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第十一章 使い魔召喚編
845話 次期生徒会長
しおりを挟む「にしても、しゃべるモンスターかぁ……もうかなり噂になってるけど、実際にモンスターがしゃべってるとこなんて想像つかないなー」
一枚の資料を見ながら、タメリア先輩が言う。
情報として聞いてはいても、それと実際に目にするかはまた違う。
いくらしゃべるモンスターが召喚されたなんて聞いても、すんなりと受け入れられはしないだろう。
「まあ、そうですよねぇ。でも、パピリはちゃんとしゃべりますよ」
「パピ……その使い魔の名前か?」
「えぇ」
「……そういえばエランちゃんは以前、しゃべるモンスターが住んでいる村に行ったことがあると言っていましたね」
私が魔大陸から帰ってきた時の話も、軽くではあるけどしてある。
その中に、しゃべるモンスターが住む村があることも。
私は作業をしながら、パピリとはその村で会っていたことを伝える。
「……エランちゃんの知り合いが召喚されたのかぁ。それはまた、すごい確率だね」
「そういう村があるなら、これまでにも誰かしら召喚しても不思議ではないと思うがのう」
まあ、世界は広い。知っている場所から、知り合いが召喚される確率なんて本当に低い。
しかも、召喚したのは友達のナタリアちゃんだし。ますますすごいよね。
「まったく、今年の一年生は豊作揃いだねぇ」
「今後が楽しみじゃのう」
「……よし」
とんとん、と紙を机で叩く音が聞こえ、ゴルさんが一息つく。
どうやら、作業が終わったみたいだ。あれだけあった紙の束が、ちゃんとまとめられている。
「うひゃあ、早い」
「当然だ」
そのゴルさんのスピードに、シルフィ先輩はドヤ顔をしている。
「そういうシルフィも、かなり仕事の覚え早くなったよなー」
「恐縮です」
「そうじゃな。ま、次期生徒会長としてもっと気張ってもらわんとなぁ」
ははは、と豪快に笑うメメメリ先輩。つられてタメリア先輩も笑うが、当のシルフィ先輩は口を開けたままぽかんとしている。
それから、目をぱちぱちさせて、遅れて立ち上がる。
「じ、次期、生徒会長……?」
「うん」
「だ、誰が……?」
「誰って……シルフィじゃろ」
「……」
全員の視線が、シルフィ先輩に集中する。
えっと……なんでシルフィ先輩は、こんなに驚いているんだろう?
そりゃ先輩たちが卒業したら、その次誰が生徒会長になるかなんて、わかりきっていることなのに。
「もしかして……先輩、自分が生徒会長になるなんて思ってなかった?」
「それは……」
「いやあエランちゃんそれはないでしょ。俺らが卒業したら、残るのはシルフィとエランちゃんだけ。上級生のシルフィが生徒会長になるのなんて自然だし」
「……」
そう、考えれば普通のことなんだけど……
シルフィ先輩、多分そんなこと考えてなかったな。
たまにこの人、とんでもなく頭回らないところあるからな。
「えっと……ゴルドーラ様も、そのつもりで……」
「……あぁ」
シルフィ先輩ってば、自分が生徒会長になることなんてまったく考えてなかったのか。
まあ、これまでそういう話をしてきたわけじゃないんだろうし……気持ちはわからなくもないけど。
でも予想くらいつきそうなもんだけどなぁ。
「シルフィ、俺はお前を次期生徒会長に推薦するつもりだが……お前は、どうだ?」
「えっ、あ……い、きなりそんな話に、なるとは……」
引継ぎって意味でも、近いうちにやらなければいけなかったことだろう。
さらっと言うゴルさんの言葉に、さすがのシルフィ先輩も固まってしまっている。いや、相手がゴルさんだからか。
「俺は……」
「もし心構えが出来ていないというのなら、エランに頼むことになるな」
突然私に矛先が向いて、驚いてしまう。
いや、私なんてまだ一年生だし……って、そうか。
ゴルさんも、二年生から連続で生徒会長をやったんだったな。だから、前例はある……
「! ……俺は、ゴルドーラ様の代わりに出来る自信は……」
「俺の……いや、誰かの代わりなど俺は求めていない。お前になら託せると思ったから言っている」
「!」
「お前なりの力で、みなを纏めていけ」
「っ……はい!」
前任の生徒会長がゴルさんだから、余計に自分と比べてしまう。
でも、なにも前任をなぞる必要はないんだ。自分なりの形を目指せばいい。
だからゴルさんは、シルフィ先輩に次を託した。
「ゴルドーラ様! 俺頑張ります!」
「あぁ。もっと早くに伝えるべきだったかもしれなんな、すまん」
「あぁっ、もしかして次の生徒会長、先輩と私どっちにしようか悩んでたとか」
「それはない」
バッサリだ。それはもう、悩む素振りもなくバッサリだった。
あんなりにバッサリなので、少し固まってしまう。
「いや、なんで! ちょっとくらい悩んでくれても良くない!?」
「なんだ。お前生徒会長になりたかったのか?」
「じゃないけど!」
二年生からも生徒会長になれるんだ。だから、私もちょっとは悩んでたのかなって、思っちゃったんだけど!
「エラン……お前は確かにいろいろと規格外だ。だが、生徒会長というのはそれだけでは無理だ」
「……へ?」
「先生に渡してくる」
肩をすくめ、ゴルさんは資料を持って生徒会室を出ていく。
い、今のは一体……どういう意味だ?
「ねえ、今のって……」
「あー、まー、ゴルは優秀だったから」
「成績優秀、品行方正というやつじゃったからのぅ」
「バカには無理と言う話だろ」
目をそらすタメリア先輩とメメメリ先輩。そしてシルフィ先輩は直接的な言葉をぶん投げた。
ば、バカ……
言葉をなくした私の肩にそっと、リリアーナ先輩が手を置いた。
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