公爵様、地味で気弱な私ですが愛してくれますか?

みるくコーヒー

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teeM 話21第

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「今日もティミリアはネイト侯爵と会っていたか……。」

 俺はジェラルの報告を受けて、ため息をついた。

 アルメリア公爵家でのパーティー以降、ティミリアは頻繁にネイト侯爵と会うようになった。

 カフェで会って1時間ほど話をして解散をする。それだけだ。
 何もやましいことはしていない。
 友人同士の茶会だと言われればそれまでだ。

 だけれど、このもやもやする気持ちを一体どうしたら良いのだろう。
 愛人を作っても良い、と言った手前口出しなどできない。彼女がネイト侯爵を好きだというのならば許容すべきだ。

 ただ、心配くらいはしても良いだろう。正直なところ、ネイト侯爵には良い印象がない。

 妻であるロレッタ・ネイトを結婚当初から放置して、様々な女性と行為を持っていたという事実は貴族男性の間では有名な話だ。

 結果として、ロレッタ・ネイトは外に愛人を作りお互い利害のもと夫婦をしているらしい。

 ネイト侯爵は自身に愛人はいない、と公言している。それは間違っていない、特定の愛人作らず女性間を渡り歩いているだけなのだから。

 ティミリアは必ず傷つくだろう。

 でも、どう伝えるべきなのだろう?
 正直に言ったところで、信じてくれるのだろうか。

 いや、正直に伝えても良いのだろうか。またここにきて、母の言葉が俺を苦しめる。

 俺たちは上手くいき始めていたはずなのに、一体どこで間違えたのか。

「そろそろ調べはついたか?」
「はい……。」

 返事をするジェラルの顔は暗かった。
 俯いてこちらを見ようとしない。

 俺はジェラルへ彼女が侯爵に会いに行く際には必ず護衛につくと共に、ネイト侯爵について調べるように命じていた。

 表情から察するに、良い報告ではないのだろう。

「僕の報告は、きっと奥さまを傷つけてしまいます。」

 ジェラルは、何故か初めからティミリアへの好感度が高く、彼女のために尽くそうとしていた。

 今も心底彼女を気にかけている。

「もしも報告をしなければ、もっと悪い事態になるとは思わないのか?」

 ジェラルは下唇をぐっと噛んでから、意を決したようにこちらを見た。

「侯爵は奥さまに近づいて、アレクセン様を失脚させようとしているようです。」

 やはり、と俺は目を伏せた。

 何となく予想はついていた、彼は以前から俺を退けようとした。そうして、俺の位置に立とうとしたのだ。一侯爵家のくせに何と浅ましいことか。

「ネイト侯爵は、ティミリアを利用しようとしているのか。」

 真正面からくるのならば、いくらでも勝負を買おう。しかし、ティミリアを利用することは許せない。

 彼女は人一倍繊細だ。
 傷つけたくない、傷ついて欲しくない。

 ジェラルはこちらに視線を向けずに、まだ浮かない顔をしていた。

「……まだ何があるのか?」

 ジェラルは、コクリと小さく頷いて写真を一枚見せた。

「これは!?」

 ネイト侯爵が親しげに話す相手、それは裏組織では有名な人間だ。

 彼が裏組織と繋がっているという決定的な証拠。

「良くこれが手に入ったな。」
「情報ギルドがネイト侯爵に目を付けていて撮れた写真のようです。撮った本人は消されたようですが、写真は死守でき情報として売られています。」

 ということは、騎士団が動くのも時間の問題か。わざわざ、我々が動く必要はない。

 だが、ティミリアを今のうちに遠ざけておかないと後々巻き込まれてしまいそうだ。
 最悪、彼の悪事に絡んでしまうかもしれない。

「きっと、上手い理由でも考えて会わないようにさせることが最善なんだろう。」
「僕も、そう思います。」

 だが、もしも嘘だとバレたら?
 あとで侯爵の思惑や正体を知ったら?

 もっと傷ついてしまう。
 正直に話してわかってもらう方が最善なのでは?

 傷ついてしまうかもしれない。
 だけれど、俺がその傷を癒すことは出来ないだろうか。今こそ、彼女の夫として支えるべきではないだろうか。

「俺は彼女に全てを伝える。」
「アレクセン様!?」

 ジェラルは、やめて欲しいと懇願するようにこちらを見つめる。

 いつだって、何も考えていない訳ではない。考えた上で、相手を思った上で失敗してしまう。

 今回も失敗してしまうかもしれない。

 だけれど、彼女には下手な嘘をつきたくない。いつだって正直でいたい。

 俺は、そんな夫婦でいたいのだ。
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