枕営業から逃げたら江戸にいました。陰間茶屋でナンバー1目指します。

カミヤルイ

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出逢いと因果

そして ❁✿✾ ✾✿❁︎

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「あ……あ……」

 全速力で走ったあとみたいな疲労感が体を襲う。このまま眠ってしまいたいけど、俺の精液が保科様のきれいな手と頬を汚したことが申しわけなくて、小刻みに震えが残る手を保科様へと伸ばした。なのに、それより早く、保科様は親指でそれを拭い、ぺろりと舐め取った。

  「!」

  「……青いな。雨のあとに伸びる若草の香りだ」

  「やだ……そんなの舐めないで……。早く拭いて下さい」
 と言ってもなにで拭けばいい? ティッシュなんか江戸時代にはないし……昨日は眠ってしまって見ていなかった。

  「ああ、仕事の時はこれは悠理が自分で片付けるんだよ。でもそれはまたあとで教えよう。今は……」
 保科様は右手に残ったままの俺の精液に目をやり、次に俺を見ると左手で腰を持ち上げた。
 そして、それを俺の菊座にあてがう。

  「あ……?」

  「悠理、怖かったら言いなさい」

 ごくり、と息を呑む──とうとう本当の「仕入れ」が始まるんだ。


 覚悟を持ってうなずく。
 それを合図に、保科様の指がぬるぬると菊座の表面を周回した。時にぴたりと止まり、指の腹でじわりと押される。
  孔内なかに入りそうで入らない焦れったさ。怖かったはずなのに、いっそ早く貫いて欲しいと願ってしまう。

  「大丈夫か? 辛いなら後ろを向くか?」
 念入りに表面を慣らす指へのもどかしさで震えているのを、怖がっていると思ったのだろう。
 違うんです保科様。今、俺、とてもはしたないことを考えてる。

  「大丈夫……です。顔、見てたいから、このまま……」
 保科様は頷き、切れ長の目を細めて微笑んだ。

  「……あっ……」
 指、が……。

 指がつるり、と入ったのがわかった。だけどその指は奥には進まず、入口に戻り、肌と粘膜の境い目をくるくると周回しているだけ。
 なのに、なぜ? それだけでもジン、とお腹に響くものがある。

 時に指が周回を止め、少しだけ先へ進みながら粘膜をこすると、鼻から息が抜けて、犬が甘える時みたいな声が出た。

  「ふぅ……ん、ンン」

  「悠理、上手だ。私の指にお前のヒダが吸い付くようだよ」

  「だって、保科様だから。俺、保科様にならどこを触られても気持ちいい……あアッ……」

 指の侵入が進む。

 ひとの指なんだからそんなに奥にまで入るわけないし、内膜を突き破るなんてあるわけないのに、保科様の指の熱さがずん、ずん、と上がってきて、心臓にまで届いた気がする。それに、なんだか少しむず痒い。早く指を動かして、かゆみを治めて欲しい。

「悠理、本当に? こんなに腰を動かして。他の誰かにされてもこうなるのではないか?」

「ンッ……ちが、保科様だから……」

「本当にそう? これからお前はどんなふうに感じて、どんな顔を相手に魅せていく?」

 開いた脚の上で保科様が眉を歪める。憂いを乗せた顔で俺を見て、でも、休まずに指で粘膜を探る。

 「ふ、ああぁっ!」
 突然に、背骨にしびれが走った。
指がなにかに当たっている。体の中にごりって鈍い音が響いて、そこをこすられるたびに、目の前がチカチカと光った。

「百合、答えて」

 無理だよ、返事なんかできない。体に感じる刺激を受け止めるだけて精一杯なのに。

 「ああぁっ……ぁンンっ、ひっ、保科様、や、そこ、や、ぁアッ……」

 指がそこばっかりをこすり、頭が真っ白になるほどの快楽を与えられる。もうなにも考えられない。でも、保科様の姿だけは見失いたくない。
 保科様、お願い、俺を抱きしめて。
  
 俺が必死に腕を伸ばすと、保科様は腕を取って体を起こしてくれて、俺に膝を跨がせた。瞬間、俺の重みで、指がずず、と奥深くまで入った。膝ががくがと震え出す。

  「……さっき出したばかりだというのに.なんという淫らな体だ。なぜこうなる?」

 責めるような声とは裏腹な、切なげな視線の先は俺の腹の下。俺のものは再び硬さを取り戻し、天井に向かって快楽を訴えていた。なんて淫らで、そしてふしだらなんだろう。

 でも。

 視線をずらさなくてもわかる。俺の昂りのちょうど真ん前、保科様自身も硬さを帯び、着物の上からでもわかるくらいに張りつめている。

 たまらない気持ちになり、衝動的に保科様に抱きついて、唇に強く吸い付いていた。
  「さっきも言いました。保科様だから……! 俺が感じるのは保科様だけです。保科様とじゃなきゃ、気持ちよくない!」

 重なった唇を離しても、銀の糸が二人の唇を繋げてくれる。
  「だから、保科様の全部、俺も欲しいです……」
 目の前の唇をぺろりと舐め、その糸を啜りながら、保科様の浴衣に手を入れた。

  「悠理……!」
 
  「お願い。駄目って言わないで。触るだけです」

 俺の懇願が効いたのか、保科様にも欲があるのかは見えない。
 でも、昨日みたいに、熱い吐息を漏らしながら、保科様は俺にされるがままになった。

  「おっきい……あつい……」
 そっと保科様自身に触れて、下帯の脇から取り出す。その先は薄紅色にてかり、甘そうな蜜がとろりと垂れていた。

 ……すごい色気……。

 くらくらする。初めて間近で見る、ひとの欲情、むせ返るような淫靡な匂い。
 ねぇ、保科様。これ、俺に感じてくれているんだよね?

 誰に教えられたわけでもないのに、二人の熱をすりつけて、両手で合わせて持って、上下に動かす。
 
  「……ふ……」
  保科様の額に薄く汗が滲み、形のいい眉が歪んだ。
 声は抑えているけど、気持ちいい、って思ってくれてるよね? 保科様、俺とおんなじだよね?


 ……じゅ、くちゅ、ぬぷっ
 ……ざー、ぴちょん、ぴちょん

 俺達の世界に今ある音。
 二人の体から出る音と雨の音、どちらも濡れた音がする。

 ずっと聞いていたいけど、俺はもう限界だ。

  「ん、んっ」
 保科様の手が俺の菊座を、俺が二人の昂ぶりを同じリズムで触っているあいだ中、くっついて離れなかった唇を解き、大きく息を吸う。

  「保科様、俺、もう……」

  「ああ、私もだ」
 気づくと保科様の汗は雫となり、顎から床へと落ちそうだった。
 俺はそれを啜りながら、心の欲するままに両手を強く動かした。

 そして

  「ん、フッ……! ああっ……」
  「くっ……!」

 ほぼ二人同時に達し、お互いの肩にお互いの額を預け合った。



 しばらく続いた荒い息はやがて落ち着き、雨の音だけが静かなBGMのように聞こえて、再び眠気に襲われる。

  「悠理、また少し眠るといい」
 保科様が半紙のような紙で二人の体液を拭き取り、裸のままの俺を夜着で包んでくれた。そして、俺の髪を撫でるとすぐに背を向けて、自分は着替えを始める。

 なんで事後でもそんなにキビキビ動けるんだろう? さすが保科様。やっぱり慣れてるのかなあ? ……ていうか、背中。惚れ惚れするほどカッコイイ。ケツまで凄く男らしいし、その張った太ももにも纏わりつきたい。
  あー、あのゴツゴツした手も好きなんだよなあ。まじ惚れる……いや、もう惚れてるけど。

  うん。好き。めっちゃくちゃ好き。
保科様も俺を好きになってくれたらいいのに────そんなことを考えながら、俺は再び眠りに落ちた。
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