史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第八章 王国帰還編

495話 国王亡き後

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「王様が死んだって……それ、本当、なんだよね?」

「あぁ」

 改めて、確認する。この国の王様だった、ザラハドーラ国王が死んだこと。
 死んだ……というよりは、殺されたと言ったほうが、正しいんだろう。

「そう、なんだ。あんな、いい人が」

 会った回数は多くはない。でも、いい人だっていうのはわかっている。

 会って話して、それはわかったし……
 ノマちゃんのときだって、ノマちゃんを悪い扱いにはしなかった。むしろ、悪いところがないか調べたりして。

 一人の人間に、あんなに真摯に向き合ってくれる人は、そうはいない。

「あの兵士は、殺されたって言ってたけど。それって魔獣か魔物に……ってことだよね」

「それは、わからない。直接見たわけじゃないし。けど、あの会場にいた中で少なからず死傷者は出てる。
 あの前王様の息子で魔導学園生徒会長のゴルドーラだって、かなりの重傷だって聞いてる」

「! ゴルさんが?」

 ヨルの言葉に、私は驚きを隠しきれない。
 他にも死傷者がいる……それだけじゃなく、あのゴルさんが重傷だって?

 ゴルさんなら、魔物はもちろん魔獣にだって、遅れを取らないはずなのに……

「なにしろ、会場は大混乱だったからな。暴れまわる魔物魔獣に、逃げ回る観客たち。魔導を使えない、それか戦いとは無縁の人たちが多かったから。
 その人たちを守りながら戦うってことは、予想以上にキツイよ」

 それは、どこか実感のある言葉。
 多分ヨルも、観客たちを守りながら戦ってたんだ。

 守りながらの戦いはキツイ、か。
 そうか……ただ魔物を倒すだけなら、高火力な魔導ぶっ放せばいいけど。守る人がいる場合、そうはいかない。
 しかも、大勢だ。

 ゴルさんの使い魔は誰かを守りながら戦うのに向いてないからサラマンドラは出せないだろうし。
 戦い方も、限られる。

「だからって……」

 それでも、それであのゴルさんが重傷になるなんて……とても、信じられない。
 信じられないけど、ここでヨルが嘘を付く理由もないし……ゴルさんなら、新しい国王のやり方にも異議を唱えそうだ。

「それで、新しい国王って誰なのさ」

「さあ。それこそ、俺が聞きたいよ。
 会場での騒ぎが落ち着いたかと思ったら、時間もそんなに経ってないのに兵士が俺のところにやってきて、新国王の意向があーどこーだっつってさ」

「……抵抗は、しなかったの?」

「周りに人もいたし。あそこで派手にやらかせば、周りの人にも被害が及ぶからな」

 一応ヨルは、周囲への被害を気にしていたらしい。
 ……わざわざ人前で連れて行くとか、たちが悪いなぁ。

 顔も名前も知らない新しい国王の命令で、こんなところに入れられているわけか。
 たまったものじゃないよ。

「というかさ、ザラハドーラ国王が死んで、ゴルさんが重傷なのに、そんなすぐ次の国王って決まるものなの? コーロランやコロニアちゃんだっているのに」

「さあ……なーんか、きな臭いっていうかさ」

「きな臭い?」

 考えてみれば、変なことばかりだ。
 ザラハドーラ国王が死んで、しかもこんな状況なのに次の国王が決まったこと。ゴルさんやコーロラン、コロニアちゃん血縁もいるのに関係なしにだ。

 黒髪黒目の人間は危険だ、って意見はまあ、わからなくもないけど……有無を言わせずに捕まえていること。
 なにより、新国王の意向に兵士が従っていることだ。

 あの兵士、見たことがない。お城にはたくさんの兵士がいるから、全員の顔は当然見ていないけど……

「……」

「どうしました、エランさん」

「いや……確かに、きな臭いかなって思って」

 こうなってしまったのは、ザラハドーラ国王が死んだから……そうなってしまったのは、エレガたちが魔獣を解き放ったから。

 もしも、一連の事件に関係があるとしたら。ザラハドーラ国王は、事故ではなく故意に殺されたんじゃないか? 本当に魔獣に殺されたのか?
 そして、次の国王の座を奪い取った誰かが、この国を良くない方に導こうとしているのだとしたら。

 エレガたちのやったことに便乗した誰かがザラハドーラ国王を殺したのか……
 それとも、初めからエレガたちとはグルだったのか。

「なにじっと見てんだよ。言っとくが、なにも言うつもりはねえぞ」

「……そんな態度取ったって、『絶対服従』の魔法かけられてるの忘れてない?」

「お前こそ忘れてんだろ。お前の手首には、なにが嵌められてる?」

「……」

 エレガの言葉に、私は手首に嵌められた手枷を見た。
 これは、魔力封じの手枷だ。これを嵌められている間は、魔力を使えない。

 つまり、エレガたちにかけた『絶対服従』の魔法も、能力が切れてしまっているということだ。

「はっ、残念だったな」

「……元々期待してないよ」

 それよりも、だ。ヨルがずっとここにいることを考えると、私たちもずっとこのままの可能性が高い。
 さすがに、ずっとこのままというのはな。抵抗せず着いてきたけど、おとなしく捕まったままでいるつもりはない。

 とはいえ、魔力は使えないし……この場合って、使い魔召喚もできないのかな。
 まあ、ここでクロガネを召喚したら地下が壊れるかクロガネに潰されるかの二択なので、出せないけど。

 ただまあ、魔力を封じられただけ、なんだよなぁ。やりようはいくらでもある。
 問題は、ここから逃げてどうするか……だよなぁ。
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