異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

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世界への反逆者 ~英雄と師~

時間切れ……?

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「はぁー!」

「ぬぅえぃ!」


 ガンッ、と、互いの拳がぶつかり合う。今度はこっちから勢いを乗せた分、威力が上昇している気がする。いや、これは勢いだけの問題じゃなくて……


「ほほぅ、魔力で力、速さ、諸々を上昇させているということか」


 魔力による、力の底上げ。これで、身体能力を全体的に上昇させる。

 たとえ師匠のように体が一回り大きい相手であろうと、たとえ師匠のように力の差が開いた相手であろうと、これならば実力の差を埋められる……!

 もっとも、この身体強化だって、魔力を手に入れてから使えるようになったもの。今まで戦ってきた相手はほとんどが素の力で殺してきたし、この世界に戻ってくる前だって、この身一つでやってきた。

 だから、実は身体強化しての本格的な実戦は、これが初めてだったりもする。しかも、身体強化しても勝てるかどうかわからない相手に、だ。


「ほぅ、腕一本しかないハンディをものともしないか!」


 身体強化されたおかげで、拳を放つ速度も重さも、段違いだ。これならば腕一本なかろうと、たいした問題にはならないかもしれない。

 ただ相手は師匠……それも二本の腕に加えて、呪術の腕まである。だとしても……


「足でもなんでも、使う……!」


 師匠は私よりも一回りは体が大きい。私は師匠に比べて小柄だ。しかし、言ってしまえば……小柄な分、師匠よりも素早く動ける。そこに身体強化をしていれば、なおさらだ。

 拳を打つだけでなく、体を、体全体を使え。その場に留まるだけじゃなく、動き回って狙いを定めさせるな!

 飛び上がり、蹴る。しゃがみこんでからの、頭突き。さらには、背後に回っての体当たり。小柄なら、小柄なりの戦闘スタイルを見つければいい!

 こうして、動き回って少しずつでもダメージを与えていけば、どこかで大きな隙を作るはずだ。


「くそっ、ちょこまかと……!」


 今、体の痛みは引いている。引いているからこそ、今このタイミングで、致命的な一撃を与えることができれば……!


「ふん!」

「わっ……」


 しかし、そう思い通りにはいかない。師匠がその場で大きく足踏みをしたことで、地面は割れ破壊される。その、捲れ上がった地面の一部が、足場のバランスを崩す。

 ただの一踏みで、こんなに……やっぱり、この人化け物だ……


「っとと……!」


 バランスが崩れたことで、当然私に隙が生まれる。隙を作ろうと思っていたというのに……

 迫る師匠の拳を、魔力で体を浮かせることでかわす。

 やはり魔力というのは、便利だ。こうして飛ぶことだってできるんだから。まあ、できることなら空を飛ぶなんて大それたこと、もっと平和なシチュエーションでやりたかったけどね。


「ったくあっち行ったりこっち行ったり……」

「それが、有効だって気づいたからね!」


 むしろこうして、相手をいらつかせる……までいかなくても、動揺を誘うことができれば儲けものだ!

 それに、避けるだけじゃない……


「えい!」

「むっ」


 先ほど、師匠自身の足で捲れ上がった地面の一部を、師匠目掛けて蹴り飛ばす。あるものは巨大は地面の一部が、あるものは蹴りで砕けた小粒の雨が、師匠へと放たれる。

 自分で作り出した凶器、とはいえそんなもの、師匠にとっては蚊が自分の周りを飛んでいるも同然。邪魔くさそうにはたき落とすだけだ。

 けれど、この小粒の雨の中に紛れて私自身も近づけば、簡単に近づくことが……


 ドゴッ


「ぐほっ」

「……あれ?」


 これは時間稼ぎですらなく、ただの目眩まし……そう割りきっていた。はずが、地面の一部が師匠の顎を弾き飛ばす。あんな攻撃が、当たったのだ。

 当たった……しかも、あんな急所に? なにか、油断でもあったのか……少し、手元が狂ったとか?

 しかし、その後も攻撃は衝突する。たかが抉れた地面の一部でしかないものだが、当たれば痛いはずだ。それを、ただ無防備に当たるなんて……


「ぐっ、くぅ……!」


 それどころか、その場に片方の膝をつき、急所に攻撃が当たらないように、顔の前に腕をクロスさせて身を守っている。

 あんなの……師匠らしく、ない。いったいなにが……


「……あれ、は……」


 よくよく見てみると、師匠の背中から生えていた呪術の腕が、消えている。私の右肩から生えている呪術の腕は自由になっているし、あの腕を師匠の意思で動かせるならこんな小粒の雨、呪術の腕に払い落とさせればいい。

 それを、しないってことは……


「とにかく、チャンス……!」


 あの呪術の力が、与えられたものだとしたら……呪術の炎を使っていた男たちと同様、時間切れの時が来た? そんで、呪術の力を使った代償として体に力が入らなくなった、とか?

 ……ともかく、今の師匠は動けない。こっちがまだ動けるうちに……!


「せぇい!」

「なっ……」


 動けない相手に、というのは気が引ける……なんて精神は、今差は持ち合わせていない。動けないなら動けないでそこをラッキーだと思い、全力で打ち抜くだけだ。

 守りに徹して動けない師匠の腕へと、顔面ごと振り抜く勢いで拳を放つ。同様に呪術の腕は、私の意思とは関係ないだろうが無防備となっている師匠の腹部へと、それぞれ打ち込まれていく。
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