806 / 1,141
第十章 魔導学園学園祭編
793話 学園祭最終日!
しおりを挟む……ついに学園祭五日目。最終日がやってきた。
目覚めは気持ちのいい朝で、外は快晴だ。この五日間、天気は晴れだった。おかげで学園祭を存分に楽しむことができる。
雨が降ったら、例えばピアさんの魔導具店にも影響あっただろうし。
「ふわぁ、おはようございますわ」
「おはようノマちゃん! いい朝だね!」
「朝から元気ですわねぇ」
ベッドの上で目をこすりながらも起き上がるノマちゃんは、口元に手をかざしてお上品なあくびをしている。
いつもはドリルな髪も、寝起きはストレートに下ろされている。所々髪が跳ねているのがちょっとかわいい。
わざわざドリルにしなくても、今のままの髪型でも充分かわいいとおもうけどなぁ。寝癖は直すとして。
「じゃ、ちゃちゃっとやっちゃおうか」
「お願いしますわー」
洗面所で顔を洗ってきたノマちゃんは椅子に座り、私はその後ろへ。
そしてノマちゃんのきれいな髪に手を伸ばし、触れる。サラサラだぁ……やっぱりいつ見てもノマちゃんの髪は美しいな。いいにおいもする。
っと、そんなことよりも。私は慣れた手つきで、ノマちゃんの髪の毛をいじいじいじ。
ストレートだった髪は、あっという間……というほどすぐでもないけど、ドリルヘアーへと完成する。
「いつもありがとうございますわ」
「それは言わない約束だよー」
今じゃすっかり、ノマちゃんの髪を私がセットするのが日課になったなぁ。
ノマちゃんと部屋が同じになったばかりの頃は、まさかいつも髪を人にやってもらっているなんて思わず。驚いたものだ。
だけどそっからなんやかんやあって、私はノマちゃんの髪をセットするようになった。
そのために、度々カゲくんに教わったりしてたなぁ。
おかげで難しい髪型をセットできるようになっただけではなく、時間も短縮できた。
「もうすっかり慣れたものですわね。どうですかフィールドさん、わたくしの髪係になるというのは」
「なぁにその係、いやだよ」
「ふふ、冗談ですわ。
……それにしても、フィールドさんの髪はいつ見てもきれいですわね。いいにおいしそうですわ」
「……どうも」
髪型をセットするころには、フィルちゃんも起きてくる。
フィルちゃんはいつも使い魔のもふもふを抱きしめて寝ている。魔物だから大丈夫なのかと思ったけど、今日までなにも問題はない。
もふもふも気持ちよさそうに寝ているのだが、ノマちゃんが触れようとすると寝ているはずのもふもふが尻尾で手を叩くのだ。
ノマちゃんは泣きそうになっていた。
「ふわぁー、おふぁよぉ」
「おはよう」
「おはようございますわ」
三人が起床した後、身支度を整える。顔を洗って、制服に着替えて。
そしていつもなら、このまま学園の食堂にでも行く。でも、学園祭の期間はいつもと行動が違う。
食堂自体は空いているけど、やってはいない。それに、学園祭でいろいろなものを売っているのに、わざわざ食堂のものを食べようとは思わない。
「さ、今日が最後だし、うんと楽しまなきゃね!」
「ですわね。そういえば、最終日になにやら重大発表があるとか聞きましたわ」
「重大発表? 誰の、なんの?」
「それはわかりませんが」
部屋を出て、歩く。その間も、私たちの間に会話は尽きない。
それから、校舎に入り……私たちは、それぞれの教室の前で別れる。
私とフィルちゃんは同じ教室だけど、学園祭の日は朝一番に生徒会に行くことになっているので、三人共一旦お別れだ。
「おはようございまーす」
「お、朝一番元気だね。おはよう」
「おはようさん」
生徒会室に入ると、すでに到着していたタメリア先輩にメメメリ先輩。それにシルフィ先輩にリリアーナ先輩がいた。
みんな早いねー。
「って、ゴルさんは?」
「おはようございます、エランちゃん。ゴルドーラ様は、この後の準備に……あ、なんでもありません」
生徒会室には、一番居そうなゴルさんがいなかった。私の疑問にリリアーナ先輩が答えてくれようとするが、なぜか途中で口を閉じてしまった。
はて、ゴルさんがこの後の準備で居ない……? 今日、生徒会長であるゴルさんになんかあったっけ。
まあ私が知らないだけで、会長というのはいろいろあるのかもしれない。
「やれやれ、朝からうるさいやつだ」
「元気ないよりあったほうがいいでしょー」
相変わらずシルフィ先輩は、シルフィ先輩だなぁ。ツンケンしちゃって。
……そうだ。
「ところで、リーメイとはどんな感じです?」
「っ! な、なぜそこで彼女の名前が出てくるんだ!」
私が言った名前に、シルフィ先輩はわかりやすく反応する。
ふふふ……やっぱり、シルフィ先輩にはリーメイの話をするのが一番効くみたいだね。
普段ツンケンしている人が、こんなにうろたえちゃうんだから。
「それが、今日は一緒に回る約束してるらしーぜ」
「ほうほう」
「た、タメリア先輩!」
タメリア先輩の思わぬタレコミに、シルフィ先輩は大慌てだ。あの人に秘密を話すのだけはやめておこう。
にしても、生徒会の仕事とは関係なく二人で学園祭を回る約束をしてるのかー。
仲良きことはいいことかな。
「全員揃っているな」
「あ、ゴルさん」
そんな中で、生徒会室の扉が開く。ゴルさんと、そして副顧問のウーラスト先生が中に入ってきた。
「今日は最終日だ。各自、最後まで気を緩めるなよ」
「おう!」
ゴルさんの言葉に、私たち葉一斉に声を上げた。
10
あなたにおすすめの小説
異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆
八神 凪
ファンタジー
日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。
そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。
しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。
高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。
確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。
だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。
まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。
――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。
先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。
そして女性は信じられないことを口にする。
ここはあなたの居た世界ではない、と――
かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。
そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
異世界でカイゼン
soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)
この物語は、よくある「異世界転生」ものです。
ただ
・転生時にチート能力はもらえません
・魔物退治用アイテムももらえません
・そもそも魔物退治はしません
・農業もしません
・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます
そこで主人公はなにをするのか。
改善手法を使った問題解決です。
主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。
そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。
「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」
ということになります。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。
さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。
荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。
一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。
これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
リーマンショックで社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる