史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十章 魔導学園学園祭編

785話 おかしいこと

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 ゴルさんのクラスでハチャメチャしてしまった私は、一通り謝ってから教室から出た。

 とりあえず満喫したというのもあるけど、あれ以上あの場に居づらかったからだ。
 私にだってそれくらいの気まずさくらいあるやい。

「いやあ、全クラス回った回った」

「げ、元気だなあんなことがあったのに」

 ネクちゃんが言ったのは、あんなに怒られたのに元気だなという意味だろうか。
 それとも、使い魔の激しい勝負の後なのに元気だなという意味だろうか。

 まあ、さすがにちょっとけだるさは感じるけどね。

「思いの外クロガネに魔力吸われちゃったからねー、少しだるいかもー」

「少し、なのか……」

『……申し訳ない』

「気にしてないよー、でもクロガネにもああいうとこがあったなんて。なんだか親近感」

『……複雑だ』

 最後の攻撃は、すごかった。クロガネ自身に加えて、私の魔力も持っていかれちゃったんだから。
 もし魔大陸であんな撃たれちゃってたら、手も足も出なかったよ。

 ……いや、あれは私の魔力も使ったイコール自分だけでは出せない技、ってことだからその心配はないか。

「契約を結んだら、私だけじゃなくてクロガネも前以上の力が出せるんだね」

『……そのようだな』

 二人の魔力を共有しているから、使える魔力も一人の頃より断然多くなった。
 そのおかげで、今までは出せなかった攻撃なりなんなりと使うことが出来るようになった、ってことか。

 やっぱ使い魔契約っていいなぁ。

「ネクちゃんも、早く使い魔契約したくなったんじゃない!?」

「な、なんだよいきなり」

 私の言葉に、ネクちゃんは肩を震わせる。

「いや、さっきの見てその気持ち強くなったかなって」

「さっきの見たらまず恐怖しか湧かないわ」

 それはごもっとも。

「……ま、まあでも……わ、私に黒竜やサラマンドラとけ、契約なんてできないし……み、身の程にあった使い魔なら、ほ、欲しいけどさ……」

「ははぁん」

「……なんだその顔は」

「私知ってるよ。そういう風に必要以上に自分を卑下している人が実はすごい使い魔召喚したりするんだからね!」

「……なんの話だ」

 ま、なんであっても使い魔がほしいって気持ちが強くなったのはいい傾向だと思うよ。
 使い魔召喚の授業ってのは、一年生の後半にある授業……逆に言えば、絶対に来てしまう授業。

 絶対来てしまうのなら、やだやだって気持ちで挑むよりも使い魔欲しいって気持ちで挑んだ方がいいに決まってる。
 魔法ってのはその時のテンションでパフォーマンスが変わったりするし、使い魔召喚だってそうかもしれない。

 と、すでに使い魔のいる私はのんびりとみんなにそれっぽいアドバイスを送ったりできるのである。

「さてと。私の行きたいところには付き合ってもらったし、ネクちゃんの行きたいところがあれば付き合うよ」

「えっ、わ、私!?」

 驚いたように肩を震わせるネクちゃん。
 もう結構一緒に居るんだから、そろそろ慣れてくれてもいいのにな。

 まあ、私は焦らせることはしない。ゆっくろ考えればいいさ。

「えっと……じゃあ……」

「あ、黒いお姉ちゃんだ!」

 うーんと考え、ネクちゃんがなにか口にしようとした時……明るく元気な、大きな声が届いた。
 反射的に、そちらに顔を向ける。すると、こちらに走ってくる小さな子供が一人。

 犬耳をピコピコ揺らし、走ってくるその子に私は覚えがある。
 というか、私を『黒いお姉ちゃん』なんて呼ぶのは一人だ。

「カルくん?」

「やっほー」

 元気に手を振るその子は、カルくん。こないだ会った、男の子だ。
 迷子になっていたところを保護したんだけど……カルくんがいるってことは……

「おーい、待ちなさい急に走って!」

「やっぱり」

 続いては知ってきた女の子。彼女は、カルくんのお姉ちゃんだ。
 この国……いやこの世界では目立つ黒色の髪を揺らし、目の前で立ち止まった。

 黒い髪……だけど、瞳は赤いので私とお揃いではない。

「ペルソナちゃんだ」

「はぁ、はぁ……え、に、ニル……?」

 そして、この子は……私のことを、『ニル』という名前で呼んだ。
 もしかしたら、私の過去にかかわりがあったかもしれない子。もしくは、いるかもしれない私の家族に関係しているかもしれない子。

「残念、エランでーす」

「あ…………え、エラン……さん」

 ペルソナちゃんは、ようやく私に気付いたように目を丸くする。
 うーん、やっぱりそんなに似てるのかなぁ私と『ニル』って子。

「来てたんだね、学園祭」

「は、はい。この子が、どうしても来たいって」

「へへへ」

 カルくんにせがまれて、か。お姉ちゃんだから弱いのかもなぁ。
 私は、カルくんの頭を撫でてやる。

「そっかそっかぁ。カルくん、楽しんでるかな?」

「え?」

「……え?」

 カルくんの頭を撫でながら楽しいか聞いていると、返事をしたのは……なぜかペルソナちゃんだった。
 しかも、それは……返事、というよりはなにかに驚いた、といった感じの。

 私は、それが疑問でペルソナちゃんを見た。

「カル……?」

「え、うん……」

 ペルソナちゃんがなにに驚いているのか、わからない。
 カルくんを呼び、困惑した様子で……

「! あ、あぁ、そう。カル、カルでしたねっ」

 ……と。なんとも奇妙なことを言ったのだ。
 それは、いったいどういうことだろう。まるで、この子の名前がカルだと今気づいたかのような……

 でも、それはおかしい。だって、この子をカルって呼んでたのは、他ならないペルソナちゃんなんだから。

「うん、すっごくたのしーよ!」

「! そ、っか。よかった」

 だけど、その疑問は……カルくん自身の言葉で、一旦飲みこむことになった。
 にこにこと笑っているカルの頭を、撫でる。

 もしかしてペルソナちゃん、カルくんの名前を忘れていたの?
 それとも……この子って、本当は『カル』って名前じゃないんじゃないの?

「あははは!」

 ……そう言えばこの子って、自分の口から名前を言ったっけ……?
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