異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

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英雄vs氷狼vs……

予想外の相手

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「力を……いや、魔力を吸いとる能力……?」


 それはあくまで、予測の域だ。だが、おそらくそれが正解であろうことはほぼ確信している。

 力でなく魔力と思ったのは、あこの魔力のみが急激に減っているからだ。ダメージを受けただけにしては、あの減りようは異様だ。

 今、魔力の源である左目は閉じられているが……それは関係なくとも、魔力の有無を確認することができる。もうずいぶんと、魔力と付き合ってきたおかげだろうか。


「くっ……」

「……」


 警戒するあこと、なにも言わないケンヤ。肯定もしなければ否定もしないが、おそらくはその推論が正しいとケンヤも認めているということだろう。

 さっき、あことケンヤが殴打の連打で拳を打ち合っていたとき。ついさっき、あこの首をケンヤが掴みかかったとき。そのときだ、あこの魔力量に変化が訪れたのは。

 おそらくそれは、触れた相手の魔力を吸いとるもの。それを自分の魔力に変換できるのか、それとも単に吸いとるだけなのか……それはまだわからないが、わかっているのはケンヤに触れられてはならないということ。

 魔力解放して魔力の量が大幅に増えたからこそ、この相手は手痛い。


「けど、ならそれでやりようはある!」


 魔力を吸いとられたとはいえ、それでもあこの魔力はまだ、並みの魔法使い以上の魔力が残っている。それに、魔力を解放しているおかげか先ほど負ったダメージも、みるみる回復しているようだ。

 魔力解放とは身体強化に回すだけではなく、回復魔法として傷を癒す意味も持っている。さらに、身体中から溢れるオーラのような魔力は、まるで見えない鎧……攻撃、防御、そして回復と、隙がない。


「せい!」


 触られれば魔力を吸いとられるのだから、触られないよう距離を取って対応すればいい……そう思っていたのだが、あこの取った行動はまったくの逆。ケンヤへと、自ら接近していく。

 それはケンヤも予想外の行動だったようで、瞬時に目の前へと距離が詰められる。遠ざかると予想はしても、まさか近づいてくるとは思うまい。


「触られなきゃ、いいんでしょ!」


 本当に私が知っているあこと同一人物か、と思ってしまうほどの脳筋思考で、ケンヤの顔をぶん殴る。やはりこれも予想していなかったケンヤは、右頬にもろに拳をもらう。

 確かに触れられなければ魔力を吸いとられることはない。けど、それはなんとも危険な賭けだ。触られる前にけりをつけるつもりなのか、あこの猛攻は止まらない。

 元々制限時間がある可能性があるのだ、チマチマやっていたらそれこそ時間切れになってしまう。そう考えれば、あこの行動は一概に間違っているとも言えないか。


「うりゃりゃりゃりゃ!」

「くっ、うぉおお……!」


 ケンヤの腹部へめがけて、何度も何度も拳を打ち付けていく。先ほどの隙を狙ったパンチが虚をついたのか、ケンヤは抵抗する素振りすらない。防戦一方に、あこの打撃の嵐を受ける。

 その動きには、一切の躊躇がなく……


「あぁあああ!」


 気合いを入れるためか、声を上げながらケンヤの顎へと拳を振り上げ、打ち上げる。わずかに宙に浮いたケンヤの体を、横から蹴りつけて吹き飛ばす。

 相手は魔獣でも魔族でもなく、人間だ……それにまったく躊躇がないのは、きっと……


「はぁ、はぁ……許さない。みんなの、仇!」


 倒れた警備隊の屍を横目に見つつ、あこは怒りを露に。相手が人間であっても、大切な人を殺されては黙ってはいられない。

 さすがにあこが人殺しをするとは思えないが、それに近い形でけじめをつけさせるだろう。


「っ……まさかこんな、予想外、だよ……」


 吹き飛んで倒れていたケンヤは、ゆっくりと起き上がる。頭から血を流しているし、ダメージは通っているはずだ……


「はぁ、もう虫の息の『英雄』一人殺せば済むものを……なんだってこんなことに……」


 なにやらぶつぶつ、呟いている。その内容はさすがに聞こえないが、表情をしかめているように見える。

 ケンヤは、元々私を狙ってきたんだ。その次に、ユーデリア……そのユーデリアは、向こうでガニムと戦っているが。

 ケンヤにとって、あこという存在は未知だ。どういうことか、私やユーデリアをケンヤは視てきた、と言った。故に行動パターンを読まれてたりもした。そのケンヤが行動を読めないのが、あこだ。

 この国を荒らすガニムを止めに来て、その後仲間を殺され……あこにも、戦う理由ができた。あこかケンヤか、どちらかが動けなくなるまで戦いは終わらないだろう。


「さっきから、なにをぶつぶつと……」

「いやほんと、邪魔ばかりしてくれるな……!」

「っ!?」


 今度ははっきりと聞こえた、まるで苛立ちのような言葉……それと同時に、ケンヤから溢れ出す魔力が上昇する。あれは……あこから、吸い取った魔力か?

 やはり、ただ魔力を吸いとるだけでなく、自分の力に変換することができるのか……なんとも、厄介な能力だ。


「けど、君みたいな強い相手なら……ルヴを生き返らせる生け贄としてちょうどいいかも、しれない」

「?」


 またなにか、ぶつぶつ言っている……が、今度はかすかに聞こえたぞ。生き返らせるとか、生け贄とか……そんな単語を、言っている。

 それって……まさか、人を生き返らせるっていう、禁術のことか? そうだとしたら……あのとき、師匠を生き返らせて私を襲わせたのも、やっぱりこいつか……!
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