ。それに……

 なんだか、初めてこの国に来た時のことを、思い出すなぁ。

「よし、着いたな……っと」

 そうこうしているうちに冒険者ギルドへと着いた。ガルデさんは両手が塞がっているので、フェルニンさんが扉を開ける。
 ギルドの中へと足を踏み入れると、中にいた人たちの視線がこちらに向いた。な、なんだろう?

 それは、きっき街中で向けられたものと同じようで、ちょっと違う。
 好奇な視線もあるけど、なんかちょっとした心配のようなものが見えるような……

「あ、ガルデさんにフェルニンさん! 大丈夫でしたか!?」

 と、そこへ心配を体現したような声が響いた。それは、ギルド内の奥から聞こえた。
 声の方向を見てみると、ギルドの受付にいる人が声を上げていたのがわかった。

 なんかあの人、見覚えがあるような……あ、そうだ。この国に初めて来たとき、このギルドに来たとき……あの人に対応してもらったんだった!
 あのおっぱいの大きさは間違いない!

「? 二人とも、どうかしたの? あのおっ……受付さん、すごく心配してるけど」

「あぁー……まあ、いろいろとな」

「ふふ」

「?」

 あんなに心配してくれるんだ、なにかあったのかと聞いてみるけど……ガルデさんは、なにやら言いにくそう。それを見て、フェルニンさんは小さく笑っていた。
 どうかしたのだろうか。

 その足で、受付の前へ。うん、やっぱり懐かしいな。
 あのときは、この国に来る途中に襲ってきた盗賊を捕まえて、ここまで引っ張ってきたんだったな。それに対応してくれたのが、この人だ。

「あの、お久しぶり!」

「? ……あぁ、あのときの!」

 とりあえず、二度目の対面となった相手に手を上げて挨拶する。すると、受付のお姉さんはきょとんとした表情を浮かべる。
 その反応を見て、私はしまったと感じた。私にとっては印象深い相手でも、お姉さんにとっては私は、日々ギルドを訪れるうちの一人でしかない。

 まして、私は冒険者でなければ会ったのはこれで二回目……だと思っていたのだけど、お姉さんは表情を明るくさせた。

「覚えてるの?」

「もちろんです。その髪の色は、なかなか忘れられません」

 この人記憶力がとてもいいのだろうか、と思ったけど、その後に続いた言葉で納得する。
 そっか、この国じゃ黒髪は珍しいんだもんね。最近、学園やレジーといった黒髪の人をよく見かけるから感覚がマヒしてたよ。

 だから、私のことも覚えてくれていたのか。もちろん、この人の記憶力もいいんだろうけど。

「よかった、無事だったんですね」

 ほっと、胸を撫で下ろす受付のお姉さん。うーん、やっぱり大きいな。

「無事……というと?」

「えぇ。先ほどガルデさんが、必死の形相でギルド内に飛び込んできたんです。今必死に戦っている子がいるから、誰か手伝ってくれと」

「ちょ、カタリアさん!」

 やわらかな微笑みを浮かべながら、受付のお姉さんは言う。その内容に、焦ったような声を上げるのはガルデさんだ。
 ガルデさんが、必死の形相で……か。なるほど、だから『無事だったんですね』か。私のことを、そんな心配してくれてたんだ。

 ギルド内でそれだけ騒いでいたら、他の冒険者も聞いていただろう。だから、さっきは好奇と心配の視線を感じたのか。
 それがわかっているから、照れくさそうにガルデさんはごまかして、フェルニンさんは笑った。

「へぇー、そうなんだ」

「っ、んん! ほいカタリアさん、これ」

 なんだか嬉しくなってしまう。ガルデさんは気恥ずかしいのか、誤魔化すように咳ばらいをして、背負っていた獣を受付の机に乗せる。
 それを見る、受付のお姉さん……名前は、カタリアさんっていうのか。

「この獣が、さっき話していた……」

「えぇ。モンスターや魔物とは違う、異質な獣です」

 真っ白な獣を観察するカタリアさん。獣の姿をまじまじ観察している。
 いくら拘束しているとはいえ、そんなに近づくと危なくないかな。

「わかりました、こちらでお預かりします」

「それから、こいつが魔物討伐の成果です」

「はい、確かに」

 懐から片手ほどの袋を取り出したガルデさんは、それをカタリアさんに手渡す。
 魔物討伐の成果ってことは、回収した魔石を入れているのか。

 袋の中身を確認して、カタリアさんはうなずいた。

「確認しました、ありがとうございます。
 エランさんも、ありがとうございました」

「あ、いえ、どうも……」

 はぁ……なんかすごく疲れたけど、これで一段落、かな。
 ただの魔物討伐が、すごいことになっちゃったな。
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