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第十章 魔導学園学園祭編
786話 不思議なメンバー
しおりを挟む「ネクちゃん、こっちはこないだ仲良くなった……」
「ペルソナです。こっちは……弟のカイです」
「こんにちはー」
「あ、こ、こん、にちは……」
私の後ろに隠れながら、ネクちゃんはとりあえず挨拶を返した。
その様子は、まるで小動物みたいだ。
「で、こっちがクラスメイトの……」
「ね、ねね……ねねね、ねく、っく、ラッテン、でふふ……」
「えっと……ネックラッテンさん、ですか?」
だめだ、ネクちゃん全然だめだ。平常心どころの騒ぎじゃない。
私はネクちゃんの耳元に顔を寄せる。
「どうしたの、なんにも怖いことなんてないよ」
「は、初めて会うに、人間……こ、怖い……」
人間怖いって、あんたは悲しきモンスターかなにかか。
ネクちゃんの人見知りは知っていたけど、この学園祭でもまったくよくなる気配がないなぁ。
むしろさっきのクロガネとサラマンドラの戦いのときよりもビビってるじゃん。
「えっと、この子はネク・ラテンちゃん。私のクラスメイトで、友達」
「! と、ともっ……そ、そんなど、堂々とと、友達だなんて、てて照れる……ぐ、ぐゅふふふ……」
「……初めまして」
うわぁ、なんにも言ってないけどペルソナちゃんからちょっと距離を感じるよ。
対してカルくんは、気にせず……ネクちゃんの足をちょんちょんしていた。
「ひぅ! な、なに!」
「お姉ちゃん、ぼくより大きいのにそんなおどおどしてて変なのー」
「がっは……」
……何気ないカルくんの一言が、ネクちゃんを傷つけた。
カルくんの思わぬ攻撃……もとい口撃に、ネクちゃんはその場で膝をついた。
そこに、カルくんの悪気とかは感じられない。無邪気な一言って怖いもんだ。
「だ、だめでしょうカル! そんな本当のこと言っちゃあ!」
「ぐっは!」
……悪気のない言葉ってのが、一番効くんだよなぁ。
「いいもん……どうせ私は……」
「あぁっ、カルがごめんなさい!」
いじけるネクちゃんに、ペルソナちゃんが謝りに行く。
でも、ネクちゃんをダウンさせたのはカルくんだけじゃないけどね。
「カルくんは、もう全部回った?」
「うん!」
……さっきペルソナちゃんは変な反応だったけど、カルくんにカルくんって呼んでも本人はなにも言わないんだよな。
それが自分の名前じゃなかったら、訂正するだろう。こんな小さな子だとしても。
はて……
「そっか。どこが一番面白かった?」
「うーんとね…………なんか、いっぱい道具使ったとこ」
ふむ、いっぱいの道具ね……魔導具のことかな。
魔導具ってことなら、それはピアさんのところだ。
確かに今出ている魔導具って、子供受けしそうだもんなぁ。
ほら、今だって窓の外を見れば、魔導具の効力で空を飛んでいる子供の姿が……
「わぁ、本当に外を飛んでっ……!」
「おい、今あの子爆発したぞ!」
「ちょっと、大丈夫なの!? あれ大丈夫なの!?」
「ピア! おーいどこだよピア!」
……なんかいろいろ聞こえてきて大丈夫かなぁ。
「黒いお姉ちゃんはなにをしてたの?」
「んー? 私はちょっと派手にやりすぎちゃってねぇ」
「?」
やっぱり黒いお姉ちゃんなんだ、私。
特徴的にも仕方ないけど、もうちょっといい呼び方ないかなぁ。
てか、普通にお姉ちゃんでいいんだけど。
「あの……もしよければ、これから一緒に回りませんか?」
そこへ、ペルソナちゃんからの嬉しい申し出が。
まさか誘ってくれるなんて。本当ならすぐにでもオーケーしたいけど……
「あはは、それは嬉しいんだけど。これから、ネクちゃんの行きたいところに行くつもりで」
その言葉に、ネクちゃんは肩を震わせる。
嫌じゃなければ、ネクちゃんの行きたいところにペルソナちゃんたちも同行する、ってこともできるけど……
「ひっ、い、いや、私は……い、いいっ。さ、三人でい、行ってくれば」
……やっぱりか。初めての人間、しかも学外からの人だ。人見知りマックスだ。
でも、さっきだ。ネクちゃんの行きたいところに行くと私から言っておいて、なのにネクちゃんをほっぽり出して別のことなんて。
なら、残念だけどペルソナちゃんの誘いを断るしか……
「えー、根暗のお姉ちゃんはいっしょじゃないの」
「ねくっ……そ、そう。私は別に、そういうの、良いから……」
「にげんのかー」
「……はぁ?」
それは、カルくんからの容赦のない一言。別に、煽ってやろうとか、そんな意思は見当たらない。
でも、それはとんでもない威力を持っていた。
カルくんの言葉を真正面から受けたネクちゃんは……あ、私にも見えた。目元のとこがぴくぴく動いている。
怒っているのか、それともまた別の感情か。
「び、ビビってねーし!」
ともかく、ネクちゃんは見事にカルくんの言葉に反応してしまったわけだ。
こんな小さな子の言葉にムキにならなくても……とは思うけど。
ただ、ネクちゃんの反応にカルくんはなぜか喜んでいた。
なんにせよ、一緒に行くということになったのが嬉しいのだろうか。
「す、すみません、弟が本当に……」
メラメラと燃えるネクちゃん、キャッキャとはしゃぐカルくん。そして申し訳なさそうにしているペルソナちゃん。
なんとも不思議なメンバーになったものだ。けど、なんでか相性はいいように思えた。
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