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学園編
お団子ですよ、お団子
しおりを挟むやいのやいのとさわぐディール達を静かに笑みを湛えながら見つめていたアルカティーナだったがふとその状況を不思議に思った。
ディール。ステファラルド。ローザス。
攻略対象3人と悪役1人という豪華キャスト。
ここにスクレリズ先生とチルキ殿下、そしてリサーシャやユーリアがいればロイヤルストレートフラッシュである。
アルカティーナが不思議に感じたのはそのキャストの豪華さに、ではない。悪役である自分と攻略キャラである彼らが当たり前のように話しているという変わった状況についてだ。
ーーこれがずっと続けば良いんですけど…
「あ。すみません、私実はこの後予定がありまして、今日はそろそろ失礼します」
「俺も。今日はロゼリーナ嬢の護衛だから」
弱気になったアルカティーナの心を見透かしたかのようなグッドタイミングで柱時計の鐘が鳴り、2人が席を立った。
「そうか、じゃあ今日は特に仕事もないしこれで解散だな。お疲れ様」
「お疲れ様です」
「お疲れさん」
「あっお疲れ様でした!」
慌てて立ち上がって頭を下げると、彼らはほんわかと柔らかな笑顔でアルカティーナを見つめていた。
「?」
「ふふ、男だらけの場に女性が1人いるだけで花があって癒されますね」
「…だな。なんか良いもんだな、女性がいるってのも」
「ローザスの口から出たとは思えない言葉だな。今日は空からみたらし団子が降ってくるんじゃないか?」
そのディールの言葉にアルカティーナは思わずクスッと笑いを零した。
「何故みたらし団子なんですか?」
「いや、単に好物だからな。降ってきたら良いなと思ったんだ」
「ふふ。わたくしもみたらし団子は好きですよ。でも降ってくることはないと思います」
2人で笑い合っていると、ステファラルドとローザスが何やら微妙な、何ともいえないような表情で顔を見合わせていることに気がついた。何かと思っていると、ローザスが痺れを切らしたように、
「あー…みたらし団子?って何だ?」
尋ねてきた。
ひゅっと息を飲んだディールには気がつかず、アルカティーナは何気なく答える。
「え?ご存知ないです?お団子ですよ、お団子。典型的な和菓…」
今度は、アルカティーナが息を飲む番だった。驚愕に満ちた表情で、自分の口を塞ぐディールを見上げる。だが、当のディールはそれをまるっと無視した。
「2人とも、そんなことより早く行かなくて良いのか?用事があるんだろう」
「あっそうだった。じゃ」
軽く手を上げて、ローザスはあっさりと退室した。だが、ステファラルドはその場を動かず、暫く意味深な視線でディールとアルカティーナを交互に見て、それから漸く綺麗にお辞儀をして退室した。
それを見届けてから、ディールはようやくアルカティーナの口を塞いでいた手を離した。
「失礼。いきなり悪かったね」
「い…いえ」
気まずい沈黙。
いくらアルカティーナでも、一国の王子といきなり2人きりは精神的にくるものがあった。 が、それを妨げるように、唐突にディールが言葉を発した。
「和菓子」
「…」
「和菓子、好きだったんだ」
「…何故、過去形なんですか?」
「だってもう食べられないじゃないか」
そこまできて、ようやく。
アルカティーナは悟った。
何故彼が自分の口を塞いだのか。
何故ステファラルドが自分たちをじっと見つめていたのか。
「…アルカティーナ嬢。私は…いや、俺は」
「転生者、ですよね?」
そうなんでしょう?
首を傾げ尋ねるアルカティーナに、ディールは小さく息を吐いた。
「お前もだろう?」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
チルキ殿下に引き続き、今回はディール様のターンです。
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