異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

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氷狼の村

殺意の正体

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 突如として感じた、殺意の感情。それは間違いではなく、この村にいる何者かの仕業だ。

 それを、私は感じた。だからこの村で、私たちに殺意を向ける何者かがいると……ユーデリアに伝えた。その結果……


「グルルルル……!」

「っ、すごい、風だ……!」


 彼のトラウマを呼び起こしてしまう事態となり、猛烈な風が……吹雪が、ユーデリアを中心に吹き荒れる。なんてこった……!


「ヒィイイイン!」

「いけない……!」


 このままじゃ、私はともかく間近にいるボニーは、氷付けになってしまう。なのでそれを防ぐために、ボニーを連れて一旦ユーデリアから距離をとる。


「近づいちゃ、ダメだからね」

「イィイン」


 この冷気……私が過去で見た、『近づくものを瞬時に凍らせる』ものではないようだ。これまでに、マルゴニア王国や別の国で見せたのと、同じタイプ。

 ただ……制御できずとも意識があった状態とも、意識的に制御できた状態とも、違う。意識はなく、制御もできていない……そんな、状態だ。


「勘弁してよ……」


 意識なし、制御不可……これじゃあまんま、過去で見たあの冷気と同じ状態じゃないか。つまり、この冷気がいつ『近づくものを瞬時に凍らせる』に変化してもおかしくない状況ってことだ。

 人も、人を燃やす炎も、瞬時に凍らせ砕いた冷気。あんなのをまともに浴びたら、私だってどうなるかわからない。

 そうなる前に、ユーデリアを正気に戻したいとこだけど……


「ガルルル……」

「近づいたら、問答無用で襲われそう……」


 今のユーデリアに近づくのは、相応の危険を伴うだろう。たとえ冷気に瞬間的な殺傷能力がなくても、ユーデリア自身に攻撃される可能性だってある。

 正直今なら、ユーデリアと戦っても負ける気はしない。私は腕が一本ないが、ユーデリアは意識自体がない。片腕であろうと、意識のない相手くらい簡単にへし折れる。

 おまけに、今の私には魔力がある。魔法が使えるのだ。半分の威力とはいえ、『魔女』エリシアの魔法……半分でも充分すぎる威力だ。


「もしくは……」


 ユーデリアを正気に戻すには、手っ取り早くぶん殴るか。それとは別に、もう一つ考えがある。

 それは、ユーデリアがこうなった原因……殺意を持った人物を探しだし、怒れるユーデリアの前に差し出す。そうすれば、怒りの感情はすべてそいつに向けられ、見境ない冷気これも収まる。はず。

 え、そうなったら、ユーデリアの前に差し出された奴が危ないって? 知ったことじゃないね。私たちに殺意を向けるのが悪いし、そもそもこの世界の人間がどうなろうと知ったことじゃないし。

 ただまあ……ぶっちゃけ、どっちもユーデリアが正気を取り戻す確信はない。これが問題なわけだけど。


「グルルァアア……!」

「四の五の考えてる必要はない、か」


 考えてる時間が、もったいない。なんかユーデリアの唸り声が大きくなってるし、吹雪の勢いも増している。

 こうなったら、とりあえずユーデリアを一発ぶん殴って、正気に……


「ひ、ひぃい! な、なんなんだよ!?」

「!」


 拳を握り、構えた……ところへ、どこからともなく情けない男の声が届く。それは……先ほど、殺意を感じた場所から聞こえてきた。そう、殺意を感じたのは、あの方角、場所からだ。

 すぐに視線を向ける。そこには一人の男が……しりもちをついて、震えていた。あいつが、殺意の正体? とてもそんなタマには見えないんだけど。


「……ま、なんでもいいか。ラッキー」


 考えてみれば、この村に人がいる時点でおかしいのだ。生き残りはいないし、ここは氷狼の村。地図にも記されていないこの場所は、誰でも来られる場所ではない。

 私は、ユーデリアの案内で。バーチは、"あの人"からの情報で。"あの人"がどうやって氷狼の村の居場所を知ったのかは定かじゃないけど……今は、置いておこう。

 つまり、この村にいる時点で、そいつはただの人間じゃないってことだ。


「くそっ、聞いてた話とちが……」

「どーもー、こんにちわー」


 男は情けなく震え、顔が青ざめている。私はそんな男の前に立ち、とりあえず笑顔を浮かべてみる。

 殺意のぬしを探し出すより、ユーデリアをぶん殴った方が早い。そう思っていたのだけど、まさか主自ら出てくるなんてね。


「ひぃ! な、なんだお前は……」

「それはこっちの台詞なんだけど……あんた、誰?」


 震え、怯え、もはや立てないほどに精神が参っている……ように見える。だけど……


「た、助けてくれぇ!」


 ……これは、フリだ。震え、怯え、もはや立てないほどに精神が参っている……フリ。よくできた演技だ。普通の人なら、騙されてしまうレベル。

 この男……私があと、一歩でも近づけば、腰に差している剣で即座に斬りにくる。演技も、殺意を隠すのもうまい。実力も高い。けれど……


「まずは確実に、動けなく……」

「……!」


 近づく前に、完全に動きを封じてしまえばこちらのものだ。そう思い、魔力を発動させ……男に金縛りを、かける。

 ……はずだった。


 キィン!


「ちっ!」


 私の魔力を感じたのか、体が動かなくなるよりも早く、男は私へと剣を向ける。しかし、寸前のところで空間に防壁を張るのに切り替え、剣擊を防ぐ。

 こいつ……魔力の動きを、読み取って反撃してきた。何者だ……?
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