史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十一章 使い魔召喚編

826話 モンスターとの契約

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 使い魔召喚の授業がついに開始。一番手は、カリーナちゃんだ。

 習った技術を、得た知識を、それらを動員して丁寧な動きで魔法陣を描く。惚れ惚れするほどにきれいな魔法陣。
 カリーナちゃんの小さな口が動き、言葉を漏らしたあと……それに反応するように、魔法陣が青白く光り出す。

 魔導の杖の先端も呼応するように光を増し、その時が来るのをじっと待つ。

「……ぁ」

 召喚中は声を出してはいけないのか、そんな決まりがあるのかはわからないけど、誰もが固唾をのんで見守っていた。
 だけど、ふと誰かの声が漏れた。それは周囲の誰か……もしかしたら、カリーナちゃん本人だったのかもしれない。

 声が漏れた理由は、簡単だ。魔法陣に変化が訪れたから。
 いや、魔法陣に……というのは少し違うかな。魔法陣そのものではなく、魔法陣の下からなにかが現れたのだ。

 それは、ゆっくりと魔法陣の上へと姿を現す。まさしく、召喚という名前にふさわしい。
 そして、全身が現れ……魔法陣の光は消え、光の中から姿を現したのは……

「キィー!」

 バサバサと翼を動かし、飛んでいる……鳥だった。

 白く、ちょっと大きめな体。元気な鳴き声を上げるその姿は、確かにモンスターだった。普通の鳥と違うのは、翼が二つではなく四つあること。
 そう……カリーナちゃんの召喚魔術に応じ、召喚されたモンスターだ。

「おぉ……!」

 私を含めて、声が漏れる。
 使い魔契約をしたことも、見たこともある。けれど、こうして召喚魔術を目にして目の前で成功したのは、初めてだ。

 みんながそれぞれ声を上げる中、固まったままだったカリーナちゃんが肩を震わせた。

「こ、この子が……私の……」

「そうだ、無事成功したようだな。後は、契約を済ませるのみだ」

 自分がモンスターを召喚したことに唖然としていたカリーナちゃんが、先生に肩を叩かれ振り向いた。
 その顔に、先生はうなずくと……召喚で終わりではないことを告げる。

 そう、使い魔召喚は、モンスターを召喚し……そのモンスターと契約し使い魔とすることで、完了する。
 今はまだ、ただモンスターを召喚しただけだ。

 それを思い出し、カリーナちゃんは再び前を向き……大きく息を吸って、吐いた。

「……あなたは、私と契約を結んでくれますか?」

「キィ!」

 元気な鳴き声。まだ契約を交わしていないため、カリーナちゃんにもモンスターがなにを言っているかは聞こえないはずだ。
 だけどカリーナちゃんは、なにかを確信したようにうなずき……自分の人差し指の先を、軽く切った。

「……」

 そして、腕を伸ばし……指先から流れる血を一滴、魔法陣へと垂らした。
 同じくして、モンスターもまた自分の翼を突き、そこから流れる血を魔法陣に流す。

 私たち、術者だけじゃない。モンスターも、契約の仕方はわかっているのだ。
 もふもふだって、そうだった。なにも知らないフィルちゃんの血と自分の血を使い、契約に至った。

 多分、モンスターの中にもやり方とか、そういうのはあるんだろうな。

「では、これより契約を行う」

 一人と一匹、召喚した側とされた側の血が魔法陣に落とされ、混ざり合う。その瞬間、魔法陣は再び光を放つ。
 いや、これはさっきよりも大きな光だ。

「名前を」

 それを見て、先生が言う。契約に必要なもの……それが、名前だ。
 モンスターに名前をつけ、お互いの意思が完了したことで、契約は成功する。

 カリーナちゃんは、少しの間考えるように黙り……しかし、思い浮かんだのかゆっくりと口を開いた。

「……ミュー。あなたの名前は、ミュー」

「キィイィ!」

 それが、合図だったようだ。……光は、さらに輝きを増していく。
 カリーナちゃんとモンスターを包み込むように大きく輝いていく。大きな輝き……でも、それは一瞬のこと。

 眩しさに目をつぶり、でも開いた次の瞬間には……光は収まりを見せていた。

「……よし、完了だ」

 それは、傍目からはちゃんと完了したのかどうかはわからない。だけど、先生は満足そうに言う。

 みんなにはわからない……でも、私にはわかる。モンスターとの契約が済んだら、本人にはすぐにわかるのだ。
 カリーナちゃんも、きっと自覚している。

「……今日から、あなたが私の、使い魔です……」

「キィイ!」

 自分の手を確かめるように握っては開き、そしてモンスターの姿を見て……にこりと微笑んだ。

 使い魔召喚、そして契約。それがここに完了した。
 カリーナちゃんが召喚した白い鳥……ミューと名付けられたモンスター。種類はキュクノスって分類らしい。

 きれいな鳥だ。思わず見惚れちゃうくらいに。

「では、次!」

 だけど、そうやって見惚れている時間はない。
 先生は次の名前を呼び、生徒は入れ替わるように移動する。

 二クラス一緒とはいえ、テキパキ回していかないとね。

「次は、ナラン・ケイヤル」

「!」

 一人の男子生徒が呼ばれ、前に出る。
 そして先ほどと同じように魔法陣が展開され……モンスターの召喚、契約が成される。

 それを繰り返し、みんな次々と順番を回していき……

「次、クレア・アティーア」

「はいっ」

 ついに、クレアちゃんの番がやってきた。
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