16 / 149
陰間はツラいよ!?
淫華❁✿✾ ✾✿❁︎
しおりを挟む
────目の前で繰り広げられる光景は、もはや男と女の交わりそのものだ────
最初こそ背中を向けて木偶の坊みたいに突っ立っていた俺だけど、咲華の牡丹に腕を引っ張られると、あっけなく腰を抜かしてへたり込んだ。そして、否応なしに二人の褥を見せつけられる。
それはまるで、どこか画面越しの別次元のことのように思えた。
***
水音を立てて貪るように繰り返される口づけ。唇だけでなく頬や顎・首筋まで、まるで捕食するように互いを求め合う。
次第に牡丹の顔が寛永と呼ばれた僧侶の胸に届き、その名の通り、赤い牡丹の花弁に似た薄い舌を這わせていく。寛永もまた、少しずつ体をずらして牡丹を下腹部へと誘いながら、その背中へ唇を落とした。
「あぁ、そなたの舌はビロウドのようじゃ。もっと、もっと茎に絡ませておくれ」
褥に入るまでは僧侶らしい高尚さを残していた寛永が、己の欲を満たさんと猛り狂う獣に見える。
牡丹は返事の代わりに舌を突き出し、寛永の裏筋を舐め上げた。そして口の内へ全てを迎え入れると、両の手も使ってぐちゅぐちゅと淫らな音を立てた。
暗がりに一つある小さな行燈の火が牡丹の口元を照らし、牡丹が頬張る寛永の茎がたっぷりと濡れて光るのが見える。
寛永は堪らず腰を緩やかに前後させながらも、口に通和散を含み、菊座を濡らす準備に入った。
「もう、もうそこで」
口から左手のひらへ、どろりと溶けた通和散を吐き出し、右の手のひらは慰めるような手付きで牡丹の下顎から頬を撫でた。
牡丹は頬を上気させ、顔に満開の花を咲かせる。
再び深い口づけ。
しかし次の瞬間、牡丹の体は寛永により逆さに持ち上げられた。腕と胸の上半分だけが赤い三つ褥に残され、膝を曲げて立っている寛永に腰を支えられ、吊り下げられている。
着ていた幾重かの着物は上半身にずれ落ちて集まり、形の良い白い臀が浮いて見えた。
およそ無理ともいえる体勢だか、牡丹は厭いもせず、その背中は美しい曲線を描いている。
寛永は菊座に通和散を塗り込むと、指で確かめることもせず、大きく張りつめた茎を性急に根元まで押し込んだ。
だが、牡丹が苦悶の色を見せたのは一瞬で、すぐに甘い声で寛永の名を呼ぶ。
寛永は立ち上がったまま、その声に答えるように激しく己を打ちつけた。
奥の鏡には牡丹の茎が映っている。痛いほどに立ち上がり、鈴口からは蜜を垂らしていた。
寛永が打ちつけるたびに茎はぶるんと揺れ、透明な蜜が褥や牡丹の腹に飛び散っていく。
「ああ、寛永さま、はぁ·····あ、あ、ん·····っ」
牡丹が涎を垂らしながら嬌声を上げる。その声を聞くと、寛永の動きはますます激しくなり·····やがて達した。
牡丹と寛永、二人は重なって赤い褥に伏して、これで終わったのかと思った。しかし、寛永は牡丹の肘を引き、背中を見たまま膝の上に乗せると、茎を抜くことなく、体を上下に揺すり始めた。
牡丹の茎は先ほどと同じく、触られてもいないのに天に向かってそそり立ち、血脈の流れをくっきりと現している。
「アンッ、ンッ、寛·····えぇ様ぁ。足りませぬ。まだ奥に足りませぬ。どうぞ私の中へ·····ヒッ、あ、あ·····ふ、アアッ!」
再び牡丹は嬌声を上げるが、その目は真っ直ぐに観劇者を見据えている。
そう、牡丹は心まで情事に溺れてなどいない。この場にあってもなお、誇り高く「演じて」いるのだ。
***
────ああ、これは舞台と同じなんだ。
目の前の情交が汚らしく見えたのは最初だけ。獣のようにまぐわいながら互いを貪る姿は淫靡だけれど美しい。
それは牡丹がこれを仕事として全うしているからだ。牡丹にとっては舞台も褥仕事も、勝負を同じに賭ける場所なのだ。勿論、なずなも、他の陰間達も。
客は気づいているのだろうか。陰間達が体と心を賭けた舞台に。いや、気づいていたとしてもいなかったとしても、満足しているんだ。 ここで自分の欲を吐き出し、受け入れられ、そして最後に肌と肌とをぴったりとくっつけて癒されて帰る。
ここはそういう場所なんだ。
見世で華屋の舞台を目の当たりにした時と同様に、俺の胸に迫りくるものがある。心臓は痛いくらいに脈打っていた。
────でも。
同時に、やはり自分には無理だと強く思い知らされる。俺にはこの舞台を演り通せるだけの器も気概もない。
褥の最後、咲華が爆ぜた華の白い蜜からは、目をそらしてうなだれることしかできなかった。
最初こそ背中を向けて木偶の坊みたいに突っ立っていた俺だけど、咲華の牡丹に腕を引っ張られると、あっけなく腰を抜かしてへたり込んだ。そして、否応なしに二人の褥を見せつけられる。
それはまるで、どこか画面越しの別次元のことのように思えた。
***
水音を立てて貪るように繰り返される口づけ。唇だけでなく頬や顎・首筋まで、まるで捕食するように互いを求め合う。
次第に牡丹の顔が寛永と呼ばれた僧侶の胸に届き、その名の通り、赤い牡丹の花弁に似た薄い舌を這わせていく。寛永もまた、少しずつ体をずらして牡丹を下腹部へと誘いながら、その背中へ唇を落とした。
「あぁ、そなたの舌はビロウドのようじゃ。もっと、もっと茎に絡ませておくれ」
褥に入るまでは僧侶らしい高尚さを残していた寛永が、己の欲を満たさんと猛り狂う獣に見える。
牡丹は返事の代わりに舌を突き出し、寛永の裏筋を舐め上げた。そして口の内へ全てを迎え入れると、両の手も使ってぐちゅぐちゅと淫らな音を立てた。
暗がりに一つある小さな行燈の火が牡丹の口元を照らし、牡丹が頬張る寛永の茎がたっぷりと濡れて光るのが見える。
寛永は堪らず腰を緩やかに前後させながらも、口に通和散を含み、菊座を濡らす準備に入った。
「もう、もうそこで」
口から左手のひらへ、どろりと溶けた通和散を吐き出し、右の手のひらは慰めるような手付きで牡丹の下顎から頬を撫でた。
牡丹は頬を上気させ、顔に満開の花を咲かせる。
再び深い口づけ。
しかし次の瞬間、牡丹の体は寛永により逆さに持ち上げられた。腕と胸の上半分だけが赤い三つ褥に残され、膝を曲げて立っている寛永に腰を支えられ、吊り下げられている。
着ていた幾重かの着物は上半身にずれ落ちて集まり、形の良い白い臀が浮いて見えた。
およそ無理ともいえる体勢だか、牡丹は厭いもせず、その背中は美しい曲線を描いている。
寛永は菊座に通和散を塗り込むと、指で確かめることもせず、大きく張りつめた茎を性急に根元まで押し込んだ。
だが、牡丹が苦悶の色を見せたのは一瞬で、すぐに甘い声で寛永の名を呼ぶ。
寛永は立ち上がったまま、その声に答えるように激しく己を打ちつけた。
奥の鏡には牡丹の茎が映っている。痛いほどに立ち上がり、鈴口からは蜜を垂らしていた。
寛永が打ちつけるたびに茎はぶるんと揺れ、透明な蜜が褥や牡丹の腹に飛び散っていく。
「ああ、寛永さま、はぁ·····あ、あ、ん·····っ」
牡丹が涎を垂らしながら嬌声を上げる。その声を聞くと、寛永の動きはますます激しくなり·····やがて達した。
牡丹と寛永、二人は重なって赤い褥に伏して、これで終わったのかと思った。しかし、寛永は牡丹の肘を引き、背中を見たまま膝の上に乗せると、茎を抜くことなく、体を上下に揺すり始めた。
牡丹の茎は先ほどと同じく、触られてもいないのに天に向かってそそり立ち、血脈の流れをくっきりと現している。
「アンッ、ンッ、寛·····えぇ様ぁ。足りませぬ。まだ奥に足りませぬ。どうぞ私の中へ·····ヒッ、あ、あ·····ふ、アアッ!」
再び牡丹は嬌声を上げるが、その目は真っ直ぐに観劇者を見据えている。
そう、牡丹は心まで情事に溺れてなどいない。この場にあってもなお、誇り高く「演じて」いるのだ。
***
────ああ、これは舞台と同じなんだ。
目の前の情交が汚らしく見えたのは最初だけ。獣のようにまぐわいながら互いを貪る姿は淫靡だけれど美しい。
それは牡丹がこれを仕事として全うしているからだ。牡丹にとっては舞台も褥仕事も、勝負を同じに賭ける場所なのだ。勿論、なずなも、他の陰間達も。
客は気づいているのだろうか。陰間達が体と心を賭けた舞台に。いや、気づいていたとしてもいなかったとしても、満足しているんだ。 ここで自分の欲を吐き出し、受け入れられ、そして最後に肌と肌とをぴったりとくっつけて癒されて帰る。
ここはそういう場所なんだ。
見世で華屋の舞台を目の当たりにした時と同様に、俺の胸に迫りくるものがある。心臓は痛いくらいに脈打っていた。
────でも。
同時に、やはり自分には無理だと強く思い知らされる。俺にはこの舞台を演り通せるだけの器も気概もない。
褥の最後、咲華が爆ぜた華の白い蜜からは、目をそらしてうなだれることしかできなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
637
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる