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第一章 入学
合格発表
しおりを挟む翌日になり、再び学園にやってきた。
案内されたちょっとした広場に、合格者が書かれた紙が貼られた大きな看板が設置されており、すでに大勢の人達が看板を見て一喜一憂していた。
僕とリリアも、その看板の傍に寄って自分の名前を確認する。
名前があれば合格、なければ不合格だ。
リリアの名前は、一番上の首席合格のところにあったため、すぐにわかった。
隣にいるリリアを見れば、不満そうな顔をして立っていた。
「リリア?」
「不満です。アノル兄様が首席じゃないなんて、納得できません」
なにを不満にしてるのかと思えば、そんなことか。
「そうかな……勝敗を付けられずに終わったやつよりは、一撃で終わらせたリリアの方が首席に向いてると思うよ?」
「それは試験管が止めたからで、アノル兄様の実力が無かったというわけでは……」
「それに僕は〝欠陥剣士〟だから、首席にすると色々と面倒事が起こるはず。それに、僕はべつに首席になりたくて試験を受けたわけじゃない。入学の理由は、入学したいと父さんに申し出たときに言ったはずだよ」
「それは……そうですけど……」
次第に尻すぼみになっていくリリア。
リリアがこうなった場合は、頭を撫でれば大抵収まるとわかいっている僕は、リリアの頭を優しく撫でる。
リリアの頭を撫でてばかりなのは、ご愛嬌というこで。
そのお陰で、現にリリアの機嫌はこの通り……
「そうですね! 合格できていればそれでいいですよね!」
元気なリリアに元通り。
「まぁ、まだ僕の名前があるかどうか確認してないからなんとも言えないけど……」
「合格しているに決まっています! 本来なら首席でもおかしくないアノル兄様を落とす学園ならば、私がこの学園を落とします」
不穏なことを言うリリアは無視して、僕は看板に視線を戻す。
左端から順に見ていくと、5列目の上から8つ目にあった。
ひとまずホッと胸を撫で下ろす。
しかし、名前の右に〝G〟と書かれているのが目に入った。
この〝G〟というのはクラスのことで、成績優秀者から順に〝A~Gクラス〟で分けられる。
つまり、〝Gクラス〟の僕は、成績下位者ってことだ。
まぁ、短時間で決着を付けられなかったんだから妥当な評価なんじゃないかな。
他の受験者達はほとんど短時間で決着がついてたし。
「……とす」
「ん?」
隣にいるリリアが何事かを呟いたため、そちらを見る。
すると、今にも決壊しそうなくらい黒いオーラを発したリリアが目に入ってきた。
最早このやり取りをめんどくさいと思い始めてきたため、いっそのこと本音をぶつけてみることにした。
「リリア、そろそろそうやって僕のことで怒るのやめてくれないかな」
「えっ!? な、なぜですか!?」
「僕のために怒ってくれるのは嬉しいんだけど、毎回僕が宥めて頭を……撫でる……のは……」
待てよ? もしかして、そういうことなのか?
そうだよ、なんでこの可能性に気づかなかったんだ。
僕のために怒るのは本心で怒っているんだろう。
でも、僕が滅多なことで怒らないことはわかっているはず。
加えて、リリアの性格を考慮に入れれば……。
こんなことに気づかないなんて、僕としたことが……まだまだだな。
「アノル兄様?」
「リリア。もしかして、僕に頭を撫でてほしくて怒ってる?」
そう訊ねると、リリアの顔がパッと明るくなった。
「ご明察です、アノル兄様! 苦節5年、いつ気づいてもらえるのかと不安だったのですが、ようやく気づいてもらえました!」
そう言ったリリアの頭を撫でる。
「リリア、わかってるよ。頭を撫でて欲しかったけど、嫌っていた手前、素直にお願いできないでいたんでしょ? ――気づけなくてごめん」
「アノル兄様……そんな、アノル兄様が謝るようなことでは……!」
僕とリリアがそんなやり取りをしていると、教師と思われる男性がやってきた。
「取り込み中に失礼。リリア嬢、首席合格おめでとう。早速で悪いのだが、学園長室に来てもらえないだろうか」
「お断りします。兄との貴重な時間を割くことなどできません。お引き取りください」
男性の方を見ず、淡々と男性に言ってのけるリリア。
この妹は……。
そう呆れた矢先、
「そのお兄さんの話だと言っても?」
男性がそう言った。
リリアはピクッと反応し男性を見た後、眉を八の字にした顔つきで僕を見てきた。
それに対し頷いて返すと、リリアは諦めたように男性の方に歩き出した。
二人がいなくなり、一人になった僕は手頃な腰掛け場所を見つけたため、そこに腰を掛けてリリアの帰りを待つことにした。
◆
しばらくすると、リリアが駆け足で戻ってきた。
「お待たせしました。アノル兄様」
「お疲れ様。僕の話って言ってたけど、どんな話だった?」
「えっと、その、申し訳ありません。申し上げることができません……」
深々と頭を下げるリリア。
話せない……つまり、口止めされてるってことか。
リリアを口止めできる学園長……なるほど、相当な人物ってことだな。
「いいよ、話せないなら話さなくて。入学手続きを済ませよう」
そう言って立ち上がる。
「申し訳ありません」
頭を下げたまま再び謝るリリアを見て苦笑する。
「いいから行くよ」
そう言いながらリリアに手を差し出す。
それを見たリリアは、途端に明るくなる。
「アノル兄様……! はい! 参りましょう!」
僕の手を取りながらそう言って僕の手を引いた。
リリアの表情の変化に再び苦笑し、手を引かれながら、入学手続きの受付へと向かうのだった。
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