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第二章 異世界っぽい世界で学校生活

第92話 私、アルバイトしてるので

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 ごくごくごくごく……と、そんなにコップに入っていだろうかと思える勢いで、お茶を飲み干したルーア。満足そうな表情だ。

「んっ……ぷはぁ。いやぁ、誰かが家に来るなんて久しぶりですから、ついつい気合い入ってはしゃいじゃないましたよ」

 明るく話すが、言葉の内容はそうでもない。
 ……一人で暮らしているのなら、寂しくないはずがない。ルーアの年頃なら特に。

 隠すつもりはなくても、今回みたいに誰かを家に呼び込むことも、普通に考えればないだろうし。家に呼ぶ相手に親のことを話しても、どんな反応をされるかわからない。

「しかし……一人暮らしなんて、大変なんじゃないか? 前に住んでたとこは、その、いろいろ思い出しちゃうにしてもさ……
 それに、お金とか、さ」

 高校生の一人暮らし……それだけならよくありそうだが、ルーアの場合は特殊だ。両親のいない彼女が一人暮らしを続けるというのは、大変、どころの騒ぎではない。
 両親がいないとストレートに言うのは、やはり気が引けた。だがルーアは気にした様子はない。

 どころか、なぜか少し誇らしげだ。

「えぇまあ。でも、こうして一人暮らしを続けられている……どうですか、すごいでしょう」

 えっへん、とない胸を張るルーアの様子に、達志は暫しの間呆然とする。
 両親がいないことを気にした達志の気を楽にしようとしたのか、それともただ私すげえを自慢したかったのか。

 おそらく両方だろうな、と思う。それに達志の心配に対しても……

「お金なら心配いりませんよ。元々残っていたものや、保険……事故を起こした相手からも、じ、だんきん……っていうのもらいましたし。
 あと、アルバイトしてるので」

 大変ではあるが、とりあえずお金の心配はないとの返答。諸々の事情が重なり、蓄えは結構あるようだ。
 とはいえ、基本的にはアルバイトのみで暮らしているようだ。学費など、そのあたりは学校と話をしたらしい。

 それにしても、アルバイト……先ほど見た、サキュバスルーア。その姿を思い返せば、もしや、と達志の頭に、嫌な想像が浮かんでくる。

「アルバイト、って……まさかお前、夜のバイトとかしてるんじゃないだろうな?」

 サキュバスのバイト、いかがわしいフレーズしか浮かんでこない。
 夜のバイトなら、報酬も高額だろうし……一人暮らし、いけるんじゃないか?

 それに、普段のロリボディもウケる人にはウケるだろう。かつ、大人バージョンと併用すれば、それはすさまじい人気になるのではないか。
 一粒で二度おいしい、みたいな。

「違いますよ!? タツが想像してるようなことはこれっぽっちもしてないですからね!」

 当のルーアは必死に否定しているが、それが本当か怪しいものだ。
 それに、ふと思い出す。

「お前……部活……魔法部、だっけ。まさかそれと両立してんのか?」

 ただでさえ学生だ、アルバイトの時間は限られる。それに、確かルーアは、部活に入っていたはずだ。
 これでは、少ないバイト時間はさらに少なくなってしまうのではないか。

 部活なんてせいぜいが二、三時間だろうが……それでも学生にとっては、貴重すぎる時間だ。
 となれば、これはもう夜のバイトしかない。

「タツはどうしても私をいかがわしくしたいようですね。
 部活動とアルバイトをしているというよりは、部活動としてアルバイトをしているというか」

「!?」

 そんな達志の疑問は、ルーアの一言により吹き飛ばされた。よく意味がわからないが……今、部活動でアルバイトをしている、といったのだろうか。
 それはいったい? ホワイ?

 困惑する達志に、ルーアはハッとした顔をする。どうやら気がついたようだ。

「そうでした、タツは部活内容を知らないんでしたね」

「とにかく魔法をバンバン使ってあれこれして成長させようという素晴らしい部活なんじゃないの?」

 そう、部活の内容だ。確かそれは、以前ルーアがこう話していたはずだ。
 だがルーアは、首を縦に振りつつも、後半には横に振る。

「えぇ、確かにそう言いました。ただ……本来の活動内容は違います」

「本来?」

 以前に話したものは、本来の部活内容ではない……どうやらそういうことらしい。
 そのせいで意味がますますわからなくなる。だが、考えても答えが出てくるはずもない。

 ここで、ルーアが咳ばらいを一つ。その場から立ち上がり、物置をガサゴソと探ると、なにやら紙の束を持って来る。

「まずは、これを見てください」

 そう言って机の上に置かれた紙の束は、新聞紙だった。ページをめくり、その中の一ページで手を止める。そしてそのページの中にある、とある記事。
 それを指差されて、困惑しながらも、達志はその記事に目を通していく。

 そこに書かれていたのは……

「なになに……昨日、民家に魔物が出現した。しかし○○高校魔法部の手によって魔物は駆除され、事なきを得た……うん?
 ○○高校って、ウチのことだよな?」

 記事の内容を読み、その中に見過ごせない項目があったので、思わず二度見してしまう。
 そこに書かれてあった高校の名前は、確かに達志が通っている高校の名前だ。さらに、そこには魔法部と書いてある。

 これはつまり……この記事に書かれているのは、ルーアたちということになる。
 同名高校の同名部活という可能性もあるが、それならばルーアはこんなにどや顔になるのはおかしいし、わざわざ新聞を持ってはこない。

 つまり、これはルーアたち魔法部のことで、間違いはないということだ。
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