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第13話 Talk
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「話がある。」
アレク様に唐突に言われ、私は困惑しながらもそれに応じた。
彼女のことを打ち明けられるのか、それとも私に苦言を呈してくるのか。
「……どうぞ。」
私は彼を部屋に招き入れ、椅子に座り対面した。アレク様が使用人に部屋から出るように命じたことで、部屋には私と彼の2人だけになった。
「話とは、何でしょうか?」
私はアレク様に問いかける。
また、下を向いてる。
自分でもそう思ったけれど、もうどうだって良かった。顔を上げたって、辛いことを目にしただけだった。
もう何も見たくない。
「ティミリア、もうネイト侯爵と会うのはよしてくれないか?」
「なぜ、そんなことを言われないとならないのですか?」
自分の低く冷たい声に、自分はこんな声が出せるのかと内心驚く。
「彼は裏組織と繋がっているのだ。彼と一緒にいると君に危害が及ぶかもしれない。」
「そんな、そんなのは、嘘です。」
ネイト侯爵が裏組織と繋がっている?
信じ難い。もしそれが本当だとしてもわざわざ私に伝えるのは心配? きっと違う、自分の妻が捕まることを避けたいのだ、保身のためだ。
「本当だ、信じて欲しい。君のことが心配なんだ。」
嘘だ、それこそ嘘だ。
心配なんてしていないくせに、私のことなんて何とも思っていないくせに。
初めから愛人がいると言えば良かったのに。そうすれば、私はここまで苦しまなかった。
「ネイト侯爵が君に近づくのも、俺を陥れるためなんだ。」
「嘘よ!!」
アレク様の言葉に私は声を荒げて否定した。
「ネイト侯爵は、私を気遣ってくれた。私を肯定してくれた。だけど、貴方は? 私をどれだけ苦しめたと思う?」
感情が溢れ出す、今まで言えなかった言葉が溢れ出す、涙が溢れ出す。
溜め込んでいたものが一気に解放された。そんな感覚だった。
アレク様は驚いて目を見開いてこちらを見ていた。
「貴方は最初から私を見ていなかった。初めて貴方を食事を共にしたあの日、私に何を言ったか覚えていますか? 覚えていないでしょうね。私は、あの言葉に今までずっと苦しめられてきた。忘れたくても忘れられない。」
はは、と笑いさえも零れ落ちる。
「ティミリア。」
アレク様が私の腕に手を伸ばす。
触れた瞬間に私はパシン! とその手を叩いた。
「触らないで。」
明らかな敵意を向けると、アレク様は申し訳なさそうにその手を下ろした。
「貴方には愛人がいるのに、私に何かを言う資格があるの?」
「一体、何の……。」
「惚けないで! アルメリア公爵家のパーティーで、ランさんを探すといって愛人の女性とバルコニーで会っていた! キスまでしていたじゃない!」
アレク様は「違う。」と言いながらこちらを見る。
私は、ここに来てまで誤魔化そうとするアレク様に苛立ちを覚えた。
私はバッと立ち上がる。
「実家に帰ります。」
私は扉に向かって歩き出す。
後ろでアレク様が何かを言っているが、私にはその言葉が何も耳に入ってこなかった。
もう限界だった。
泣き出してしまいそうだったが、アレク様の前で涙を見せたくなくて堪える。
そうして、扉を出てすぐにボロボロと涙が溢れた。
「お、奥さま?」
部屋の近くでそわそわとしている様子のレミーエが私を見た途端におそるおそる声をかけた。
「レミーエ、実家に帰るからすぐに準備してくれる?」
「数日で……お戻りになれるのですよね?」
「さぁ、どうかしらね。」
レミーエの問いかけに私は彼女の顔は見ずに虚空を見つめながら答えた。
そして、私は何も持たずにふらふらと屋敷の外を目指すのだった。
アレク様に唐突に言われ、私は困惑しながらもそれに応じた。
彼女のことを打ち明けられるのか、それとも私に苦言を呈してくるのか。
「……どうぞ。」
私は彼を部屋に招き入れ、椅子に座り対面した。アレク様が使用人に部屋から出るように命じたことで、部屋には私と彼の2人だけになった。
「話とは、何でしょうか?」
私はアレク様に問いかける。
また、下を向いてる。
自分でもそう思ったけれど、もうどうだって良かった。顔を上げたって、辛いことを目にしただけだった。
もう何も見たくない。
「ティミリア、もうネイト侯爵と会うのはよしてくれないか?」
「なぜ、そんなことを言われないとならないのですか?」
自分の低く冷たい声に、自分はこんな声が出せるのかと内心驚く。
「彼は裏組織と繋がっているのだ。彼と一緒にいると君に危害が及ぶかもしれない。」
「そんな、そんなのは、嘘です。」
ネイト侯爵が裏組織と繋がっている?
信じ難い。もしそれが本当だとしてもわざわざ私に伝えるのは心配? きっと違う、自分の妻が捕まることを避けたいのだ、保身のためだ。
「本当だ、信じて欲しい。君のことが心配なんだ。」
嘘だ、それこそ嘘だ。
心配なんてしていないくせに、私のことなんて何とも思っていないくせに。
初めから愛人がいると言えば良かったのに。そうすれば、私はここまで苦しまなかった。
「ネイト侯爵が君に近づくのも、俺を陥れるためなんだ。」
「嘘よ!!」
アレク様の言葉に私は声を荒げて否定した。
「ネイト侯爵は、私を気遣ってくれた。私を肯定してくれた。だけど、貴方は? 私をどれだけ苦しめたと思う?」
感情が溢れ出す、今まで言えなかった言葉が溢れ出す、涙が溢れ出す。
溜め込んでいたものが一気に解放された。そんな感覚だった。
アレク様は驚いて目を見開いてこちらを見ていた。
「貴方は最初から私を見ていなかった。初めて貴方を食事を共にしたあの日、私に何を言ったか覚えていますか? 覚えていないでしょうね。私は、あの言葉に今までずっと苦しめられてきた。忘れたくても忘れられない。」
はは、と笑いさえも零れ落ちる。
「ティミリア。」
アレク様が私の腕に手を伸ばす。
触れた瞬間に私はパシン! とその手を叩いた。
「触らないで。」
明らかな敵意を向けると、アレク様は申し訳なさそうにその手を下ろした。
「貴方には愛人がいるのに、私に何かを言う資格があるの?」
「一体、何の……。」
「惚けないで! アルメリア公爵家のパーティーで、ランさんを探すといって愛人の女性とバルコニーで会っていた! キスまでしていたじゃない!」
アレク様は「違う。」と言いながらこちらを見る。
私は、ここに来てまで誤魔化そうとするアレク様に苛立ちを覚えた。
私はバッと立ち上がる。
「実家に帰ります。」
私は扉に向かって歩き出す。
後ろでアレク様が何かを言っているが、私にはその言葉が何も耳に入ってこなかった。
もう限界だった。
泣き出してしまいそうだったが、アレク様の前で涙を見せたくなくて堪える。
そうして、扉を出てすぐにボロボロと涙が溢れた。
「お、奥さま?」
部屋の近くでそわそわとしている様子のレミーエが私を見た途端におそるおそる声をかけた。
「レミーエ、実家に帰るからすぐに準備してくれる?」
「数日で……お戻りになれるのですよね?」
「さぁ、どうかしらね。」
レミーエの問いかけに私は彼女の顔は見ずに虚空を見つめながら答えた。
そして、私は何も持たずにふらふらと屋敷の外を目指すのだった。
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