2 / 149
枕営業? ウソだろ?
なにこれ、聞いてないよ!
しおりを挟む俺は今、権藤さんの鋼鉄のような体に組み敷かれている。
「ぐ、ぐぇ……」
苦しい……俺の役はまた殺られる役なのか?
「権藤さん、とりあえず台本を……」
権藤さんの下では小学生並の小ささしかない俺。もぞもぞと体を動かして呼吸ができる隙間を探した。
「必要ない。読んだんだろう。その上で来たんじゃないのか? いまさら怖気づいたか」
顔を上げ、俺を見下ろしながら権藤さんが凄む。これはコワイ。かなりキョワイ。
怒らせてしまったかと思うと、体がプルプルと震え出した。でも、権藤さんは意外にも柔らかく頬を緩めた。
あれ? 怒ってないみたい? 良かっ……
「初めてか」
思考が終わる前に権藤さんが問いかけた。
「は、はいっ。きちんとしたのは……すいません」
台本読みのことだよな?
役名がつくのは初めてだから、正式な台本読み合わせはしたことがない。頼りないと思われたかも……恐る恐る顔を見上げると、権藤さんはいたく満足げに頷いている。
「大丈夫だ。一から全て任せろ。優しくしてやる」
「は、はい。お願いします……ひゃうっ」
脈絡もなく、突然権藤さんが俺のバスローブの紐を解き、ごつい手のひらを平らな胸に這わせた。驚きで変な声が漏れる。
「いい声だ。もっと聞きたい」
ほえっ? ちょ、ちょ、ちょ……! いったいなにが起こってるんだ?
権藤さんの手のひらは胸を回し撫で、腹に下り、そして太ももを辿った。
「ひゃっ……」
普段どころか通常、人に触らせることがない場所を、男の分厚い手のひらで撫で回され反応を凝視されている。
得体のしれない気持ち悪さに寒気がして、俺は身をよじらせた。
「感じているのか、かわいいな」
感っ……!? いやいやいやいや違いますから……必死に首を振っているのに、涙目になって震える姿が権藤さんの悦に入ったらしい。
「そんなに目を潤ませて。煽るのが上手いな」
権藤さんの手が俺のボクサーパンツにかかった。
「……!」
抵抗しようにも巨体にのしかかられ、両手首を鋼のような片手で固定されている。優しい言葉の裏で俺を服従下に置こうとしているのがわかり、言葉が喉の奥に詰まった。
───待って。これっていわゆる枕営……あーーーー! パンツぅーーーー!
考えているあいだに、するり、と手際良くパンツが下ろされ、脚から一気に引き抜かれた。
「ご、ご、ご、ごんどさん……」
やっと出た声はヘビに睨まれたカエルの如く、ひしゃげて情けない。
「初めて会った時もそんな声を出していた。チンピラBの役だったな。震えた声がとても良かった。そして死体になる前のあの涙の表情……あれを見た時、悠理の芸も体も俺が開発してやらねばならないという使命感が生まれたんだ」
権藤さんは瞼を閉じて、感慨深げに俺の頬を片手で包んだ。
いやァァァ。待って待って。使命感ってなに? しかも芸だけでなく体の開発? 俺の演技が大御所の性欲まで掘り起こしちゃったってこと!?
「今回、ヤクザの兄貴の俺を慕う弟分と情を交わすシーンがあると聞いて、すぐに悠理を推薦したんだ。受けてくれて嬉しいよ。悠理も同じ気持ちだったんだな」
違います、違いますから! しかも情ってそっちじゃないでしょ!? どうやったらそんな結論に結びつくの!? 権藤さん、思考ヤバイって。とにかくこれはまずい……逃げなきゃ……!
俺は必死で体を揺すった。
「安心しろ。この仕事が上手くいけば悠里と菊川事務所の今後は全て俺が保証してやる」
だが、上手くいかなかったら──
最後まで言わなかったけど、権藤さんの目はそう言った気がした。同時に、社長の顔が頭に浮かぶ。
『いいか悠理。絶対に逃げるんじゃないぞ。これがポシャったらお前は、いや、この事務所はもう終わりだ』
ああ社長、そういうことか。全部知ってて……だからあんな、浮かない顔をしていたのか。
社長は悩んだに違いない。でも結局は社長も欲と芸能界の圧力に逆らえなかったんだ。説明はしてくれようとしたのかもしれないけど、断らなかったのなら結局一緒だ。
……これが芸能界か。男色が多いのは知っていたけど、まさか自分がこんな場面に遭遇するなんて。……それでも、俺は芸能界で生きていきたい。そして、裏切られても、俺を世話してくれた社長に恩返しをしたい。社長に恨みごとを言うのはそのあとだ……!
全身の力を抜き、権藤さんの背中に腕を回す。
──もう、決意するしか道はない。
13
あなたにおすすめの小説
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない
Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。
かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。
後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。
群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って……
冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。
表紙は友人絵師kouma.作です♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる