449 / 522
英雄vs氷狼vs……
あこvsケンヤ
しおりを挟む「っ……!」
「ふん!」
あこの放った蹴りはケンヤに片手で止められ、振り払われる。その直前に、あこは後ろに飛ぶことで、自ら距離をとる。
ケンヤに一撃を加えることはできなかったが、ケンヤの注意を引くことには成功したはずだ。現に、ケンヤは振り返りあこを視界に捉える。
「あなた……よくも、みんなを……!」
変わり果てた警備隊の人たちの姿に、あこは怒りを露にする。こうまで怒っているあこ、元の世界でだって見たことがないかもしれない。
親しかった人の、死……それは、私にだって経験がある。元の世界に戻るより以前に、この世界で何度か経験したことだ。サシェにボルゴ、師匠……仲間が死ぬ度、悲しく怒ったものだ。
殺した相手に怒りを……いや、それだけではない。仲間が死んでしまったのは、自分の力不足が原因だと……自分自身に、怒りを。
「私が、気を失ってたから……! ……私を、みんなは助けてくれたのに、……私は、みんなを……」
あこも、自分自身に責任を感じているようだ。さっきまで気絶していた……気絶なんかしていなければ、こんな未来はなかったかもしれない。
その、あこが気絶してしまったのは、私の素顔を見てしまったせいで……あれ、これってもしかして、私のせいだったりする?
「あこ……」
このままでは、あこはケンヤに挑むことになるだろう。あこの実力ならば、あるいはケンヤにも……
けど、今あこは怒りを感じている。怒りに我を忘れて……とまではいかないだろうが、怒りは冷静さを欠かせる。今のケンヤはそれこそ未知数の力を持っている……そんな相手に、冷静さを欠いて勝てるものだろうか。
となれば、あこと一緒に私も……あこを、一人で戦わせてはどんなことになるかわからない。
「……っ」
けど、それは……できない、だろう。あこは私の顔を見て隙が生まれた。私だって、あこの隣でどんな顔をして戦えばいいのかわからない。
今ケンヤと戦っているあこは、気絶する直前に私の素顔を見たことを覚えているのだろうか……現状の光景に、忘れているのか。もし忘れているのなら、その方が都合はいいけど。
「は、ぁあ!」
「ふん!」
あことケンヤの、互いの攻撃がぶつかり合っている。ケンヤは警備隊を倒した魔力の鞭のようなものを使い、あこは魔力で身体強化をして打ち合っている。その攻防はすさまじく、私でも下手に近づけば怪我じゃ済まないだろう。
今の状態なら、なおさら。そうだ、あこと一緒に戦おうと思っても、こんな状態じゃ足を引っ張るだけだ。もうまともに、動くことすらできないのに。
「まだ……まだ生きてる人は、いる! だから……!」
「ぶっ……!」
自在に動くケンヤの魔力攻撃……繰り出されるそれを次々と避けつつ距離を詰めるあこは、ケンヤの顔面に思い切り拳をぶつける。
あの攻撃を回避するどころか、カウンターの攻撃まで……やはり、戦闘慣れしている。さっきこの国を襲ってきた魔獣といい、平和になったはずのこの世界でも戦いに慣れる生活を送ってきたということか……
「……魔獣、か……」
ふと、引っかかる。魔物、魔獣は、魔王を討ったことで消滅したはずだ。なのにちょくちょく、目にする。それが疑問だったが……
ガニムという魔族を仲間にしているケンヤ……もしかして、あの男がなにか関係しているんじゃあ……
「ぬ……うぅう!」
顔面に拳を打ち付けられ、そのままぶっ飛ぶ……かと思われたケンヤだが、その場で踏ん張っている。拳に押され、無理やり後ろに動かされてはいるが……ぶっ飛ばないよう、両足だけで踏ん張っている。
ぶっ飛ばないよう耐えているだけではない。勢いが弱まったためか、少し余裕ができたのか……ケンヤは、がら空きのあこの腹部狙いの右フックを放つ。それは、単にパンチを放つよりも弧を描いている分、避けるには……
「っ……」
予想通り、あこは右フックを、大きく飛び退くことで回避する。単なる右ストレートよりも、弧を描く右フックの方が避けるには大きな動きが必要だ。多分。
しかし、下がってそれであこの攻撃が終わるわけではない。下がりながらも、魔力を集中させ、魔獣に大打撃を与えた魔力の塊を、三つほど放つ。
「っ、せや!」
しかしそれは、ケンヤに直撃する前に消滅する。まるで剣で斬るように……いや実際にそうしているのだろう、魔力の塊を、魔力の鞭で次々斬っていく。魔力の塊は爆弾のようなものだ、爆弾を斬れば爆発する。
激しい音を立てて、爆風が舞う……爆風によりケンヤの姿が見えなくなると、あこはいっそうに警戒心を露にする。
だけど、離れた位置にいる私からなら見える。ケンヤがどう移動して、次になにをしようとしているのか。
「あっ……!」
あこの背後に現れたケンヤは、魔力の鞭を使いあこを狙う。今度は後頭部を殴るんじゃなく、本当に殺しにいっている。
私が声をかける……その前に、あこは反応し魔力を纏った足で、魔力の鞭を受け止めた。回り蹴りの要領で、攻撃を受け止めたのだ。
「許さない……あなただけは……!」
「……!」
受け止め、弾く。怒りに燃えるあこは、ケンヤを決して逃さない。
その直後だ……あこの魔力が、急激に上昇する。それは、まるであこの本気を表しているようで。
「みんなの痛み、まとめて返してやる……! "魔力解放"!」
0
あなたにおすすめの小説
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる