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第一章 入学
入学試験 2
しおりを挟むその後、受付を済ませ、試験会場に向かった。
試験会場は学園の闘技場で、中々の大きさと広さをしているため、100人以上いる受験者が入ってもまだ余裕がある。
受験者が揃うと、試験管とおぼしき帯剣したムキムキのおじさんが受験者の前に立った。
「試験管のゴードンだ。今からお前たちには模擬戦をしてもらう。相手は、学園に通いながら国の剣術部隊に所属している、現在2年生のパウル・フレーゲンだ」
ゴードン試験管が指した方へ視線を送ると、制服姿の男の人がいた。
リリアと同じ金髪で、紳士そうなイケメンだ。
剣術部隊と聞いて、他の受験者達がざわつく。
まぁ、無理もない。
この学園に入る人の大抵の目標が、剣術部隊に入ることなのだから。
学園に通いながらすでに剣術部隊に入っていると聞けば、驚くに決まっている。
むしろ、なんでまだ学園に通っているのかと疑問に思うくらいだろう。
「よし、では最初は……リリア・リンスター」
「はい」
ゴードン試験管に呼ばれ、リリアはパウルさんのところへ向かった。
そして、リリアの名前が呼ばれたことで、他の受験者達がざわつく。
なんでこんなにざわつくかといえば、〝リンスター家に神童現る!〟という見出しの記事が出回ったからだ。
それに、リリアは現在14才。
この学園に入れる年齢は15才。
そう、リリアは飛び入学をしようとしている。
飛び入学を希望したのは、リリアが初めてだそうだ。
リリアほどの才能がほいほいいるわけないから、リリアが初めてでも納得できる。
でも、飛び入学をすることになった理由は、僕から「学園に入ったら寮生活をするつもりだ」と聞いたリリアが、「私もアノル兄様と一緒に学園に行きます!」と宣言したから。
リリアにはとことん甘い父が、それを聞いて早急に学園に飛び入学を申し込んだ、というわけだ。
そんなリリアが、パウルさんと対峙する。
双方剣を抜いて構える。
「リンスター家の神童と戦える日が来るとは、思いまもしませんでした」
「えぇ、お手柔らかにお願い致します」
二人が言葉を交わす。
立ち会いの位置にゴードン試験管が立ち、試合開始の合図を出す。
「始め!」
合図とともに動いたのは、パウルさんだった。
目で追うのがやっとなほどスピードのある突進で突きを放つ。
リリアは、金色に輝いた目でパウルさんの突進を見据えている。〝天眼〟だ。
〝天眼〟は、発動すると目の色が金色に変わる特性がある。
しかもリリアの場合、髪色も目の色も金だから、神々しく見える。
そしてリリアは、目前に迫るパウルさんの突きを、パウルさんの剣を弾くことで容易く捌いて見せた。
その場から一歩も動かずに。
目の前の光景に、他の受験者達が驚きの声を上げる。
しかし、驚くのはここからだった。
弾いたことで、パウルさんの手から剣が飛んでいき、パウルさんの戦闘不能によりリリアの勝利となったのだ。
これには、他の受験者達は唖然とするしかなかった。
僕はというと、リリアならこのくらい朝飯前だと知っているため、次が僕だったらどうしようという不安しかない。
「さすがリンスター家の神童だ。文句なしの戦いぶりだった」
ゴードン試験管がそう言って手に持っているバインダーになにかを書き込んだ。
たぶんこのあと次の人が呼ばれるな。
そう思った僕は、リリアの次が自分でないことを祈った。
「よし、次、アノル・リンスター」
「はいっ!」
呼ばれて反射的に返事をしてしまった後、リリアの次だということを思い返して落胆する。
あんなすごい試合のあとに〝天眼〟が発現していない僕の地味な戦いを披露するなんて、物語の結末を見たあとに過程を見るようなものだ。
それくらいつまらない。
「アノル兄様、お膳立ては整いました。存分に試合を楽しんできてください!」
戻ってきたリリアがそう宣った。
その目には、期待が溢れんばかりにこもっている。
僕は、苦笑いを返してから、パウルさんのところへ向かった。
この後の展開は想像に難くないからだ。
僕がパウルさんと対峙して刀を構える。
この刀は、極東の地で造られている剣で、僕の戦い方にあっているため、特別に極東の地の鍛治師に打ってもらった一品だ。
構えていると、ゴードン試験管が
「なんだ、お前、〝天眼〟が発現していないのか!」
と、そんなに出さなくていいだろう大きな声で言った。
それによって、他の受験者達がどっと笑う。
「リンスターってついてるからどんなやつかと思えば、〝欠陥剣士〟かよ!」
「よく受験しようと思ったな!」
「不合格決定だろ」
そんな様々な罵りを受ける。
大方予想通りの展開に、ため息しか出ない。
そして、この後どうなるかもだいたい想像がつく。
直後、罵りが飛び交う中、ただならぬ殺気が放たれる。
いわずもがな、リリアだ。
濃密な殺気により、場が静まり返る。
僕は再びため息をついた。
自分が悪口を言われようが罵られようが動じないくせに、僕が罵られたりするとこうなるんだよな。
本当、昔のリリアからは想像がつかない変化だ。
そう思いながら、名前を呼ぶ。
「リリア」
それだけで、リリアの殺気が収まった。
これくらいで僕が怒るはずがないのはわかっているはずなんだけどな……。
そう思った後、僕はゴードン試験管の方に向き直って頭を下げた。
「妹が失礼しました」
「あ、いや、もとはと言えば俺が原因だ。気にするな」
「ありがとうございます。試験を続けても構いませんか?」
「あ、あぁ……もちろんだとも」
ゴードン試験管の許可を得た僕は、再びパウルさんと対峙する。
ふと視線をやると、パウルさんがにこやかにこちらを見ていた。
なんとなくイラッとくる笑顔だ。
僕とパウルさんが構えると、ゴードン試験管が開始の合図を出した。
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