異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

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英雄vs氷狼vs……

大暴れ

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 この国の警備隊……隊長さんを筆頭に、登場する。先ほどの魔獣との戦闘で疲れているはずだが……隊長さんに至っては、一回死んですらいるのだ。

 それなのに、あの魔獣よりも手強いだろうガニムを前に堂々としたものだ。この国を守るのが仕事だと、豪語した姿はただの口先だけじゃない。信念を持っている。

 ただ、その信念と実力が伴うかは、まったく別の話だけど……


「皆さん、危険です! ここは……」


 それを感じたのは、あこも同じか。それとも単に、ここにいることを心配に思ったためか。どちらであろうと、警備隊を下げようとするその言葉には焦りが見える。

 それは、ガニムの実力を確かに危険視しているからこそ……


「そういうわけにはいきません! 言ったでしょう!」

「えぇ、この国を守るのは本来、我々の役目ですから!」


 しかし警備隊は引かない。隊長さん以外も、みなそれぞれ信念を持っている。

 それは、素晴らしいものなんだろう。自分の役目にやりがいを感じている、立派なものだ。正しいか悪いかでいえば、間違いなく正しい。

 ……正しいがこの場において、どういう意味を持つか。正しいがいつにおいても正しく道を導くかは、保証はされない。


「あれは魔獣……とはまた違うな」

「関係ない。我々も微弱ながら、力になりま……っ」


 バシュッ……


「……え」


 ……その瞬間、赤が舞った。きれいな赤が、どす黒い赤が……血が、舞っていく。

 警備隊のうちの一人、その男が最後まで言葉を終えることなく、首筋から勢いよく血飛沫が吹き出す。それは、この距離からでも致命傷とわかる、傷。

 なにが起きたのか誰もわからない。少なくとも、警備隊のメンバーは、首をやられた本人でさえなにが起こったのかわかっていないだろう。


「! ロウ!」


 ワンテンポ遅れて、仲間の血が噴き出したことに隊長さんは困惑する。他の隊員も、各々が反応を見せている。


「ロウ! しっかりしろ!」


 ロウと呼ばれた、首をやられた男。力なく倒れ、出血量がまずい。あのままじゃあ……


「! こ、のぉ!」


 なにが起きたか理解したのか、理解したあこは怒りの形相で、その現象を起こした犯人……ガニムへと突っ込んでいく。

 ガニムはその場から、動いていない。が、ちゃんと見えた。ガニムが目に見えない速度で腕を震い、その瞬間ロウの首から血が噴き出したのだ。

 それが、どういう技なのかはわからない。だけど、ガニムの行為により一人の男が、命の危機に瀕している。


「うぁあっ!」

「動きが直情的だな!」


 ガニムへと突撃したあこの動きは、しかし見切られていたのかガニムの太い腕により妨害される。助走をつけて蹴りこんだ足技を、腕で受け止められてしまう。

 あこの足も、ガニムの反応も、常人をはるかに越えている。


「くっ……!」

「あまり調子に乗るなよ人間ゴミども!」


 そのまま力は拮抗……するかと思われたが、あこは一歩下がり、そのままガニムの横を駆け抜けていく。

 向かう先は、やはり……


「大丈夫ですか!?」


 警備隊の、倒れた男のところだ。すでに地面には血の海ができつつあり、一刻を争う状態。

 あこは魔力を発動させ、傷の手当てを開始する。その必死な表情からは……本当に、深刻さをうかがわせる。

 もしも時間の巻き戻しができるなら、あそこまで焦る必要があるだろうか? ああまで必死ということは……きっと、あの巻き戻し技は使えないということ。少なくとも今は……


「そんな人間ゴミに構っていていいのか!」

「!」


 回復中、当然あこは無防備になる。その隙を狙い、ガニムは一気に距離を詰めていく。

 周囲には、何人もの警備隊の人間がいる。それでも……


「アコ殿の邪魔はさせ……ぐぁ!」

「ここは通さ……がは!」

「皆さん!」


 たとえ国を守るための部隊であっても、強大すぎる力の前では紙同然だ。この場合、ガニムが強すぎるってのが問題だけど。

 あこを守ろうとしていた人々は、簡単に弾き飛ばされていく。身を呈して通さないようにとしても、ガニムの体当たりだけで吹き飛んでしまう、もろい壁。

 それは足止めすらできない、なんの意味もない……それどころか、怪我人が増えるだけ。あこがあれだけ必死になっているのは、死んだらもうどうにもできないからだ。なのに、今のガニムは体当たりだけで相手を殺しかねないポテンシャルを秘めている。

 結果的に、あこの気を散らし、邪魔をしているということに……


「貴様も、死ね!」

「っ……」


 迫るガニムの拳から、あこは逃げられない。一人ならばあの距離からでも逃げられるだろうが、そうすると怪我人を残していくことに。怪我人を連れては、間に合わない。

 あの子の性格上、誰かを残して逃げるなんてことはしないだろう。


「あぁ、もう!」


 気づけば私は、勝手に体が動いていた。ただし、ここから走っても間に合わない。右腕を振り、指パッチン……それは、呪術の炎の発動だ。

 ガニムに、この炎はダメージを通さない。通さないけど、意識していないところから全身が燃えれば、少なからず動揺を生む。


「ぬっ……!?」


 予想通り、ガニムは全身が炎に包み込まれ、一瞬動きを止める。一瞬あれば充分だ、あこが怪我人を連れて逃げるには。

 ガニムの体が燃えた瞬間、まるで事前に打ち合わせでもしていたかのような反応で、あこは怪我人を連れ、その場から飛び退いた。
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