『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―

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王国との戦争

329:復興作業

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「じゃあそういうことで俺は行くよ」
「ええ、いろんな場所を回ってもらうことになりますが、よろしくお願いします」

 翌日。俺とイリンと環ちゃんの三人はグラティースに復興協力の指示を仰ぐために王城へと会いに来ていた。
 そして何処からまわればいいのかの指示が書かれた紙を受け取った俺達だが、復興の途中なんだから当たり前だと思うけど、グラティースは結構忙しそうだった。今だって長話している余裕なんて無いだろう。
 時間をかけては悪いだろうと、話しもそこそこにグラティースに別れを告げると外へと出ていった。



「彰人さんは王様と仲がいいんですね」

 まだ復興の途中である街を歩いて最初の目的地に向かっている最中、環ちゃんがそう言った。

「ん? ああ。まあ一応友人だからね」
「友人ですか……」

 俺が友人と言うと、環ちゃんは顔をしかめてから俯いてしまった。

 それから俺は何故環ちゃんがそんな顔をしたのか気がついた。
 おそらくこの子は、王国に残してきた友人である海斗くんと桜ちゃんのことを思い出したんだろう。

 それは、ある意味で俺もせいだとも言える。俺が環ちゃんだけをこっちに連れて来てしまったから彼女はこんな顔をすることになった。
 あのまま王国に置いておいた方が良かったとは思わないけど、それでも考えさせられるものがある。

「……いつ、とは言えないけど、必ず海斗くんと桜ちゃんの洗脳を解いて助け出してみせるから」

 環ちゃんにそんな顔を、そんな思いをさせてしまっている事に黙っていられず、まだなんの算段もついていないにも関わらずついそう言ってしまった。

 環ちゃんは目をパチパチと瞬かせると、最近よく見る挑発的な笑みや澄ました笑みとは違い、心から喜んでいるように純粋に笑った。

「はい!」




「着いたな。ここが最初か」

 俺が収納するべき瓦礫の積まれた最初の場所は比較的城から近いところだった。
 まあ当然ではあるか。この辺りは貴族街や高級住宅地と呼んで差し支えない。後回しにしてしまえば貴族連中がうるさいんだろう。
 一応あまりにも役立たずでひどい奴は消してるって話だが、それでも残ってる全員が大人しく王様に従順な奴じゃないというのは、考えてみれば当たり前だ。

 目的の場所に辿り着くと、そこでは沢山の人が周辺から瓦礫を運んで来ていた。見たところかなりの量が集まっているようだが、それでも瓦礫はまだまだ残っているようだ。

「あの、すみません」
「はい? ……なんですか、あなたは?」

 作業しているもの達の中で指示を出している者がいたのでその男性に声を掛けたのだが、俺の声に振りかえったその人は俺の顔を見た途端に訝しげ、と言うよりも嫌そうな顔をした。

 多分貴族なんだろう。こんな所で現場監督をしているくらいだからそれ程高位じゃ無いんだろうけど、仕事を任されているってことはそれなりに有能ではあるんだろうな、きっと。

 こちらとしてもそんな顔をされては気分がいいわけでは無いが、復興の手伝いと言っても所詮は仕事と同じだ。こういう手合いは気にするだけ無駄だし、今だけの付き合いだと思えばそう苦でもない。

「国王陛下より復興作業の命を受けてこちらに来たのですが、連絡は来ていませんか?」
「連絡? ……あなたが陛下のっ!? し、失礼いたしました!」

 俺がグラティースから渡された指示書と勲章を見せると途端に腰が低くなったが、そんな態度の変化なんて気にするほどでも無い。

「いえ、話が通っているのなら構いません。それで、もう作業はしてしまってもいいのでしょうか?」
「は、はいっ! お願いします!」

 現場監督の男は周りにいた者たちに指示をだしていく。

 そして暫くすると、目の前に積んである瓦礫の周囲から人がいなくなった。

 それを確認した俺は早速作業に入ろうと前へと出ていく。

「それじゃあ……」

 ……いや。大丈夫だとは思うけど、一応警戒はしておいてもらったほうが無難か。

 だが、いざ収納しようとしたところで一つの考えが頭を過った。

 俺はこれから瓦礫の下に収納魔術を使って渦を作り出し、上に乗っている瓦礫をしまうのだが、それには瓦礫がどの程度の広さ積まれているのか把握しなければならない。
 そのために探知を使うのだが、あれをやると無防備になる。ないとは思うが、ウースやソーラルの時みたいに俺を恨んでいる誰かが襲って来ないとも限らない。
 その『万が一』をなくすためにも言っておいた方がいいだろう。

「イリン。少しの間頼む」
「はい」

 言葉が少なかったな、と思ったが、イリンはしっかりと頷いてくれた。

 俺は再び前を向くと、意識を探知に集中させていき瓦礫の積んである範囲を確認する。

「では、やります」

 そう言うと俺は右手を前に出して収納魔術を発動する。手を動かすなんて動作は必要ないんだけど、まあ気分の問題だ。

 そうして直後に作られた収納魔術の渦はしっかりと瓦礫の積んである場所全体を範囲に収め、その上にあった瓦礫はズブズブと底無し沼に沈んでいくかのように消えていった。

 全てを収納し終えた後、収納魔術を解除してしまえばそこに残るものはなにもなかった。

 そのことを確認すると、俺は待っている二人へと振り返る。

「……よし。ここは終わりだな」
「おつか──」
「お疲れ様でした、彰人さん!」
「……お疲れ様でした」

 振り返ると、俺のほうへと歩いていたイリンと、そのイリンの声を遮って俺のほうへと駆け寄ってくる環ちゃんがいた。

「タマキ。後で少々話をしませんか?」
「私には話すことはないんだけど?」

 自分の言葉を邪魔されたイリンは笑顔だけど、それはどこか圧力を感じる笑みだった。
 だがそれに相対する環ちゃんも同じような笑顔で笑っている。

 二人が同じ部屋で一緒に住むようになってからもこう言ったやりとりは一向に減らない。
 仲良くなってはいないが、一応、険悪という感じではないのが救いだな。

「ほら二人とも、次に行くよ」

 俺は二人に声を掛けるとそばで茫然と立ったままの現場監督の男に向き直り挨拶をする。

「では我々はこれで失礼します」
「え……あ、はい」

 男は目の前で何が起こったのか分かっていないようで、ポカンと間抜けな顔をしていた。それを見てクスリと小さく笑ってしまったが、最初の態度を気にしなかったんだからそれくらいは許してほしい。



 その後も何箇所も瓦礫の収集場所を回ったが、そのどれもが問題なく終わった。

「これで今日回る分は終わったかな?」
「はい。後は三日ほどで全て終わる予定です」
「そうか」

 本当はもっとギチギチに予定を組めば早く終わるんだろうけど、俺の事を気遣ってくれたのだろう。グラティースから言われた予定にはわりと自由時間があった。

「これで、少しでも役に立てたもんかね」

 あいつは俺に恩を感じてるんだろうけど、それは俺も同じだ。むしろ俺の方が感謝していると思う。

 あいつに言わせてみれば、治癒の神獣のことを教えたのも、大会に出したのも自分の目的があったからなのかもしれない。
 けど、それでも俺にとってはその程度の事なのだ。正直に言って全然対価に見合っているとは思えていない。それほど俺はあいつに感謝している。これからも迷惑をかける予定もあるわけだし。

 まあその辺は個人の感じ方とか価値観の違いだろうから言っても無駄だろうけど、それでも俺が感謝しているのは確かだ。

「……さて。二人とも夕食にはまだ時間があるし、適当に歩かないか?」
「「はい!」」

 こういう時は息がピッタリなんだな、なんて思いながら、俺はいまだ復興途中の街を二人と共に歩き出した。
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