欠陥剣士の学園無双

遠竹

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第一章 入学

入学試験 3

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 再び先に動いたのはパウルさんだった。

 先ほどリリアにしたように、突進のような突きを放ってきた。

 実際に受けてみると、〝天眼〟がなければわからないほどに速い。

 まぁ、〝天眼〟を使うとどう見えるのかなんて、発現していない僕にわかるはずもないけど。

 リリアに聞いた限りでは、相手がどんなに速く動こうとも〝見える〟そうだ。

 そんなパウルさんの突きを、僕は半身はんみになることで避けた。

 それによって、パウルさんは僕を通り過ぎる。

 と思いきや、パウルさんが右足を踏み込み、右手に持っていた剣を左手に持ち、右足をバネに方向転換をしながら横凪ぎに振ってきた。

 さすが現役剣術部隊の隊員、そう易々と隙を作ってはくれないか。

 振るわれた剣を、刀身で受け止める。

 それを見たパウルさんが距離をとった。

 態勢を立て直すためだろう。

「悪いけど、ここからは本気を出させてもらうよ」

 距離をとったパウルさんがそう言った。

 そして、剣を構え、「地源ちげん流――〝瞬動しゅんどう〟」と口にした。

 直後、視界からパウルさんが消えた。

 〝瞬動〟は、地源流の人のみが行使することができる神速の技。

 地源流の人達は生まれつき身体能力が優れているため、五大流派の中で一番速く動くことができる。

 それこそ、〝天眼〟がなければ防ぎようがない。


 ――さて、どこから来る……?


 全神経を集中させて警戒していると、背後から気配を感じた。

 咄嗟に右回りに後ろへ振り返りながら刀を横凪ぎに振るう。

 察知した通り、背後には剣を振り下ろそうとしているパウルさんがいた。

 パウルさんは、驚いた表情をしながら剣の軌道を変え、間一髪で僕の刀を受け止めた。

 防がれたことで金属音が鳴り響く。

「やるね。本当に〝天眼〟発現してないのかい?」
「後ろに気配を察知したから後ろへ刀を振っただけです。反射神経には自信があるので」
「なるほど。確かにその通りみたいだ」

 そう言って、パウルさんが距離をとった。

「けど、次はどうかな?」

 そう言い残し、再びパウルさんが消えた。

 再び全神経を集中させた次の瞬間、様々な方向から斬擊が飛んできた。

 しかも、縦、横、斜めと斬擊の飛び方も違う。

「さぁ、どう防ぐ?」

 斬擊の向こう側に現れたパウルさんがにこやかや表情でそう言った。

 僕は気を落ち着けるために息を深く吐いてから一度刀を鞘に収める。

 そして、極東の地出身の剣の師匠から教わった抜刀の構えをとり、目を閉じる。

 数は15、そのうち僕を狙っての斬擊は7、すべて致命傷にならない程度に威力が抑えられてる。

 それを確認した僕は、目を閉じたまま「四の剣――〝飛閃ひせん七連しちれん〟」と呟く。

 〝飛閃〟は、鞘から高速で刀を引き抜くことで生じる斬擊を飛ばすもので、それを7回連続で行使するため、七連と付いている。

 そして、僕の斬擊によって、僕に当たりそうな斬擊が打ち消され、他の8つの斬擊は僕の傍を通り過ぎる。

 唖然とした表情で立ち尽くすパウルさん。


 ――さて、じゃあ今度は僕から……。


 そう思った矢先、

「そこまで!」

 ゴードン試験管の終了の合図が飛んできた。

「お、おい、あいつ、本当に〝欠陥剣士〟なのか?」
「あぁ、剣術部隊の隊員を相手にあそこまでやれるなんてな……」
「最後なんて、いつ剣を抜いたのかわからなかったもんな」

 他の受験者達がざわつく。

 なにを話しているのかは聞き取れないけど、雰囲気的に罵られていないことはわかった。

 気にすることはないと判断した僕は、パウルさんとゴードン試験管に頭を下げてから、リリアがいる場所へと向かった。

「お疲れ様でございました、アノル兄様! 現役剣術部隊の隊員ですら寄せ付けない戦いぶり、感服いたしました!」
「ありがとう、リリア。でも、さすが剣術部隊の隊員だけあって、剣捌きの正確さには目を見張るものがあったよ」
「そうでしょうか……あの程度、私にだってできますし、アノル兄様であればなおさらの技術かと。現にあの人が放った飛ぶ斬擊を、同じ飛ぶ斬擊で見事に打ち消して見せたではないですか」

 これは、あれだ……言う人を間違えた。

 リリアだとすぐに僕の方が優れているという言い回しになるからいけない。

 褒められるのは嬉しいんだけど……もしかして、僕に慢心させたいのだろうか。

 まぁ、リリアにそのつもりはないだろうし、精神的な修行だと思うことにしよう。

 そんなこんなで、僕の入学試験は終了した。

 あとは、明日の合格発表を待つのみだ。

 ◆

 学園某所。

 試験管を務めたゴードンが、とある部屋にて試験内容を報告していた。

「以上が、試験内容の全容となります」
「ご苦労、下がってくれ」
「はっ、失礼します!」

 ゴードンが部屋を出ると、一人の老人が口を開いた。

「いやはや、さすがはリンスター家の神童ですな。剣術部隊の中でも腕利きの剣士であるパウル君をあっさりと倒すとは」
「それよりも、神童の兄の方が問題でしょう」
「えぇ、〝欠陥剣士〟が剣術部隊の隊員を圧倒など、許されざること。なにか策を講じなければ……」
「如何なさいますか――学園長」

 その一言によって、学園長と呼ばれた人物に視線が集まる。

「……この件、私に任せてもらえませんか」
「学園長がそう仰るのでしたら、そのように計らいましょう」

 こうして、アノルの知らないところで、策略が巡らされるのだった。

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