史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
754 / 1,141
第十章 魔導学園学園祭編

742話 会いに行こう

しおりを挟む


「そうか、あの子は元気にやっているか」

 私からナタリアちゃんの話を聞いていたアルミルおじいちゃんは、柔らかく微笑んでいた。
 その表情から、本当に安堵しているのがわかる。

 ここまで話してきて、思ったけど……

「……ナタリアちゃんと、最近話してなかったりする?」

 私の話すナタリアちゃんに、一つ一つ興味深そうに聞いていた。
 それは、ナタリアちゃん本人から話を聞く機会が少ない……とかではなく、本当に話を聞いたことがないように見えた。

 私の言葉に、おじいちゃんは苦笑いを浮かべる。

「あぁ、そうだな。あの子が大きくなるにつれ、あまり話をしなくなってなぁ」

 ナタリアちゃんと話す機会が、どんどん少なくなっていった。おじいちゃんはそう話す。
 それは、多分本人の意図したところじゃない。

「それはまた、どうして?」

 だから私は、質問を重ねた。
 それに対して、おじいちゃんは自分の白髭を撫でつけて……

「ちょうど、あの子を引き取って一年が経った頃だ……私の功績が評価され、王城に在中することになった。それから、時間があるときには帰っていたのだが、それも次第に難しくなってな」

 それは、つまりは仕事が忙しくなって……的なあれだろう。
 魔導のエキスパートって呼ばれるくらいだ、そりゃ忙しさもあるだろう。

 同じ国内に住んでいても、帰ることが難しいくらいに時間が減っていった。
 その結果、ナタリアちゃんと会う時間も……ってことか。

「私が離れたとはいえ、あの子を育てる環境としては申し分ない。
 あの子の成長についても、息子夫婦から聞いてはいたしな」

 ふむ……両親がいない私にとってはよくわかんない感覚だけど、おじいちゃんがいなくなってもナタリアちゃんは一人になるわけじゃない。
 とはいえ、才能を見出して養子にした子と、一年しか一緒に入れなかったのは寂しいな。

「ただ、実際にあの子の友人から話を聞くのとでは、違うな。
 まあ、どのみち学園に入学してからの出来事は、息子夫婦もあまり把握しているわけではないが」

 会えなくても、ナタリアちゃんのことを心配していたのは確かだろうな。
 私の話で、少しでも安心してくれたなら、嬉しいけど。

「……ナタリアちゃんは、本当にいい子だよ。誰に対しても、偏見なんかなくて……思ったことはちゃんと言ってくれるし、だからみんなあの子のことが大好きなんだ」

 エルフの件もそう……学園に入学してからも、そう。誰に対しても、先入観とかなく接してくれる。
 さっぱりした性格だから、付き合っているこっちとしても気持ちが良い。

 同じ歳の子がたくさん付き合えば好きな人嫌いな人は出てくるだろうけど、ナタリアちゃんを嫌いだって人は聞いたことがない。

「キミのような友人がいて、安心したよ」

「安心したいなら、私から話を聞くだけじゃなくてさ。直接会ってみたらいいじゃん」

「ん……それは……」

 せっかく、同じ学園内にいるんだ。しかも、ナタリアちゃんは自分のクラスにいる。
 事情を話せば、ちょっとくらい持ち場を離れても問題ないだろうし。

 だけど、アルミルおじいちゃんは眉にしわを寄せ、唸っていた。どうかしたのだろうか。

「なにか、まずいことでもある?」

「いや、まずいというか……最近は本当に会えてなかったから、いざ会おうとなると恥ずかしいというか……」

「おとめか!」

 ちょっと頬を染め、指先で頬をかいている。
 おじいちゃんの頬染めはいらないんだよ! なんで照れ笑い浮かべてるんだよ!

「会うのが嫌、ではないんでしょ?」

「そ、それはもちろん」

「なら、行こうよ。ナタリアちゃんだって、久しぶりのおじいちゃんに会いたいはずだよ」

 自分を育ててくれたうちの一人だ。会いたいに決まっている。
 私だって、私を育ててくれた師匠が学園祭に来ているってなったら、会いたいし。

 ……結局あの写真、師匠が落としたものだったのかなぁ。

「そう、か……そう、だな。うん、せっかくの機会だしな」

「そうこなくちゃ!」

 おじいちゃんのは覚悟を決めたかのように、立ち上がる。
 私も同じように立ち上がり、近くのごみ箱に食べた後のものを入れる。

 ごみはちゃんとごみ箱に、ね!

「すごいんだよ、ナタリアちゃんのクラスの出し物は! 自分の教室を異空間に繋げて、その中におっきな迷路を作っているんだから!」

「ほぉ、それは面白そうだな。せっかくだし、私も挑戦して行こうか」

 教室に向かう間も、ナタリアちゃんのクラスの出し物について説明をする。
 これは、ナタリアちゃんと会うことが出来ると同時に、今ナタリアちゃんがどれくらい魔導を扱えるようになっているのか知ることもできる。

 校内に入り、歩く……すると、やっぱり周囲から視線を感じる。
 ……と、思っていたんだけど。

「こうして顔を変えれば、騒ぎにならずに済むだろう」

 人目を盗んで、魔法によって顔を変えることにした。
 おかげで、周囲の誰もおじいちゃんだとは気付かない。単純だけど、効果的な手だ。

 さっきは外だったからまだしも、学内であんな有名人が歩いていたらかなりの騒ぎになっちゃうだろうからね。
 そんなこんなで、ナタリアちゃんのいるクラスへとたどり着いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪
ファンタジー
   日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。    そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。  しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。  高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。    確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。  だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。  まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。  ――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。  先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。    そして女性は信じられないことを口にする。  ここはあなたの居た世界ではない、と――  かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。  そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

本当に現実を生きていないのは?

朝樹 四季
恋愛
ある日、ヒロインと悪役令嬢が言い争っている場面を見た。ヒロインによる攻略はもう随分と進んでいるらしい。 だけど、その言い争いを見ている攻略対象者である王子の顔を見て、俺はヒロインの攻略をぶち壊す暗躍をすることを決意した。 だって、ここは現実だ。 ※番外編はリクエスト頂いたものです。もしかしたらまたひょっこり増えるかもしれません。

ヒロイン? 玉の輿? 興味ありませんわ! お嬢様はお仕事がしたい様です。

彩世幻夜
ファンタジー
「働きもせずぐうたら三昧なんてつまんないわ!」 お嬢様はご不満の様です。 海に面した豊かな国。その港から船で一泊二日の距離にある少々大きな離島を領地に持つとある伯爵家。 名前こそ辺境伯だが、両親も現当主の祖父母夫妻も王都から戻って来ない。 使用人と領民しか居ない田舎の島ですくすく育った精霊姫に、『玉の輿』と羨まれる様な縁談が持ち込まれるが……。 王道中の王道の俺様王子様と地元民のイケメンと。そして隠された王子と。 乙女ゲームのヒロインとして生まれながら、その役を拒否するお嬢様が選ぶのは果たして誰だ? ※5/4完結しました。 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...