『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―

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友人達の村で

393:お節介

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 目を開けると登ったばかりの朝日が部屋を照らしている。
 少しだけ暗い部屋を見て、俺はいつもより早く起きたんだなと理解した。

 昨日村の散策を終えたあとは、ガムラの家へと戻り適当に話したりしながらゴロゴロと過ごし、キリーの作った夕食を取った後は部屋へと戻ってゴロゴロしていた。
 なんだかすごく怠けてる感がするけど、近々賊退治という仕事が待っているので、それのために英気を養っているのだ。……まあ、実際のところはただダラけてただけだが。

 こうしてダラけることのできる環境を用意してくれたガムラとキリーには感謝しかない。だから、その恩返しとして、なんとしてでも村を守ろう。

「おはようございます。アキト様」

 寝起きでぼやけた頭でそんなことを考えていると、俺の顔をじっと見つめているイリンが挨拶をしてきた。
 だが見ていると言っても、イリンは俺の隣で寝ているわけではない。その姿はもうすでにしっかりと着替えられており、ベッドの横に置いてある椅子に座っていた。

「おはようイリン」

 そうして挨拶をするとイリンはにこりと笑いかけてくれる。
 体を起こして窓の外を見るとやはりまだいつもより暗い。だというのにイリンはもう着替え終えているということは、もっと早く起きたということだ。それだとまだ日が昇っていないうちから起きているんじゃないだろうか?

「たまに思うんだけど、お前は毎回俺が起きるよりも早く起きてるよな。環なんかは、この通りだけど……」

 隣を見ると、そこにいた環は起きる様子もなくぐっすりと眠っている。
 一応環は色々とイリンに対抗心を持っているみたいだが、イリンのように朝早く起きるということはしていないようだ。

「……二人が起きる前にやっておきたいことがありますから」

 やっておきたい事、というと家事だろうか? ここはガムラの家だが、部屋を使わせてもらっている以上は掃除の必要もあるし、洗濯だって自分たちの分くらいはしないといけない。
 とはいえ、ここにきてまだ二日目だ。そんな何をするってほどのものもないんじゃないだろうか?
 だがやることと言ったらそれくらいしか思いつかないし、いりんの事だから家事でもしていたのだろう。

「大変じゃないか?」
「私のこれは、もはや趣味みたいなものですから」
「趣味ねぇ……まあいいけど。大変なら言ってくれよ? 他にも辛かったり頼みたいことがあったらなんでも言え。お前には笑っていて欲しいからな」

 まだ寝起きで頭がボケているからだろうか。普段だったら言わないようなセリフを言った気がする。
 でもそれが本心であることに違いはない。

「……はい」

 イリンも喜んでくれているみたいだし、まあいいか。

「……あの、でしたら一つだけお願いが……」
「うん」
「ひ、膝枕を、させていただけませんか……?」
「膝枕? ……今まで何度もしてもらったことあるけど、そんなことでいいのか?」

 俺の言葉に控えめに頷くイリン。
 それくらいなら断る理由もないし、むしろ俺へのご褒美って感じもするが、イリンが良いのならそれで良いかと、俺はイリンの願いを叶えることにした。

 ……だけど、せっかく夫婦となったんだし、もっとはっきりと言ってくれてもいいんだけどな。
 環と違ってイリンはあんまり踏み込んでこない。王国で俺を追ってきた時は俺が突き放そうともあんなにぐいぐい来たのに……。
 でもまあ、それも結婚というものに慣れてないからで、時間が経てばそのうち変わるだろう。




 環が起きたときにイリンの膝枕を受けていた俺をみて一悶着あったが、それも無事……無事? 解決した。

 無事というのが疑問系になったのは、俺が知らない事実が明らかになったからだ。俺はそれを聞いた瞬間になんだか体がゾワゾワした。
 どうにもイリンと環は俺が寝た後に…………いや、やめておこう。俺は何も聞かなかったんだ。そういうことにしておこう。じゃないと今度から二人と寝るのが不安になる。

 そんなこんなで朝食を終え、今日は外から見た村の様子を確認するために村の外を一回りしてきた。
 適当に切り上げて村の中に戻ると、木の上にちょこんと座っているナナが見えた。

「ん? あれは……ナナか。どうしてあんな所に?」
「キリーを見ているのではありませんか?」
「キリーを?」
「そういえば、ナナってキリーさんのことをやけに気に入ってたわよね」

 そういえば初日からなんだかキリーのことを見ていたような気がするな。部屋の案内の時もキリーの背後をつけていたし。

「同じ蜘蛛系だから気になってる、とか?」

 ナナは蜘蛛の神獣で、キリーは蜘蛛の混じった獣人だ。だから気になっているんだろうか?

「……いえ。これは私の感覚なのですが、なんだかそうではないような気がします。もっと違う……親愛の篭ったような、そんな様子に思えます」
「親愛、か……」

 そうなると俺たちにはわからない何かがあるんだろう。これが男女だったら恋愛関係かもしれないが、ナナもキリーも女性だ。ナナが同性愛者じゃない限り恋愛感情というのはないだろう。

 ……ナナがなにを思っているのか、聞いてみないことにはわからないか。

 だが、これ以上は踏み込みすぎだ。
 俺たちは旅の仲間としてここまで来たが、結局は他人だ。お互いによく知りもしない、ただここまで一緒に来ただけ。

 そう理解していても、なんとなくナナのことを放っておけなかった。

「ナナ」
「ん。アンドー」

 俺がナナが登っている木に向かって歩いていきながらナナの名前を呼ぶと、ナナは木の上から降りてこちらに歩いてきた。

「ナナはキリーのことを知っていたのか?」

 親愛を感じているのなら、もともと知っていた可能性が高いのではないだろうか。

「……んん」

 そう思って聞いたのだが、ナナは首を横に振った。

「ならどうしてキリーのことを見てる?」
「……」

 ナナは俺の問いには答えずに、先ほどまで見ていたであろうキリーへともう一度視線を向けた。

 その様子をよく見ていると、微かに手が動いた。ほんの僅かな、たった数センチ程度の些細な揺れ。
 だが俺には、それがキリーへと手を伸ばそうとしたように見えた。

「なに?」

 だから俺は伸ばされることのなかったナナの手をとって、キリーのいる場所へと歩いていく。

「お節介だとは思うが、お前はこのまま見てるだけでいいのか? 何か言いたいことがあるんだろ?」
「…………ありがと」

 今までのナナの声に比べてもはるかに小さい、それこそ本当に消えてしまいそうなほどの声だったが、その声は確かに聞こえた。

「おーい。キリー」

 キリーのいる場所へと近づくと、そこは村の外れの方だった。この辺りは壁に囲まれているといっても端の方で、あまり人が寄って来ない場所だった。

 その理由は単純で、とってきた獲物を解体するための場所だからだ。
 解体すれば当然血が流れて匂いがするし、解体後の残骸を放置しておけば腐って匂いがする。だから最初から解体する場所を決めてゴミを一か所に集めようということになったそうで、そのための場所がここだった。

 様子からしてもう終わったようだが、キリーはとってきたであろう獲物を解体していたらしい。

「アンドーか。どうしたんだい?」
「ちょっと用があってな。まあ、用って言っても俺じゃなくてナナの方だけど」
「…………」

 そういってナナの背中を押してキリーの前に出すが、ナナはまだ迷いがあるのか話さない。
 だが、ついにナナが話し出した。

「………………一つ聞きたい」
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