枕営業から逃げたら江戸にいました。陰間茶屋でナンバー1目指します。

カミヤルイ

文字の大きさ
38 / 149
陰間道中膝栗毛!?

咲華 牡丹 弐

しおりを挟む
 牡丹さんが踊り、後ろで俺や他の小花二人が皷や三味線をやる。それが一段落したら酒をついだりしながら札遊びや投扇興まとあてゲーム
 まさに「Theお座敷」

 今日の客は坊さんが二人。一人は牡丹さんの上得意の寛永上人。となると、残るこっちの若い坊さんが俺の客か。

  「おお、おお、百合。そなたにまた会えるのを心待ちにしていたぞ。今日は新しく修行に入ったこの隆晃りゅうこうを連れてきた。まだ色を知らぬ初心者うぶものじゃ。同じ初心者同士、佳い縁であろう」
 寛永上人は既に牡丹さんの腰を抱いて上機嫌だ。言われた隆晃様は顔を赤くして下を向いた。

  「寛永様。なんとお恥ずかしいことを申されますか」
 頭を丸めたばかりなのだろうか。若い坊さんの頭は綺麗に青く光っていて、初心うぶらしさをより醸し出している。

  「隆晃様。百合に御座います。どうぞお顔を見せて下さいまし」
 小花の俺は初会でも会話が可能だから、上座からではあるけど、それらしく隆晃様の顔を見て微笑んでみせた。

  「隆晃様がそのようなお顔をされたら百合も恥ずかしくなります。初心うぶは悪いことで御座いますか?」

 自分で言って、歯が浮きそう。

  「……! いや、いや、そなだが恥じることはなにも……! 済まぬ、私が不慣れなばかりに」
 隆晃様はかばっと俺の方を向いて立ち上がった。

 うおっ。急にびっくりするなぁ……なんだ、体は大きいけど、まだ顔は幼いじゃん。同い年くらいかな? まあ、俺はここじゃ十六設定だけど。

 隆晃様は自分の手を腰の横でぎゅっと握りしめて俺を見つめた。
  「百合、私で良ければ……いや、私が百合が良いのだ。先日の舞台で百合を見て一目で目を奪われた。私と盃を交わしてくれるか?」

 熱い口調に熱い瞳。それに反して震える拳。隆晃様の緊張が伝わる。
 なんか、可愛いかも。それに真面目そう。この人となら大丈夫かもしれない。

 俺は頷き、牡丹さんと寛永上人、そして女将や旦那、権さんの介添の元、初めての「夫婦固めの盃」を交わした。



 それからすぐ。
 隆晃様が二回目に登楼したあがった夜のこと。

 規則通り、座敷だけを楽しんだ隆晃様と三回目の逢瀬の約束をして店先で背中を見送ったあと、小花部屋に戻った俺は、権さんに預けておいた保科様からの刀を一緒に布団に入れて「いよいよ次なんだ。保科様」と、複雑な気持ちで話しかけながら眠りについた。

 それから半時ほどだろうか、いやに体が重くて、なにかがのしかかる感覚がある。まるで金縛りみたいだ。

 なに、これ……

 怖々目を開けても江戸の夜は暗い。目が慣れるまで時間がかかるし、体は動かないし……

  「!!」

 金縛りなんかじゃない。


 俺は。


 小花4人に手足を固定されていた──


  「な……に、して」

  「お前、目障りなんだよ。ちょっとばかりお綺麗だからって、なぜここまで優遇されてるんだ。私らが小花に上がる為にどれだけ苦労してきたと思うんだい」
 憎々しそうに、俺の左腕を押さえる一人が言う。

  「そうだよ、私らが嫌な客でも我慢して受けて、何度も何度も体を痛めてきたのはお前みたいな奴の下に付くためじゃないんだよ」
 右腕側にいる陰間も、今にも噛み付きそうに言葉を吐いた。

  「そんなの……逆恨みじゃないか。殴りでもするつもりか? そんなことしたって……」
  「うるさい!!」
 話している途中で口の中に手拭いを突っ込まれる。

 殴るなら殴れよ! 見た目でわかって問題になるのはお前らだぞ。

  …………えっ…………!

 小花達は俺を殴らなかった。
 でも、代わりにその手は俺の浴衣の帯を解き、胸や下半身にじかに触った。

  「ふん、確かに綺麗な体してやがる。なんだって産毛の一本も生えてないんだ」
 俺を固定しながらも四人の手はザワザワと俺を撫で確かめる。

 ……なにが目的だ……。

 俺の困惑を汲み取ったのか、一人が片側の口角を上げて不気味に笑った。
  「百合、次が初褥だってなぁ。前に権さんと話をしてるのを聞いたけど、お前、指と素股しかやってないらしいね。まったく、どこまで恵まれてんだ……だからさ、私らが汚してやるよ」

  「あざみ、言いかたが悪いよ。教えてやる、だよ」
 くくく、と足元の陰間が笑った。

  「ん、んん……」
 手拭いのせいで声が出ない。

 こんなの、有り得ないだろ……はっ倒してでも辞めさせないと!
 
 だけど、やはり相手も中身は男だ。四人を相手に、俺は身体を捩ることさえも許されなかった。

     
しおりを挟む
感想 155

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

処理中です...