史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
974 / 1,141
第十二章 中央図書館編

961話 変な意地

しおりを挟む


 拳の衝撃に吹き飛ばされた私は、そのまま後方にぶっ飛んでしまう。
 そして着地に失敗し、地面に顔面を強打してしまったのだ。

「ぶへぇ!」

 あっ、いったぁ……いってぇ、なんだこれ……!

 鉄製の地面に、ダメージ軽減の結界もない状態で顔面をぶつけたんだ。それも当然か……
 それにしたって、こんなに顔が痛いの久しぶりかもしんない。

「ぐぅ……!」

「お、おい、大丈夫か。血やら涙やらで大変なことになってるぞ」

 起き上がる私に、オートラインさんが心配したように声をかけてくれる。
 自分でぶっ飛ばしといて……って、それだけ今の私の顔がひどいことになってるんだろうけど。

 あんな派手に激突するとは思ってなかったんだろうなぁ。

「うぐぐ……だ、大丈夫だから……うわ、額からめっちゃ血ぃ流れてる」

 地面にはポタポタと血が垂れているし、これ結構イッたなぁ。
 とはいえ、この程度の傷なら……

「ぐぅ……ふぅ……」

「お、回復魔術か」

 そう、自前で回復できる。傷は塞がるし、痛みも引いていく。
 回復魔術があれば、たいていの傷は治せる……とはいえ、痛みを受けるその瞬間の痛みまでは消せないので、回復魔術があるからってがんがん攻撃を受けるなんてことはしたくないけど。

 気を取り直して、私は構え直す。それを見て、オートラインさんもまた構える。

「わざわざ待ってくれたんだ」

「こいつが試合や決闘ならともかく、手合わせだからな。それに、かわいい女の子の顔に傷でも残ったら大変だ」

「どの口が」

 いやまあ、着地に失敗して顔面からイッたのは私のミスなんだけどさぁ。

 ……そうか、確か凄腕の回復魔術の魔導士がいるって言ってたっけ。あれくらいの傷……いやもっと深手でもわけないんだろうな。
 だから遠慮もない。遠慮してほしいなんて思ってないけど。

 再びにらみ合う……のも一瞬。オートラインさんは今度は踏み出したその足で高く跳ぶ。
 助走もなしに、あんな跳ぶなんて……それに、魔力による補助は身体強化のみだ。

「おぉおおお……」

 そしてオートラインさんはその場で横回転を始める。ぐるぐるぐる……と何度も回り、そのまま私に向かって落下してくる。
 落下の勢いを利用しての、回転蹴り。しかも狙いは寸分狂わず私。

 これまた高度なことを……

「お、らぁ!」

「せいや!」

 繰り出される蹴りに、私も蹴りをぶつけて相殺。やっぱり、じんじんと痛みが走る。
 でも、さっきよりも魔力を多く流しているおかげか、さっきよりはまだ痛みは感じない。

 といっても……

「ははっ、律儀にぶつかり返してくるとは! いいぜお前!」

「どう、も!」

 確かに避けたりしてもよかったんだけど……この人とはなんでか、正面から堂々とぶつかりたくなった。

 そのまま拮抗する力は弾け、お互いに後ろに下がる。
 受け身ばかりじゃだめだ。今度はこっちから!

「うりゃあああ!」

 いったん下がり、それを助走の助けにしてスタートを切る。飛び出すようにオートラインさんへと向かい、右拳を放つ。
 オートラインさんは同じく右拳を突き出し、またも拳と拳が衝突する。

「ぬっ……りゃりゃりゃ!」

 今度は、そのまま拳をぶつけるのではなくいったん引き、逆の拳を突き出す。それを防がれたらまた逆の拳を。
 両拳の乱打を浴びせる。身体強化で速度も上昇しているはずだけど、それらすべてを捌いてくるのはさすがか。

「ははっ、いいねぇ。受け身ばっかの女は好みじゃねぇ、戦闘でもベッドの上でもな!」

「なに言ってるかわかんない、よ!」

 くぅう、拳がぶつかる度に痺れるぅ。ほんっとどうなってんだよ!

 もしかしてだけど……私の知らない技法とか、そういうのがあるのかもしれないな。
 魔力が少なくても、相手に決定打を与えられるようななにかが……

「こんなにヤり合えるのは久しぶりだ。もっと楽しもうぜ!」

「うわっ」

 テンションの上がってきたらしいオートラインさんが、笑いながら反撃を開始する。私の拳を捌いてばかりだったのが、今度はオートラインさんの方が攻めを開始したのだ。

 こ、これは……ちょっと、やばいかも……

「どうした、俺に合わせて身体強化の魔法だけ使う必要もないんだぜ!? 回復魔術みたいに、他の魔導とも併用できるんだろ!?」

「……っ、それは、そうだけど……」

「変な意地なんか捨てて、お前の全力を見せてみろ!」

 ……変な意地、ね。確かにそうかも。
 手合わせとはいえ、せっかくこうしてタイマン張ってるんだ。相手が身体強化しか使わないと言ったからと言って、私までそれに合わせる必要はない。

 だったら……

「おっ……!?」

 私への反撃に夢中になっているオートラインさんに向かって、横から大気の塊をぶつける。魔力の塊……と言ってもいいけど。
 さすがに注意力が私に向いていたから、無防備な身体に簡単に衝突した。そのままふっ飛ばされる。

 遠距離からの攻撃は効果が薄い……ってのはさっき実践したばかりだけど。

「これなら……どうだ!」

 さっきは、数で攻め込もうとした。そのため一つ一つの力が弱まっていたのかもしれない。
 なら今度は、単純に質量だ。大きさと魔力を込めて、一気に押しつぶす。

 巨大な氷の玉を、放つ。以前魔獣に放ったときと同じ……いやあの時とはシチュエーションが違うから、それよりも強いものだ。

「っとと……いいねぇ、そうこなくちゃ!」

 危なげなく着地したオートラインさんは、やはりにやりと笑って……

「"二段階目ギア・セカンダリー"!」

 そう、口にした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

わけありな教え子達が巣立ったので、一人で冒険者やってみた

名無しの夜
ファンタジー
教え子達から突然別れを切り出されたグロウは一人で冒険者として活動してみることに。移動の最中、賊に襲われている令嬢を助けてみれば、令嬢は別れたばかりの教え子にそっくりだった。一方、グロウと別れた教え子三人はとある事情から母国に帰ることに。しかし故郷では恐るべき悪魔が三人を待ち構えていた。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。

さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。 荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。 一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。 これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。

平凡な王太子、チート令嬢を妻に迎えて乱世も楽勝です

モモ
ファンタジー
小国リューベック王国の王太子アルベルトの元に隣国にある大国ロアーヌ帝国のピルイン公令嬢アリシアとの縁談話が入る。拒めず、婚姻と言う事になったのであるが、会ってみると彼女はとても聡明であり、絶世の美女でもあった。アルベルトは彼女の力を借りつつ改革を行い、徐々にリューベックは力をつけていく。一方アリシアも女のくせにと言わず自分の提案を拒絶しないアルベルトに少しずつひかれていく。 小説家になろう様で先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n0441ky/

処理中です...