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第四章 激動の体育祭!
第150話 芸術審査選手権
しおりを挟む「いやぁ、なんか楽しかったよ」
「それならよかった」
部活対抗リレーが終わり、選手はそれぞれのテントへと帰還する。
みな、いい顔をしている。各々楽しんだようだ。
グラウンドでは、片付けが行われている。結構大掛かりな準備がされていたが、片づけるのも魔法であっという間だ。
本当に、魔法とは便利なものだ。
「お疲れー、みんな」
「おう」
自分のクラスのテントに戻った達志たちを迎えたのは、蘭花だ。
彼女はちょこんと座り、元気よくぶんぶんと手を振っていた。
ずっと思っていたことだが、昔の由香に似てるかもな……と、達志は思っていた。
「いやぁ、勇界くん、いい走りっぷりだったよぉ」
「はは、そりゃどうも」
それぞれ、声をかけていた蘭花が、達志の側へと寄ってくる。
ボールをラケットから落とさないよう走っていたので、正直、ちゃんと走れていたかはわからないが。
それも、周囲の顔を見るに、問題はなかったらしい。
「ま、楽しめたならそれが一番だよ!」
「そうだな」
「蘭花ー」
「あ、呼ばれてる。じゃ、あとでね」
忙しなく動く蘭花の姿に、達志は苦笑い。
小さな体で、元気に動いているものだ。
よっと腰を下ろし、達志はプログラムを確認する。達志が出るのは残すところ、『騎馬戦』のみだ。
あとはのんびりと、見学させてもらおう。
さて、次の種目の名前は……
「『芸術審査選手権』……?」
今までに見たことのない単語が、書いてあった。
何度見返しても、書いてある文字が変わることはない。なんだこれ。
……事前の種目決めの時間のときも思っていたのだが、あえて触れなかった。なんなのだろうこれは。どう見ても、体育系とは関係ない気がする。
「なあ、これって……」
「え? あぁ……達志くんは知らないんだっけ。『芸術審査選手権』……その名の通り、自分たちがいかに素晴らしい芸術品を作ったかを、競う種目だよ!」
「名前の通りだしマジで体育関係ねぇ!」
なぜそんな種目が加わっているのか疑問になったが、「体動かしてばかりだしちょっとした休憩的なあれ」らしい。休憩的なあれってなんだ。
休憩的なあれなら、部活対抗リレーがそうじゃなかったのか。得点には関係ないとはいえ、体を動かしたから休憩ではないのか。
「まー、そりゃ見てればわかるって。結構評判いいんだよ?」
まあまあ、と宥めるクラスメイトを信じて、ここはおとなしく見学しておこう。
いちいち変な種目を思い付いたり面白いことを考えやがる……程度に、前向きに考えよう。
これを考えたのは、いったい誰だろうとは思うが。
ちなみにメンバーは、すでにグラウンドに集まっている。その中には……
「リミ!? それにルーアまで!?」
リミ、そしてルーアという、おそらく緑チーム最大火力を持つ二人がいた。
こんな種目で、どうして? そんな気持ちしか浮かんでこない。
それはそれとして、絵になる二人だ。ルーアも、黙っていればかわいいのだ。
心なしか、野郎どもの黄色い声が湧き上がったように感じる。
「そりゃこの種目、一般的な種目に比べて貰える点数が多いからね。そりゃ気合いも入るでしょそりゃ」
「なおさら体育要素どこいった!?」
体育要素とはまったく関係のない種目で、より多くの点数が入るとは。
やはりよくわからない、基準が。これを考えた奴は愉快犯に違いない。
相手チームにはリミとルーア……他チームもそれなりに、なんだか『やりそう』な人たちが出場している。これはこっちも、気合いを入れていることだろう。
その赤チームの、出場選手は……
「っぺ、なんでこんなしょっぱい種目に出なきゃいけねえんだ……」
「あぁ、感じる……注目している、みんなが! この! ワタシに! 素晴らしい」
「…………」
トサカゴリラと、柔道の筋肉ナルシストだった。
「なんでゴテゴテの体育会系がこぞって出てんだよ!!」
もう、突っ込まずには……いや、叫ばずにはいられなかった。体育祭の競技には出場回数に制限があるというのに。
よりによってなぜあの体育会系二人が、全く体育関係無さそうな種目に出ているのか。
……いや、なにか勝算があってのことかもしれない。そうかもしれないきっとそうだ。
とりあえず、落ち着くことにしよう。
「なんでもいいから頼むぞ……!」
とりあえず勝つためには、やたらと獲得点数の高いこの種目で、上位に入ることが必須だ。一位が理想的ではあるが。
そうこう願っているうちに、一組目の披露が始まる。
とりあえずこれがどんな種目か確認するためにも、一組目の動きをよく観察する。評判も高い種目だし、単純に気にもなる。
「リミ、ルーア……」
早速最強ペアの登場だ。この二人が出ている理由も謎だが、それも見ていればわかるということだろうか。
気のせいか、辺りの緊張感が増した気がする。二人の準備が済み、開始の合図が鳴る。
すると、早速行動を開始した者がいた……ルーアだ。なにをするつもりなのか、おもむろに自らが付けている眼帯に、手をかける。
ここからが、二人の共同作業の始まりだ。
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