公爵様、地味で気弱な私ですが愛してくれますか?

みるくコーヒー

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第12話 Meet

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 この前のアルメリア公爵家のパーティーでの出来事が頭の中から離れない。

 アレク様と女性がキスをしている、あの光景。忘れたいのに、ことあるごとに頭を過ぎる。

 そうして、私は現実逃避をするようにネイト侯爵と会うようになった。
 ただ、週に2,3度カフェで会ってお茶をするだけ。その中で、彼は私を肯定してくれる。

 わかっている、私がこうしていることは何の解決にもなっていないし、逃げているだけだと。
 あの女性は誰なのか、とアレク様に問いかけるべきなのだろうと。

 だけれど、もしもアレク様から直接その女性を愛人だと紹介されたら、私は今度こそ心が折れてしまうだろう。

「やぁ、待たせたかな?」

 軽快に登場したネイト侯爵に私はニコリと笑みを浮かべて首を振った。

「仕事は忙しくはないのですか?」
「ほんの1時間、君と話したところで何の支障もないよ。」

 ネイト侯爵は余裕の表情をしながら、口の片端をあげてこちらをみた。

「それなら良いのだけど。」

 私がそう言うと、侯爵は満足そうに紅茶を飲む。

 私がここに来ることを私の従者はよく思っていない。現に、外で私を待つ従者は心配そうにこちらを見ている。

 ジェラルだ。

 彼は、私がネイト侯爵に会う度に綺麗な顔を歪ませる。
 当たり前か、自分の主人の妻が他の男と堂々と会っているのだから。

 だけれど、ジェラルは絶対に私についてくる。それは、アレク様の命令なのだろうか。

 彼が私についているのだから、アレク様に私がネイト侯爵と会っていることは伝わっているのだろう。
 それだというのに、アレク様は私に何も言わない。やはり、私に興味なんてないんだ。

「そんなに険しい顔をしたら、シワが出来てしまうよ?」

 その言葉に、私はハッとして考えることをやめた。

「ロベルタ公爵から何か言われたかい?」
「いえ、何も。」

 私がそう言うと、ネイト侯爵が一瞬目を細めたように見えた。
 少し眉根をよせて、まるで何も言われないことが気に入らないように。

 いや、きっと見間違いだ。

「ほら、僕は君のことがとても心配だから。何かあったらすぐにでも相談して欲しいんだ。」

 彼のその言葉が本心からなのか、私にはわからない。正直、そんなことはどうだって良い。

 私のことを気にかけてくれる人がいるんだ、という事実だけが私の心を落ち着かせている。

 笑顔のその裏側でなにを考えているかなんて、知ったことではない。

 彼は私を利用し、そして私もまた彼を利用しているのだ。

「ね?」

 ネイト侯爵は私の左手に手を重ねて、同意を求めるようにこちらをジッと見つめる。

 私は小さく笑みを浮かべただけで、何も言葉を返さずにいた。

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