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懐かしい故郷
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――◆◇◆◇――
「――領地に帰ってくるのも久しぶりね。……ああ、領地自体はとっくに帰ってきてたわね」
ようやく遠目に領都の外壁が見えるようになってきたけど、〝領地〟というのなら昨日立ち寄った村もうちの領地の一部だから、領地自体はとっくに帰ってきていたと言える。
けど、私にとってのティックナー領というのは、やっぱりこの街だ。普通の令嬢なら壁を外から見る機会なんてそんなないんだろうけど、良く外に抜け出していた私には見慣れたもの。ただ……
「でも、何だか結構変わったのね。……まあ、当然か。開発が始まってからもう四年になるんだし」
久しぶりに見ることのできた街の光景は、懐かしいはずなのにどこか違和感というか、馴染みのなさがある。
けどそれは私のいない四年の間に開発が進んだことによる変化であり、領地や領民たちにとっていいことであるのは間違いないんだから喜ぶべきことなんだろうと思う。
「街に入る列も、前はこんなに長くなかったのにねー」
敵国との国境が近い辺境方面の領地なだけあって、この街に入る際に並ぶ人の列もそんなに長くはなかった。なんだったらそのまま止まることなく入る事すらできた時もあったほどだ。
けどそれが今はどうだ。この人数を待つのかとちょっとうんざりしたくなるほど並んでいる。
それでも王都に比べれば全然人がいないんだろうけど、それでも今までを知っているだけに多く感じてしまう。
「身分証を提示ください」
「こちらでいいかしら?」
ようやく私の番となり、街に入るために審査を受けることになったんだけど、身分証なんて持ってたっけ?
とりあえず迷いながらも出したのは、ティックナー家を表す紋章の入ったナイフ。普通の貴族の子女ならこんなナイフじゃなくてハンカチとか出すし、そもそも街にはいる時は馬車に乗ってるだろうからそっちに紋章が記されているため、特にものを提示することはないけど、今の私は一人旅。馬車なんて当然ないし、ハンカチよりもナイフの方が取り出しやすい。
「こ、これは……も、もしかしてルーナリアお嬢様!?」
最初はナイフを出してきたことを訝しんでいた門兵だったけど、そこに記されている紋章を確認するなり慌てたように目を見開いて叫んだ。
当たり前のことではあるけど、門兵をやっているだけあって自分のところの領主の紋章くらいは覚えているみたいね。よかった。これで覚えていなかったらどうしようかと思った。
「ええ。入ってもいいかしら?」
「え、あ、は、はい! お通りください!」
「ありがとう。ああ、そうそう。最近のお仕事はどうかしら? この街も随分変わったでしょう? 何かおかしな出来事とかはなかった?」
「お、おかしな出来事ですか? えっと……ま、まあ人通りが増えましたね。それから……あっ!」
「なにを言っても咎めないから、好きに言ってちょうだい」
普通の貴族であればこんなこと聞かないんだろうけど、現場の声って重要だし聞かない理由が分からない。まあ、聞かれる兵士としては突然のことだし驚くからやめてほしいと思うかもしれないけど。
「えっとその……わ、我々も対処しているのですが、これまでの状況との変化に対応しきれず、一部治安の悪化が見られています……」
「治安……まあ、いきなり人が増えればそうなるのも仕方ないわね」
この街だけではなく、うちの領地全体が開発によって栄え始めたんだから人が多くなるのは当然で、人が多くなれば問題が起こるのも当然。だから仕方ない面はあるんだろうけど、だからといって放置し続けるわけにもいかない。
んー……これはちょっと詳しく調べた方がいいかもしれないかな。
「ありがとう。門衛は単調でつまらないと感じると思うけれど、大事な仕事よ。これからも頑張ってちょうだい」
「は、はいッ! ありがとうございます!」
敬礼をして私の事を見送る門兵に背を向け、私は悠々と街の中へ入っていった。
「……治安の悪化かぁ。すぐに解決できるといいんだけどなぁ」
以前の私の知っている街並みとはどこか変わった故郷の風景を眺めつつ、無理だろうなと思いながらも期待する様に呟き、屋敷へと進んで行った。
「――領地に帰ってくるのも久しぶりね。……ああ、領地自体はとっくに帰ってきてたわね」
ようやく遠目に領都の外壁が見えるようになってきたけど、〝領地〟というのなら昨日立ち寄った村もうちの領地の一部だから、領地自体はとっくに帰ってきていたと言える。
けど、私にとってのティックナー領というのは、やっぱりこの街だ。普通の令嬢なら壁を外から見る機会なんてそんなないんだろうけど、良く外に抜け出していた私には見慣れたもの。ただ……
「でも、何だか結構変わったのね。……まあ、当然か。開発が始まってからもう四年になるんだし」
久しぶりに見ることのできた街の光景は、懐かしいはずなのにどこか違和感というか、馴染みのなさがある。
けどそれは私のいない四年の間に開発が進んだことによる変化であり、領地や領民たちにとっていいことであるのは間違いないんだから喜ぶべきことなんだろうと思う。
「街に入る列も、前はこんなに長くなかったのにねー」
敵国との国境が近い辺境方面の領地なだけあって、この街に入る際に並ぶ人の列もそんなに長くはなかった。なんだったらそのまま止まることなく入る事すらできた時もあったほどだ。
けどそれが今はどうだ。この人数を待つのかとちょっとうんざりしたくなるほど並んでいる。
それでも王都に比べれば全然人がいないんだろうけど、それでも今までを知っているだけに多く感じてしまう。
「身分証を提示ください」
「こちらでいいかしら?」
ようやく私の番となり、街に入るために審査を受けることになったんだけど、身分証なんて持ってたっけ?
とりあえず迷いながらも出したのは、ティックナー家を表す紋章の入ったナイフ。普通の貴族の子女ならこんなナイフじゃなくてハンカチとか出すし、そもそも街にはいる時は馬車に乗ってるだろうからそっちに紋章が記されているため、特にものを提示することはないけど、今の私は一人旅。馬車なんて当然ないし、ハンカチよりもナイフの方が取り出しやすい。
「こ、これは……も、もしかしてルーナリアお嬢様!?」
最初はナイフを出してきたことを訝しんでいた門兵だったけど、そこに記されている紋章を確認するなり慌てたように目を見開いて叫んだ。
当たり前のことではあるけど、門兵をやっているだけあって自分のところの領主の紋章くらいは覚えているみたいね。よかった。これで覚えていなかったらどうしようかと思った。
「ええ。入ってもいいかしら?」
「え、あ、は、はい! お通りください!」
「ありがとう。ああ、そうそう。最近のお仕事はどうかしら? この街も随分変わったでしょう? 何かおかしな出来事とかはなかった?」
「お、おかしな出来事ですか? えっと……ま、まあ人通りが増えましたね。それから……あっ!」
「なにを言っても咎めないから、好きに言ってちょうだい」
普通の貴族であればこんなこと聞かないんだろうけど、現場の声って重要だし聞かない理由が分からない。まあ、聞かれる兵士としては突然のことだし驚くからやめてほしいと思うかもしれないけど。
「えっとその……わ、我々も対処しているのですが、これまでの状況との変化に対応しきれず、一部治安の悪化が見られています……」
「治安……まあ、いきなり人が増えればそうなるのも仕方ないわね」
この街だけではなく、うちの領地全体が開発によって栄え始めたんだから人が多くなるのは当然で、人が多くなれば問題が起こるのも当然。だから仕方ない面はあるんだろうけど、だからといって放置し続けるわけにもいかない。
んー……これはちょっと詳しく調べた方がいいかもしれないかな。
「ありがとう。門衛は単調でつまらないと感じると思うけれど、大事な仕事よ。これからも頑張ってちょうだい」
「は、はいッ! ありがとうございます!」
敬礼をして私の事を見送る門兵に背を向け、私は悠々と街の中へ入っていった。
「……治安の悪化かぁ。すぐに解決できるといいんだけどなぁ」
以前の私の知っている街並みとはどこか変わった故郷の風景を眺めつつ、無理だろうなと思いながらも期待する様に呟き、屋敷へと進んで行った。
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https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646
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