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第十章 魔導学園学園祭編
791話 すっごく楽しんでる
しおりを挟むゴルさんとピアさんに複雑な関係があったことには驚いた。
学年が違う上、普段絡むことのない二人だもんね。
そのピアさんはあっちに行ってしまい、ゴルさんはぽつんと残された。
「ゴルさんはピアさんに会いに来たの?」
「……別にそういうわけではない。学園祭の出し物で、これまでの統計平均で盛況だったのがここなのでな。少し様子を見に来ただけだ」
生徒会は、各出し物のその日の売り上げやらなんやらをまとめている。
その結果、平均的に見て一番盛り上がったのがここ……ピアさんの魔導具店だそうだ。
魔導具を取り扱っているから子供は寄ってくるし、人々にとっても日々間近な魔導具。それらとは少し違ったものを体験できるのは、なかなかない。
「確かに、盛り上がってはいるけどねぇ」
「あの魔導具バカでも、安全面にだけは気を配っているだろう」
ピアさんを信頼しているのかいないのか。辛辣に思える発言だけど、本当に辛辣していなかったらそもそも出店ゴーしないか。
「そういえば、お前が使っていた魔導具はあいつが作ったものだと言っていたな」
「え? ……ああ、うんそうだよ」
急に話しかけられてびっくりしたけど……私が使った魔導具と言えば一つだ。それを指摘するのがゴルさんな時点で、検討するのは一つしかない。
ゴルさんとの決闘のときに使ったものだ。
「よくもまあ、会ったばかりの人間が作った魔導具を使おうと思ったものだ」
あのときは、まだ入学間もない。同学年でもまだ交流はなかなか始まっていないのに、いきなり上級生だ。
しかもピアさんは、同級生から距離を取られているほど魔導具に没頭している。というか度々部屋が爆発しているらしいしそのせいか。
そんな得体のしれない人物が作った魔導具……確かに、よく使う気になったものだ。呆れた様子のゴルさんの気持ちもわからないでもない。
「私は、この人の作った魔導具がきっともっとすごくなる……と思っただけだよ」
「なに?」
これを直感と言っていいのかはわからないけど。ピアさんと出会って部屋を見た時……すごいと思うのとは別に、他の感情もあった。
この人が作る魔導具は、きっと将来的にもっとすごくなる。それこそ、誰もが目を離せなくなるような。
だからだろうか。私はピアさんに頼み、魔導具を借りた。
決闘で使うことで、魔導具の改善点など洗い出し、それをバネにしてピアさんは新たな魔導具の開発に臨んでいく。
生徒会長で第一王子との決闘で魔導具を使う……そんな機会、普通はあるもんじゃない。貴重な場面だからこそ、それがピアさんのためにもなるかもしれないと思った。
「お前がどうしてそこまであいつのことを気にするのか、わからん」
「どうして、か」
なんというか……ピアさんは、応援したくなるって気持ちがあるんだよな。
ピアさんは、最高の魔導具技師になりたいと言っていた。その上で目標としているのが、魔導具技師でもあった師匠だ。
師匠を目標として、その分野のトップを狙う。なんとなく、親近感が湧いた。
理由があるとしたら、それかな。あとは……
「だってピアさん、面白いじゃない」
話していると飽きないというか、やっていることも見ていて飽きない。
「……お前がそれを言うのか?」
なぜかゴルさんは、唖然とした表情をしていたけど。
「まあ、面白いのは否定はしないがな」
「まるで今まで見てきたみたいな言い方だね」
「問題児が問題を起こさないように注意を払っているだけだ。
それを言うと、お前も同様だがな」
「あはは、ひどいな問題児扱いなんてー」
……やばいな、ゴルさんの目がマジだ。本気で私を問題児だと思っている。
もしかして生徒会に入れたのって、私を監視するためでもあったたんだろうか。今更ながらに思う。
とはいえ、生徒会に入ってからの私はおとなしくしているからね! ダルマスとの勝負とか魔獣の件はそれより前だし!
私! 最近おとなしいよ!
「それにしても、一人の女の子を見ているなんて……リリアーナ先輩に誤解されないようにしないとー」
「……それくらいのことで誤解をされるほど、リリアーナとの絆はヤワではない」
「ひゅう」
ま、リリアーナ先輩とは婚約するって話してたもんな。今更変な嫉妬もなにもないだろう。
時期が来たら他の生徒にも発表するとは言ってたけど、いつするんだろうか。
もう学園祭もできるくらいには学園も復興したし、そろそろなのかな?
「……エラン、この学園祭、お前は楽しめているか?」
ふと、ゴルさんがそんなことを聞いてきた。
楽しめているか……なんて。いきなりそんなことを聞かれて驚いたけど。
そんなの、答えは決まっている。
「もっちろん。怒られちゃったりもしたけど、今までにないくらい楽しんでる!」
たくさんの友達と、お祭りを楽しむ。それは私が望んでいたことだ。
師匠と暮らしている時も、友達ってのには憧れてたしね。友達や、そうじゃない人とも知り合って仲良くなる。そこにいるペルソナちゃんだってそうだ。
私の答えに満足いったのか、ゴルさんやにやりと笑った。
「そうか。……今日ももう終わる。明日の最終日、楽しみにしているといい」
さらに、なにやら意味深なことを言ったのだった。
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