異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

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英雄vs氷狼vs……

あこvsケンヤ

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「っ……!」

「ふん!」


 あこの放った蹴りはケンヤに片手で止められ、振り払われる。その直前に、あこは後ろに飛ぶことで、自ら距離をとる。

 ケンヤに一撃を加えることはできなかったが、ケンヤの注意を引くことには成功したはずだ。現に、ケンヤは振り返りあこを視界に捉える。


「あなた……よくも、みんなを……!」


 変わり果てた警備隊の人たちの姿に、あこは怒りを露にする。こうまで怒っているあこ、元の世界でだって見たことがないかもしれない。

 親しかった人の、死……それは、私にだって経験がある。元の世界に戻るより以前に、この世界で何度か経験したことだ。サシェにボルゴ、師匠……仲間が死ぬ度、悲しく怒ったものだ。

 殺した相手に怒りを……いや、それだけではない。仲間が死んでしまったのは、自分の力不足が原因だと……自分自身に、怒りを。


「私が、気を失ってたから……! ……私を、みんなは助けてくれたのに、……私は、みんなを……」


 あこも、自分自身に責任を感じているようだ。さっきまで気絶していた……気絶なんかしていなければ、こんな未来はなかったかもしれない。

 その、あこが気絶してしまったのは、私の素顔を見てしまったせいで……あれ、これってもしかして、私のせいだったりする?


「あこ……」


 このままでは、あこはケンヤに挑むことになるだろう。あこの実力ならば、あるいはケンヤにも……

 けど、今あこは怒りを感じている。怒りに我を忘れて……とまではいかないだろうが、怒りは冷静さを欠かせる。今のケンヤはそれこそ未知数の力を持っている……そんな相手に、冷静さを欠いて勝てるものだろうか。

 となれば、あこと一緒に私も……あこを、一人で戦わせてはどんなことになるかわからない。


「……っ」


 けど、それは……できない、だろう。あこは私の顔を見て隙が生まれた。私だって、あこの隣でどんな顔をして戦えばいいのかわからない。

 今ケンヤと戦っているあこは、気絶する直前に私の素顔を見たことを覚えているのだろうか……現状の光景に、忘れているのか。もし忘れているのなら、その方が都合はいいけど。


「は、ぁあ!」

「ふん!」


 あことケンヤの、互いの攻撃がぶつかり合っている。ケンヤは警備隊を倒した魔力の鞭のようなものを使い、あこは魔力で身体強化をして打ち合っている。その攻防はすさまじく、私でも下手に近づけば怪我じゃ済まないだろう。

 今の状態なら、なおさら。そうだ、あこと一緒に戦おうと思っても、こんな状態じゃ足を引っ張るだけだ。もうまともに、動くことすらできないのに。


「まだ……まだ生きてる人は、いる! だから……!」

「ぶっ……!」


 自在に動くケンヤの魔力攻撃……繰り出されるそれを次々と避けつつ距離を詰めるあこは、ケンヤの顔面に思い切り拳をぶつける。

 あの攻撃を回避するどころか、カウンターの攻撃まで……やはり、戦闘慣れしている。さっきこの国を襲ってきた魔獣といい、平和になったはずのこの世界でも戦いに慣れる生活を送ってきたということか……


「……魔獣、か……」


 ふと、引っかかる。魔物、魔獣は、魔王を討ったことで消滅したはずだ。なのにちょくちょく、目にする。それが疑問だったが……

 ガニムという魔族を仲間にしているケンヤ……もしかして、あの男がなにか関係しているんじゃあ……


「ぬ……うぅう!」


 顔面に拳を打ち付けられ、そのままぶっ飛ぶ……かと思われたケンヤだが、その場で踏ん張っている。拳に押され、無理やり後ろに動かされてはいるが……ぶっ飛ばないよう、両足だけで踏ん張っている。

 ぶっ飛ばないよう耐えているだけではない。勢いが弱まったためか、少し余裕ができたのか……ケンヤは、がら空きのあこの腹部狙いの右フックを放つ。それは、単にパンチを放つよりも弧を描いている分、避けるには……


「っ……」


 予想通り、あこは右フックを、大きく飛び退くことで回避する。単なる右ストレートよりも、弧を描く右フックの方が避けるには大きな動きが必要だ。多分。

 しかし、下がってそれであこの攻撃が終わるわけではない。下がりながらも、魔力を集中させ、魔獣に大打撃を与えた魔力の塊を、三つほど放つ。


「っ、せや!」


 しかしそれは、ケンヤに直撃する前に消滅する。まるで剣で斬るように……いや実際にそうしているのだろう、魔力の塊を、魔力の鞭で次々斬っていく。魔力の塊は爆弾のようなものだ、爆弾を斬れば爆発する。

 激しい音を立てて、爆風が舞う……爆風によりケンヤの姿が見えなくなると、あこはいっそうに警戒心を露にする。

 だけど、離れた位置にいる私からなら見える。ケンヤがどう移動して、次になにをしようとしているのか。


「あっ……!」


 あこの背後に現れたケンヤは、魔力の鞭を使いあこを狙う。今度は後頭部を殴るんじゃなく、本当に殺しにいっている。

 私が声をかける……その前に、あこは反応し魔力を纏った足で、魔力の鞭を受け止めた。回り蹴りの要領で、攻撃を受け止めたのだ。


「許さない……あなただけは……!」

「……!」


 受け止め、弾く。怒りに燃えるあこは、ケンヤを決して逃さない。

 その直後だ……あこの魔力が、急激に上昇する。それは、まるであこの本気を表しているようで。


「みんなの痛み、まとめて返してやる……! "魔力解放"!」
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