454 / 522
英雄vs氷狼vs……
四つ巴
しおりを挟む実際に、何者かが禁術というものを使い、師匠を生き返らせた。そいつは、師匠に私を狙わせた……その時点で、予想はしていたが。
やっぱり、あのケンヤが、師匠を生き返らせて私を狙わせた、張本人……!
「生き返らせる? 生け贄? なにを、言ってるの?」
それが禁術を指すと知らない……いや、禁術の存在自体知らないのだろう、あこは。出てくる単語に、眉を潜めている。
私だって、死んだ人間を生き返らせる行為を禁術と呼ぶ、という知識があるだけで、実際になにが必要だとかそんなことはわからない。わからないけど、今のケンヤの口振りが示す通り、生け贄ってやつが必要なのだろう。
聞こえた、ルヴってのが生き返らせたい相手だろうか。誰かを生き返らせたありがとうって気持ちは、わからないでもないけど……そのために、あこをどうにかしようなんて……
「許せるわけ、ないよね……!」
不思議だ……さっきまで、体にまるで力が入らなかったのに。あこがどうにかされかねないって思ったら、体が動く。右腕には、相変わらず力が入らないままだけど。
このままあこの加勢に入ったら、あこに私の正体がバレてしまうけど……そんなの、気にすることでもなかった。もしこのままこうしてここでただ寝ていたら、あこに万が一のことがあったら一生後悔する。
「! へぇ」
立ち上がった私に気づいてか、ケンヤがにやりと笑う。その視線に従うように、あこもこちらに視線を向けて……
「ふぅん、面白いことになってるじゃん……混ぜてよ」
そこへ、この場にはいなかったはずの……距離が離れたところにいたはずの、人物の声がかかる。その声に、私もケンヤも、あこも一斉に声の主を確認するため、首を動かして。
そこにいた人物に、こちらへ歩いてくるその姿に、絶句した。
「ユー、デリア……?」
こちらへと足を進めてくるのは、藍色の体毛を持った四足歩行の狼……いや、氷狼であるユーデリアだ。しかし、絶句した理由はその見た目がひどく、ぼろぼろだったから。
藍色の体毛は、本来が藍色だと知っていなければわからないほど、赤黒い血に染まっている。さらに、左足部分……だろうか、本来足がくっついているはずの部分には、足がなくなっている。その欠損部分を補うように、氷で作った即席の足が作られている。
牙や爪は所々折れ、息も荒く、しかし負っているダメージの大きさを見せないほどに強く。一歩進む度に地面を凍らせながら、そこにいた。
「氷狼……ガニムは、どうした……?」
と、問いかけるのはケンヤだ。そう、ユーデリアはガニムと戦っていたはず。私やあこと三人がかりでも苦戦した相手を、どうしたというのか。
警備隊の人間が何人か向かっていたけど、その程度でなんとかなる相手ではないし……
「見てみなよ、そこにいるから」
血に濡れた顔で笑みを浮かべ、顔で自らの背後を指すユーデリア。言われた通りに背後……ユーデリアがやって来た場所を見ると……
「……!」
どうなっているか、確認するまでもなかった。ユーデリアの背後には、一面の氷があった……まるでスケートリンクみたいな、見事なまでの氷。マルゴニア王国で大雪を降らせたのとはまた違う景色。
しかも、だ。そこに何体もの氷像がある……警備隊の人間たち。なにより、見上げるほどに巨体となったガニムが。氷付けにされていたのだ。
「……まさか……そんな」
「驚くのは勝手だけど、事実だよ」
その光景は、さすがのケンヤも驚愕するほどのもの。私だって驚いている。ユーデリアの体は見ているのも痛々しいほどにぼろぼろになっているが、それでもまさか、あのガニムを……
しかし、驚愕だけでなく怒りに燃える者も、いる。
「みんな……あなた、よくも……!」
警備隊の人間、それはあこにとっての大切な人たち。それが氷像にされたとあっては、あこも黙ってはいられない。激しい敵意が、生まれる。
あこが、ケンヤが、ユーデリアが……そして私が。一触即発の中、四つ巴の戦いが始まる。
0
あなたにおすすめの小説
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる