史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第七章 大陸横断編

474話 魔物がモンスターに

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「えっと……?」

 先ほどまでそこにいた大きな魔物の姿は、どこにもなく。
 さっきまでそこにいなかった小さなモンスターが、魔女さんの手のひらに乗っていた。

 ええと……これはつまり……

「魔物が、モンスターになった……?」

 私が考えていたことを、驚いた様子でルリーちゃんが言う。
 ルリーちゃんが驚いているように、私も驚いている。

 だって、魔物がモンスターになった……そうとしか考えられない現象だ。
 魔物が光って、さっきまで魔物がいた場所にモンスターがいるだなんて。

 でも、この目で見ても信じられない。魔物がモンスターになるなんて。
 そもそも魔物は、モンスターが魔石を食べて変異したもの。その逆なんて聞いたことがない。

 ……ん? これってもしかして、魔物がモンスターになったんじゃなくて、魔物がモンスターに戻った、と言うべきなのか?

「でもすごい、どうやったの?」

 鳥型のモンスターは、すやすやと眠っている。
 体の色も、禍々しい黒ではなく空と同じ薄い青色だ。

 魔物をモンスターに戻す。これは、ただ魔物を倒すよりもずいぶん効果的な方法だ。
 というか、こんな方法があるなんて思いもしなかった。

「別に、たいしたことじゃない。コツを覚えれば誰でも使える」

「コツ……」

「あぁ。要は……」

「ん……」

 魔女さんが言うには、魔物をモンスターに戻す方法はコツを掴めば誰でも使えるものらしい。
 私も知らない方法。魔法かな、魔術かな、それとも他のなにかかな。

 ワクワクしながら続く言葉を待っていたんだけど、ふと別の声がした。
 誰のものだろうとみんなを見たけど、みんな首を振っている。

 私の、聞き間違い……?

「ん……ふぁ、あ。あー、なんかさっぱりした気分」

「!?」

 また、声が聞こえた。今度は間違いなくはっきりと。
 それは、魔女さんの手のひらの上から聞こえた。……そう、手のひらの上だ。

 そこにいるのは、一人……いや一匹しかいない。

「しゃ、しゃ、しゃ……」

「んぅ……ここは、どこ、私は……」

「喋ったぁあああ!?」

 なんだかベタな発言をしそうになったモンスターだけど、それよりもだ。
 目をパチパチと動かすモンスターは、魔女さんの手の上で立ち上がり……口を動かして、たしかに喋った。

 その驚きの姿に、開いた口がふさがらない。

「え、エランさん……」

 当然ルリーちゃんも、驚いている。
 驚いていないのは、魔物をモンスターに戻した張本人の魔女さんと……

「こんにちは! ぼくパピリだよ!」

 恐れることなくモンスターに近づき、元気よく挨拶をするパピリくらいだった。

「こ、こんにちは」

 その姿に、モンスターが困惑気味だ。
 やっぱり、喋るモンスターが全部パピリみたいなわけではないらしい。

 それにしても、魔物がモンスターに戻るだけでも驚きなのに、それが喋るなんて……
 ……モンスターが、喋る……

「……ねえ、もしかしてさ……この村のモンスターって……」

 そこまで考えて、まさかという気持ちが出てくる。でも、こう考えてしまうのは自然だと思う。
 魔物がモンスターに戻ると、喋る。そしてこの村のモンスターは、みな喋る。

 それって、つまりさ……

「あぁ、元は魔物だ」

 そんな私の疑問を、魔女さんはあっさりと答えてしまった。
 この村のモンスターは、元は全部魔物なのだ、と。

 あまりの内容に、言葉を失ってしまう。
 いや、だって……じゃあパピリも、温泉の受付さんも、野菜売り場の呼び込みも?

 全部、全部魔物だったっていうの?

「マジかぁ……」

 ただ、それだけの言葉しか出てこない。
 なんか、いろいろ起こりすぎてなにから手を付ければいいのかわからない気分だ。

 魔物がモンスターに戻ったり、戻ったモンスターは喋ったり、この村のモンスターは全部元魔物だったり。
 そんな村で、なんで魔女さんは暮らしているのか。

 ……いや、魔物をモンスターに戻して増やしていったってことは、むしろこの村を作ったのが魔女さんなのか?

「魔女さん、これは……」

「聞きたいことはわかる。だがまずは、こいつを治療する。モンスターに戻すためとはいえ、傷つけてしまったからな」

 そう言いながら、魔女さんはモンスターを手のひらに乗せたまま、もう片方の手をかざす。
 すると、手からはあたたかな光があふれる。

 回復魔術だ。
 それはみるみる、傷ついたモンスターの体を癒やしていった。

「よし、これでいいだろう」

「おぉ、動く。動くぞ!」

 治療が終わったモンスターは両足で立ち上がり、手……じゃなくて羽を広げて、元気になった体を確認している。
 そして羽を動かし、その場から少し飛ぶ。

 うん、バッチリ治っている。さっきは打撃をくらって結構ボロボロだったもんなぁ。

「さ、今日からお前もこの村の一員……仲間だ」

「なか……ま……」

「やったー! 新しい村人だ! よろしくね!」

「よ、よろしく」

 唖然とする私たちを尻目に、パピリと鳥モンスターは楽しげに会話をしている。
 なんとなく、パピリが押してる。というか、魔物からモンスターに戻った場合の自我ってどうなっているんだろう。

 なんか……ちょっと、いやすごく不思議な空間だ。
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