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三章
バイデント:王太子の依頼
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「——この度は我々のような小さなギルドへとご依頼くださり、誠に光栄に存じます」
王都についた俺たち『バイデント』の主要メンバー五人は、王都につくなり情報を集めたが、その際にちょうどバイデント王都支部に王太子の旅の護衛依頼が舞い込んだ。
なんで王族の用事に傭兵なんて雇おうとしたのかはわからないが、他の傭兵ギルドもいくつか依頼を出していたようなので、俺たちだけが特別と言うわけではないようだった。
相談の結果、多少疑問なところもあったが、王族と繋がりを作るためにも受けることにした。
「ああ。此度の旅、護衛を任せるぞ」
「はっ!」
護衛開始の前に各傭兵ギルドのリーダーをの面談を行うという不思議なことをしていた王太子だったが、話自体は大したことなく終わった。
長居することでもないので俺は王太子の前から離れようとしたのだが、その去り際。王太子が俺にだけ聞こえる声で小さく呟いた。
「それから——後ほど話がある、『三叉槍の配下』よ」
「っ!」
三叉槍の配下。その言葉が意味するのは、俺たちにアルフレッド様の手が入っていることを知っているということだ。
なぜ知っているのか。なぜ知っていながら俺たちを呼んだのか。俺たちを呼んだと言うことは何か目的があるのか。敵なのか味方なのか。
そう考え、仲間達と話をしたが、結局は王太子の考えがわからず、それでも話に答えないわけにはいかないので、誘いに応じることにした。
「——それでは、現在はシルル姫が調査を行なっているということでしょうか?」
王太子からの話を聞いてみると、どうやらそういう事らしい。
この王太子は、本当の意味でボスと仲が良かったらしく、突然の廃嫡騒動と、その原因となった事件について妹姫と共にいまだに探り続けているのだそうだ。
「そうだ。すでにいくつか候補を絞ってあり、あいつの執念があれば近いうちに実行犯は判明するであろう」
俺たちが調べるよりも、王族が調べたほうが調査自体は早く終わるだろう。だから、その時は俺たちにも教えてもらうことはできないだろうか。
「もし判明した際には、お前達にも知らせよう」
そう思っていたら、まさか王太子の方からそんな言葉がかけられた。
「でしたら! その討伐も我々にお任せください!」
「それはならん。そのためにはお前達に実績がない」
王太子の言葉に反論したかったが、実績がないのは事実だ。俺たちは新進気鋭のギルドとはいえ、それはトライデン領での話であり、王都ではまだほとんど実績らしい実績がない。王族の行動に呼んでもらえるほどの立場ではないのだ。
……仕方ない。相手の正体さえ教えてもらったら、あとは俺たちが勝手に動くか。その結果王都ではお尋ね者になるかもしれないが、それがどうした。
だが、そんな俺の考えは無駄なものになった。
「故に、此度の旅にて、しかと成果を出せ。私に怪我を負わせることなく、なおかつ行程に遅れが生じなければ、最低限の参加資格として認めさせることはできるだろう」
「ありがとうございます! 全力でお守りさせていただきます!」
どうやらこの王太子、最初からそのつもりだったようだ。おそらく、今回いろんなギルドを読んで護衛をさせたのも、このためなんじゃないだろうか? 協力するにしても、その他大勢だった俺たちだけをいきなり呼ぶのは角が立つし、怪しい。
だが、ここで結果を出して『使える存在』だと言えるような状態になれば、今後王太子が俺たちを使おうとしてもおかしくはない。
「というわけだ。お前ら、何があっても失敗するんじゃないぞ」
「はっ。そりゃあミスるわけにはいかねえな。てめえらへますんじゃねえぞ」
「生意気言ってんじゃないってば、ポチ。今回ばかりは、誰にも言われなくっても失敗なんてするつもりはないよ。禁忌だろうとなんだろうと、全力でやるから」
「そうね。別に全力でやる必要はないんだろうけど、今回ばかりは万に一つのミスもできないしね。そんなことになったら私は私自身を許せないもの」
「ですが皆さん、あまり力を入れすぎないように。無駄な力みは失敗の元です。成功することを神に祈りつつ、ほどほどの力と緊張感で頑張りましょう」
王太子との話を終えて自分達の野営場所へと戻り、仲間達に話したのだが、全員やる気に満ちた表情になった。当たり前だ。逆の立場だったら俺でも同じようになる。それだけ今回のボスの敵ってのは俺たちにとって重要なものなんだから。
ただ、リーラの言葉もわかる。俺は凡人だからともかく、フレネルあたりは『禁忌』を使用して全力を出せば護衛対象すら巻き込んでしまい、逆に怪我をさせかねない。
「祈りだあ? お前、こんな時に聖職者みたいなこと言うなよ」
今の会話の中で、神に祈ると言う言葉が好きではなかったのか、ボーチは嫌そうに顔を顰めながらリーラのことを見た。
「教会からは見捨てられましたが、これでも心は聖職者のつもりですから」
「神様に祈ってなんになるのって感じがするけどねー」
リーラの言葉にフレネルが反応したが、他の三人も同じような態度だ。かく言う俺も、神様なんて信じちゃいない。いや、いることはいるのかもしれないが、そいつが俺たちを救ってくれる存在だとは思っちゃいない。
「祈りというのは、神に頼むことを言うのではありません。自身の覚悟を神に誓うものです。こういうことをするから見守っていてください、と」
「でも、見ててもらっても意味ないでしょ」
「アルフレッド様に喜んで欲しいではありませんか」
……? なんで今ボスの名前が出てくるんだ? 神についての話だっただろ?
「……ああ、神ってそっち。教会の神じゃなくって、ボスが神なのね」
「それ以外に神がいますか?」
「いないな。俺たちにとっては、ボスが神様だってのは間違いじゃないか」
どうやらリーラの信仰心は俺たちを助けてくれなかった無能な神ではなく、地獄だと思い込んでいた状況から救い出してくれたボスへのものになっていたようだ。
今までリーラと一緒に行動していても、ちゃんとした信徒をやっていたので信仰心については疑問に思ったことはなかった。精々が、まだ信徒やってんのか、って思ったことがあるくらいなものだ。
でも、そういえば教会の行事に参加するところは見かけても、教会で祈ってる姿は見たことがないな。
しかしそうなると、今までのこいつの聖職者らしい言動と信仰は、全部ボスに対してのものだったのか。……リーラって結構やべえ奴になってんじゃねえのか? いや別にいいけどよ……。
「なんでもいいが、油断はするなよ? 虫の一匹だろうと王太子に近づけるな」
そう話をまとめ、俺たちはその話終えた直後から、何があっても守り抜くことができるように……いや、そもそも何か起こる前に対処すべく、全力で護衛の任務を務めていった。
そうして途中で何度か魔物の襲撃が起こりそうになったが、その全てを事前に察知し、処理していったため、王太子一行は一度も泊まることができずに目的の街へと着くことができた。
街についたあとは一月ほど街で起こった異変とやらを調査し、また帰路の護衛となったのだが、その間も問題一つ起こすことなく護衛を終えた。
「——今回は助かった。まさか、一度も馬車を止めることなく進めるとはな。予定通りどころか、予定よりも早く終わらせることができた」
「お役に立つことができたのであれば、よかったです」
「ああ。約束は守る。正確にいつとは言えないがな」
「承知してます。わかった時が来たら約束を守っていただければそれで」
まだ調査中の事なのだから、いつ話せると約束できるわけがない。それでも、わかったら教えてもらえると約束してもらえただけで十分だ。
それからしばらくは自分達でも調査を進めていたのだが、ある日また王太子に呼び出されることとなった。
もしや前回の約束を果たしてもらえるのだろうか、と思ったのだが、どうなることか……。
「——また呼び立ててすまんな」
「いえ。王太子殿下からのお呼びとあれば。……それで、今回は以前の〝約束〟の件でしょうか?」
「その件に関係することだが、お前達に問いたい。主の敵を討つのと、主の元へ駆けつけるのであれば、どちらを選ぶ?」
「それは……もしや見つけられたのですか!?」
「おそらく、ではあるがな。だが、私たちはまだそこへ向かわないことにした」
「それは……なぜなのかお聞きしてもよろしいでしょうか?」
今まで友人であるアルフレッド様を探すために動いていたのに、その居場所を見つけても動かないと言うのはどう言うつもりだ?
「簡単な話だ。またあいつの敵を処理していない」
「敵と言うと……例の襲撃犯ですか」
「そうだ。奴らを処理するまで、あいつに合わせる顔がないからな。それで、お前達はどうする? 私たちのように気にかける義理などないのだから、居場所を知ってすぐに向かっても良いと思うが?」
確かに、俺たちは襲撃犯をどうこうしてから行かないといけない、なんて義理はない。アルフレッド様の居場所がわかったんだったら、すぐに行くべきなんだろう。
だが……
「……王太子殿下に同行させていただければと思います」
考えた末、俺はそう答えを出すことにした。
「良いのか?」
「はい。主人の敵がいるのを知りながら、それを討たずに主人の元へ向かうのは間違っていると思いますので」
できる事ならばすぐにでもあのいじっぱりで強く優しいボスの元へと向かいたい。それは俺だけではなく『バイデント』の奴らもそうだろう。
だが、それは俺たちがそう思っているだけで、ボスの敵を見つけることができたのであればそちらに向い、処理をするのが配下の役目というものだろう。
だから、俺はボスのところへと向かうのではなく、王太子達と共にボスの敵を倒すために行動することにした。
「そうか。であれば、此度も依頼を出そう。護衛になるか、討伐の人員となるかはその時次第だがな」
「はいっ! 喜んでお受けさせていただきます!」
「いつでも動けるように予定を空けておけ」
「今日にでも出ることができます!」
「それは頼もしい限りだが、流石にこちらの準備ができていない。敵の所属が判明したと言っても、それに繋がっているその他の組織や、敵の動向、規模などを完璧に把握しているわけではない。まだ調査や根回しには時間がかかる。それまでに整えておいてくれ」
「はい。承知いたしました!」
そうして俺は仲間へと今日の話を伝え、ボスの敵を倒すべく気を吐く仲間達を宥めながらいつでも王太子の呼びかけに答えられるように準備をし始めた。
王都についた俺たち『バイデント』の主要メンバー五人は、王都につくなり情報を集めたが、その際にちょうどバイデント王都支部に王太子の旅の護衛依頼が舞い込んだ。
なんで王族の用事に傭兵なんて雇おうとしたのかはわからないが、他の傭兵ギルドもいくつか依頼を出していたようなので、俺たちだけが特別と言うわけではないようだった。
相談の結果、多少疑問なところもあったが、王族と繋がりを作るためにも受けることにした。
「ああ。此度の旅、護衛を任せるぞ」
「はっ!」
護衛開始の前に各傭兵ギルドのリーダーをの面談を行うという不思議なことをしていた王太子だったが、話自体は大したことなく終わった。
長居することでもないので俺は王太子の前から離れようとしたのだが、その去り際。王太子が俺にだけ聞こえる声で小さく呟いた。
「それから——後ほど話がある、『三叉槍の配下』よ」
「っ!」
三叉槍の配下。その言葉が意味するのは、俺たちにアルフレッド様の手が入っていることを知っているということだ。
なぜ知っているのか。なぜ知っていながら俺たちを呼んだのか。俺たちを呼んだと言うことは何か目的があるのか。敵なのか味方なのか。
そう考え、仲間達と話をしたが、結局は王太子の考えがわからず、それでも話に答えないわけにはいかないので、誘いに応じることにした。
「——それでは、現在はシルル姫が調査を行なっているということでしょうか?」
王太子からの話を聞いてみると、どうやらそういう事らしい。
この王太子は、本当の意味でボスと仲が良かったらしく、突然の廃嫡騒動と、その原因となった事件について妹姫と共にいまだに探り続けているのだそうだ。
「そうだ。すでにいくつか候補を絞ってあり、あいつの執念があれば近いうちに実行犯は判明するであろう」
俺たちが調べるよりも、王族が調べたほうが調査自体は早く終わるだろう。だから、その時は俺たちにも教えてもらうことはできないだろうか。
「もし判明した際には、お前達にも知らせよう」
そう思っていたら、まさか王太子の方からそんな言葉がかけられた。
「でしたら! その討伐も我々にお任せください!」
「それはならん。そのためにはお前達に実績がない」
王太子の言葉に反論したかったが、実績がないのは事実だ。俺たちは新進気鋭のギルドとはいえ、それはトライデン領での話であり、王都ではまだほとんど実績らしい実績がない。王族の行動に呼んでもらえるほどの立場ではないのだ。
……仕方ない。相手の正体さえ教えてもらったら、あとは俺たちが勝手に動くか。その結果王都ではお尋ね者になるかもしれないが、それがどうした。
だが、そんな俺の考えは無駄なものになった。
「故に、此度の旅にて、しかと成果を出せ。私に怪我を負わせることなく、なおかつ行程に遅れが生じなければ、最低限の参加資格として認めさせることはできるだろう」
「ありがとうございます! 全力でお守りさせていただきます!」
どうやらこの王太子、最初からそのつもりだったようだ。おそらく、今回いろんなギルドを読んで護衛をさせたのも、このためなんじゃないだろうか? 協力するにしても、その他大勢だった俺たちだけをいきなり呼ぶのは角が立つし、怪しい。
だが、ここで結果を出して『使える存在』だと言えるような状態になれば、今後王太子が俺たちを使おうとしてもおかしくはない。
「というわけだ。お前ら、何があっても失敗するんじゃないぞ」
「はっ。そりゃあミスるわけにはいかねえな。てめえらへますんじゃねえぞ」
「生意気言ってんじゃないってば、ポチ。今回ばかりは、誰にも言われなくっても失敗なんてするつもりはないよ。禁忌だろうとなんだろうと、全力でやるから」
「そうね。別に全力でやる必要はないんだろうけど、今回ばかりは万に一つのミスもできないしね。そんなことになったら私は私自身を許せないもの」
「ですが皆さん、あまり力を入れすぎないように。無駄な力みは失敗の元です。成功することを神に祈りつつ、ほどほどの力と緊張感で頑張りましょう」
王太子との話を終えて自分達の野営場所へと戻り、仲間達に話したのだが、全員やる気に満ちた表情になった。当たり前だ。逆の立場だったら俺でも同じようになる。それだけ今回のボスの敵ってのは俺たちにとって重要なものなんだから。
ただ、リーラの言葉もわかる。俺は凡人だからともかく、フレネルあたりは『禁忌』を使用して全力を出せば護衛対象すら巻き込んでしまい、逆に怪我をさせかねない。
「祈りだあ? お前、こんな時に聖職者みたいなこと言うなよ」
今の会話の中で、神に祈ると言う言葉が好きではなかったのか、ボーチは嫌そうに顔を顰めながらリーラのことを見た。
「教会からは見捨てられましたが、これでも心は聖職者のつもりですから」
「神様に祈ってなんになるのって感じがするけどねー」
リーラの言葉にフレネルが反応したが、他の三人も同じような態度だ。かく言う俺も、神様なんて信じちゃいない。いや、いることはいるのかもしれないが、そいつが俺たちを救ってくれる存在だとは思っちゃいない。
「祈りというのは、神に頼むことを言うのではありません。自身の覚悟を神に誓うものです。こういうことをするから見守っていてください、と」
「でも、見ててもらっても意味ないでしょ」
「アルフレッド様に喜んで欲しいではありませんか」
……? なんで今ボスの名前が出てくるんだ? 神についての話だっただろ?
「……ああ、神ってそっち。教会の神じゃなくって、ボスが神なのね」
「それ以外に神がいますか?」
「いないな。俺たちにとっては、ボスが神様だってのは間違いじゃないか」
どうやらリーラの信仰心は俺たちを助けてくれなかった無能な神ではなく、地獄だと思い込んでいた状況から救い出してくれたボスへのものになっていたようだ。
今までリーラと一緒に行動していても、ちゃんとした信徒をやっていたので信仰心については疑問に思ったことはなかった。精々が、まだ信徒やってんのか、って思ったことがあるくらいなものだ。
でも、そういえば教会の行事に参加するところは見かけても、教会で祈ってる姿は見たことがないな。
しかしそうなると、今までのこいつの聖職者らしい言動と信仰は、全部ボスに対してのものだったのか。……リーラって結構やべえ奴になってんじゃねえのか? いや別にいいけどよ……。
「なんでもいいが、油断はするなよ? 虫の一匹だろうと王太子に近づけるな」
そう話をまとめ、俺たちはその話終えた直後から、何があっても守り抜くことができるように……いや、そもそも何か起こる前に対処すべく、全力で護衛の任務を務めていった。
そうして途中で何度か魔物の襲撃が起こりそうになったが、その全てを事前に察知し、処理していったため、王太子一行は一度も泊まることができずに目的の街へと着くことができた。
街についたあとは一月ほど街で起こった異変とやらを調査し、また帰路の護衛となったのだが、その間も問題一つ起こすことなく護衛を終えた。
「——今回は助かった。まさか、一度も馬車を止めることなく進めるとはな。予定通りどころか、予定よりも早く終わらせることができた」
「お役に立つことができたのであれば、よかったです」
「ああ。約束は守る。正確にいつとは言えないがな」
「承知してます。わかった時が来たら約束を守っていただければそれで」
まだ調査中の事なのだから、いつ話せると約束できるわけがない。それでも、わかったら教えてもらえると約束してもらえただけで十分だ。
それからしばらくは自分達でも調査を進めていたのだが、ある日また王太子に呼び出されることとなった。
もしや前回の約束を果たしてもらえるのだろうか、と思ったのだが、どうなることか……。
「——また呼び立ててすまんな」
「いえ。王太子殿下からのお呼びとあれば。……それで、今回は以前の〝約束〟の件でしょうか?」
「その件に関係することだが、お前達に問いたい。主の敵を討つのと、主の元へ駆けつけるのであれば、どちらを選ぶ?」
「それは……もしや見つけられたのですか!?」
「おそらく、ではあるがな。だが、私たちはまだそこへ向かわないことにした」
「それは……なぜなのかお聞きしてもよろしいでしょうか?」
今まで友人であるアルフレッド様を探すために動いていたのに、その居場所を見つけても動かないと言うのはどう言うつもりだ?
「簡単な話だ。またあいつの敵を処理していない」
「敵と言うと……例の襲撃犯ですか」
「そうだ。奴らを処理するまで、あいつに合わせる顔がないからな。それで、お前達はどうする? 私たちのように気にかける義理などないのだから、居場所を知ってすぐに向かっても良いと思うが?」
確かに、俺たちは襲撃犯をどうこうしてから行かないといけない、なんて義理はない。アルフレッド様の居場所がわかったんだったら、すぐに行くべきなんだろう。
だが……
「……王太子殿下に同行させていただければと思います」
考えた末、俺はそう答えを出すことにした。
「良いのか?」
「はい。主人の敵がいるのを知りながら、それを討たずに主人の元へ向かうのは間違っていると思いますので」
できる事ならばすぐにでもあのいじっぱりで強く優しいボスの元へと向かいたい。それは俺だけではなく『バイデント』の奴らもそうだろう。
だが、それは俺たちがそう思っているだけで、ボスの敵を見つけることができたのであればそちらに向い、処理をするのが配下の役目というものだろう。
だから、俺はボスのところへと向かうのではなく、王太子達と共にボスの敵を倒すために行動することにした。
「そうか。であれば、此度も依頼を出そう。護衛になるか、討伐の人員となるかはその時次第だがな」
「はいっ! 喜んでお受けさせていただきます!」
「いつでも動けるように予定を空けておけ」
「今日にでも出ることができます!」
「それは頼もしい限りだが、流石にこちらの準備ができていない。敵の所属が判明したと言っても、それに繋がっているその他の組織や、敵の動向、規模などを完璧に把握しているわけではない。まだ調査や根回しには時間がかかる。それまでに整えておいてくれ」
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そうして俺は仲間へと今日の話を伝え、ボスの敵を倒すべく気を吐く仲間達を宥めながらいつでも王太子の呼びかけに答えられるように準備をし始めた。
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