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学園編
悲しい前世の話を
しおりを挟むディールの放ったその一言に頷こうとして…アルカティーナは戸惑った。今まで、同胞にそのことを打ち明けることに抵抗を覚えたことはなかったのに、彼に対しては何故か、凄まじい抵抗を感じた。混乱して、色々な感情が入り混じり、アルカティーナの中を駆け巡った。が、最終的にアルカティーナを支配したのは、動揺でも共感でもなかった。
「はい、そうです。わたくしも…」
残ったのは、後ろめたさだった。
今までにもこういったことはあった。
転生者に出会い、前世のことを語り合う。
ただそれだけの話だ。
ただ、それだけの話のはずだ。
それなのに何故か、彼の真っ直ぐな瞳に射抜かれた瞬間、それが全て真っ白になった気がしたのだ。真っ白になってしまった過去に対して、前世に対してアルカティーナが抱かざるを得ない感情こそが、後ろめたさだった。
何故、彼に対してだけこんな感情を抱くのかはわからないけれど。
「…………ぅ…」
痛みに耐えているかのように悲痛に顔を歪めたアルカティーナを見兼ねたのか、ディールがおもむろに立ち上がった。そして、アルカティーナの真正面の席に腰掛ける。
「………アルカティーナ嬢、俺の話を聞いてくれないか」
「…え?」
「俺の、悲しい前世の話を」
ディールは、本当に本当に悲しそうに、笑っていた。アルカティーナは思わず頷く。
「はい……」
ありがとう。
ディールはポツリとそう告げると、語り始めた。
「前世で、俺は大切な人を失ったんだ。目の前で、殺された」
ヒュッと喉を乾いた空気が駆け巡った。
しかし、ディールは構わずアルカティーナに話を振る。
「アルカティーナ嬢には特技はあるかな?」
「えっ…?いえ、わたくしは少し勉強が出来るくらいでそれ以外は何も誇れるものは無くて…」
「………そうか、わかった」
唐突に飛んできた質問に戸惑いつつも答えると、ディールは何故か、酷く哀しげに顔を顰めた。その表情に、アルカティーナの心はざわざわと音を立てる。
「その大切な人というのは、どんな人だったんですか?」
何と無く。本当に何と無く、アルカティーナは尋ねた。純粋な好奇心と共に、騒つく胸に見て見ぬ振りをして。
「その人は…凄い人だった。笑顔がすごく魅力的な子で、いつも周りには人が集まっていた。その子がいるだけで皆んなが穏やかに笑ってた。…不思議な包容力のある子だったよ」
へぇ、とアルカティーナは目を見張った。
世の中には凄い人がいるものだなぁと。
「彼女は何と、頭も良くてな。皆んなに心から慕われていたよ」
「…何だか本当に凄い方ですね」
思わずそう零すと、ディールはさぞ可笑しそうに笑った。
「いや、でも彼女は意外と抜けているというか、ズレているところがあってな。何時もビックリさせられていた気がする」
…何だか、既視感がある。
よく前世で似たようなことを言われていたような…いや、いや、まさかね。
アルカティーナは戸惑いながらも「そうですか」とディールに返した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
遅くなりました、お待たせしました!
ごめんなさい!
多忙につき少し(?)更新速度落ちます。
気長にお付き合いくださいマセマセ。
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